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第72話 【ツルハシの性能・3】


 そうしてやってきたリーザの店の前で、クロエは最後まで抵抗を続けていた。

 しかし、そんなクロエの前に店の中からリーザが出て来て、ビクッと反応をすると固まってしまった。


「ジン、久しぶりね。そっちの子は、この間話してたジンの仲間の子かい?」


「ああ、久しぶりだな。仲間のクロエだ。リーザの噂を聞いて、怖がってた状態で連れて来たから絶賛緊張と恐怖でガチガチに固まってる」


「……酷い事するね。取り敢えず、中に入りな。外に居たら面倒な人達に絡まれるからね」


 リーザからそう言われた俺は、ガチガチに固まってクロエを引っ張って店の中に入った。


「それで今日はどういった用できたんだ? 仲間の紹介だけって、訳じゃなさそうだけど」


「本当はそのつもりだったんだけどな……ちょっと、ヤバイ物を手に入れたから急いでリーザの所に来たんだ」


「ヤバい物?」


 俺の言葉にそう反応したリーザに、俺は【異空間ボックス】かせミスリルを取り出した。


「それはッ! おま、何でジンが持ってるんだ!」


「今日、見つけて採掘して来たんだよ。採るのに苦労したぞ、一時間の激闘の末に手に入れた」


「……聞いてた話だと、あたしのツルハシを手に入れるまでは採掘をしてなかったって言ってたよね。よく、それでミスリルを採れたね」


「ツルハシの性能が良いからな、流石リーザ様のお手製のツルハシだな」


「変な風に茶化すんじゃないよ。……それにしても、このミスリル綺麗に採れてるね。一切、傷が付いてない状態だからこれを使ったら物凄く良い物が出来るよ」


 リーザはマジマジのミスリルを見つめて、そうミスリルの評価を下した。

 俺はそんなリーザに、ミスリルで作って欲しい物があると言った。


「……あたしにミスリルの加工を頼むのかい? ミスリルだったら、王都にあたしより上手く扱う奴が居るよ?」


「確かに、その人は腕がいいと思うけど……その人にはアレが無いだろ」


 俺は作業場の奥にある溶鉱炉を見ながらそう言った。


「アレの凄さはこの間のツルハシでよくわかってる。それなら、腕も良くてあの溶鉱炉を持ってるリーザに頼むのが一番いいと判断した……それにリーザもミスリルを扱ってみたいだろ?」


「……触りたいか触りたくないかで問われたら、そりゃ触りたいね。希少鉱石はどれも巷にあまり出回らないせいで、鍛冶師の間でも取り合いをしてるレベルだからね」


「まあ、リーザが俺を気に入った相手じゃなくて、作りたくないっていうなら他を当たるよ」


 そう言って俺は、ミスリルを【異空間ボックス】に入れようとした。

 そんな俺にリーザは「まった!」と声を張って止められた。


「いつ、あたしがジンを気に入らないと言った? 金塊を持って来た時から、ジンが頼んだ物なら作るって決めてるよ。だからそのミスリル、渡しな」


 そう鋭い目つきで睨みながら言うリーザに、俺は「冗談だから、そんな睨むなよ」と言ってミスリルを渡した。


「俺の聞いた話だと、どんな物を渡してもリーザは気に入った相手にしか作らないって聞いてたんだけど……今の会話の感じだと、希少鉱石を持ってきたら受けるんじゃないのか?」


「知らん奴、気に入ってない奴が持ってきても別にどうでも良いよ。ただ気に入った相手が持ってた場合、他の鍛冶師に取られたくないって気持ちが出ちまうんだよ。まあ、一種の独占欲ってやつよ」


 リーザはそう言いながら、ミスリルを手にしてウットリとした表情をした。

 それからリーザは、俺に何を作るのか尋ねてきて、リーザに俺はここに来るまでに考えていたミスリルで作って欲しい物を頼んだ。


「今度は普通の物を頼むんだね。また変な物を頼まれるかと思ってたよ」


「毎回毎回、変な物を頼むわけないだろ。それにツルハシは変な物じゃなくて、必要な物だったんだよ。アレのおかげで、今その手に持ってる物があるんだからな?」


「そうだったね。あんまり馬鹿にしちゃいけないね」


 そう言ってリーザは店の奥に一度行き、ミスリルを保管して戻って来た。

 そして未だガチガチに固まってクロエに近づくと、頭に手を置いて撫で始めた。


「ふぇ!?」


「あたしの噂を聞いて怖がるのは分かるけど、そこまで怖がらなくても良いよ。あたしは気に入った相手なら、よっぽどの事が無い限りは怒ったりしないから」


 リーザはそう言いながら、クロエの頭を撫で続け、撫でスキルが高いのかクロエは徐々に緊張が解け始めて行った。


「あ、あのもう大丈夫です。その、すみません……」


「いいよいいよ。あたしも、自分が怖がらせてるってのは自覚してるからね。貴族からも怖がられてた時もあるから、クロエが怖がるのも無理ないよ」


 そう優しくクロエに声をかけるとリーザに、クロエは少しずつ恐怖心が薄れて行った。

 それから少しして、ようやく緊張が解けたクロエは改めてリーザと挨拶を交わした。


「そう言えばリーザ、さっきの注文した物だけどいつくらいに出来そうだ?」


「そうね。この後、作業に取り掛かるとして……まあ、明日には完成するね」


「明日か……なら、明日取りに来るよ。丁度、仕事は休みの日だしな」


 そう言って本当だったらダンジョン探索最終日だった日に、俺は頼んだ物を受け取りに来ると言ってリーザの店を出た。

 その後、俺達は他にやる事は無いので城に帰宅して、早めに帰ってきた事を姫様に報告した。


「その顔、また何かあったの?」


「いい話のネタを持って帰ってきましたよ。なあ、クロエ」


「うん、姫様絶対に喜ぶと思いますよ」


「へぇ、今度はクロエさんもそんな事を言うのね」


「でも準備に明日までかかるので、今回のダンジョンの話は明日でも構いませんか?」


 そう俺が言うと、姫様は「ええ、前回もちゃんと驚かせてもらったから」と前回約束通り、驚かせた功績があるのでそう言ってくれた。

 ちなみに驚かせた報酬で俺とクロエは、姫様から報酬アップと魔道具を一つずつ貰っている。

 その後、話は明日する事になったので姫様の部屋を出た俺達は、そこで今日は解散した。

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