第6話 【新人冒険者ジン・1】
金貨5枚を稼いだ翌日、俺は装備を身に付け早朝から冒険者ギルドへと訪れていた。
これまで俺がギルドに顔を出していたのは、昼少し前だったりとピーク時間からズレた時間だった為、冒険者をそこまで見なかった。
しかし、今の時間は冒険者が一番ギルドに多い時間帯。
朝はその日の依頼が張り出されるタイミングで、良い依頼を取りたい冒険者が掲示板の前に集まっていた。
「ジンさん、今日も来たんですね」
「おはようございます。フィーネさん」
そんな冒険者達を横目に、俺は顔見知りとなったフィーネさんの所へと直行した。
「今日も依頼を受けに来たの?」
「依頼も受けようと思ってるんですけど、先に別件を済ませようかなと思いまして早めに来たんです」
「別件?」
「まだ登録二日目ですけど〝パートナー登録〟って出来ますか?」
パートナー登録。
これはゲーム時代に凄く世話になった機能の一つ。
主人公を動かすプレイヤーは必ず、冒険者になり冒険者ギルドに世話になる。
物語が進むと、受付と業務的な契約を結ぶ〝パートナー登録〟というものが現れた。
それをすると、報酬金の一部をその契約した受付係に渡す事になる。
しかし、その登録をする事によってギルドの設備だったり、こちらの世界だと優先的に扱ってもらえるようになると調べて分かった。
そしてもう一つ、この世界ではその登録はあまり使われていない事も分かった。
理由としては報酬金が下がる事が大きく、別に契約しなくても上手くやってる冒険者が多い為、契約する冒険者は数が少ない。
「……出来るには出来ますけど、しなくても冒険者としては活動出来ますよ? 特に初心者の方で登録するという方は、見た事がありませんよ?」
「こちら側の心配でしたら大丈夫ですよ。昨日の報酬金で暫くは普通に暮らせますので、それ以上に優先的に扱える権利があった方が便利なので」
「成程……ジンさんが指名する形になりますが。どなたか、契約したい方は居ますか? 既に契約してる方が居る場合は、別の係を勧める事になりますが」
選ぶ権利なんてあったのか?
ゲームの時は契約したら、モブキャラがパートナーになってたからな……。
「でしたら、顔も知ってるという理由でフィーネさんを選びたいんですけど」
「私ですか?」
俺の言葉にフィーネさんは、キョトンとした顔で俺の顔を見つめながらそう言った。
「はい、冒険者登録から初めての依頼まで世話になってるので、出来るのでしたらフィーネさんが良いかなと」
「……分かりました。先日、パートナー登録の許可が下りて私も探していた所なので」
「それは丁度良かったです」
それから俺とフィーネさんは〝パートナー登録〟を行い、無事に契約が結ばれた。
これで俺に、専属の受付係が付く事になった。
ちなみにこちら側の報酬金の一部が登録した受付係に行くが、受付係の給金は勿論別で払われてるから実際デメリットは冒険者しか受けていない。
逆に契約した受付係はその契約した冒険者の専属になる為、多忙な時期以外は受付所に立つ事は無くなる。
「それで早速ですが、これが俺のステータスです」
場所は変わり、パートナー登録をした冒険者が使える相談室へと移動して来た。
そこで俺は、フィーネさんに自身のステータスを見せようとしていた。
契約には書かれていないが、契約した受付係にステータスを見せる事で自分に合った仕事をくれると調べて分かった。
他人に自分のステータスを見せるのは迷った。
だが契約の内容に〝契約者の個人情報は許可がない限り流出させない〟というのがあり、俺は結局自身のステータス見せる事にした。
✤
名 前:ジン
年 齢:12
種 族:ヒューマン
身 分:平民
性 別:男
属 性:火・水・風・土・光
レベル:31
筋 力:568
魔 力:1674
運 :76
スキル:【鑑定:2】 【状態異常耐性:2】【剣術:3】
【魔力強化:3】 【火属性魔法:3】 【水属性魔法:3】
【風属性魔法:3】【土属性魔法:2】 【光属性魔法:4】
【魔力探知:4】
固 有:【成長促進】【異空間ボックス】
能 力
称 号:神童 加護持ち
加 護:魔法神の加護 武神の加護 剣神の加護
✤
先日のオーク・ボアの大量狩をした事で、レベルが3程上がりそれに伴い能力値が少し上昇している。
普通であれば、あんな事で20代後半のレベルの俺が上がる事は無いのだが。
固有能力の【成長促進】のおかげで、あんな数でも3つもレベルが上がった。
「……ジンさん、貴方一体何者ですか?」
「何者って、普通の一般人ですよ? まあ、元貴族が頭に付きますけど」
「元貴族ですか?」
「一応、三日前まではこの国の貴族の子だったんですけど、そのまあ出生的に色々ありまして追い出されたんですよ」
そう俺が言うと、フィーネさんは「えっ」と驚いた声を出した。
「まあ、今は普通の何処にでもいる子供ですので」
「このステータスを見て、普通の子供とは思えないんですけどね。レベルだけ見たら、銀クラスの冒険者とほぼ同等ですよ……」
銀クラス、正しくは〝銀級冒険者〟の事だ。
この世界の冒険者のランクシステムは、六段階で分かれている。
白金・金・銀・銅・鉄・木。
白金が最高の冒険者の証で、木が初心者冒険者の事だ。
なので木クラスの俺が、銀クラス級のレベルという事にフィーネさんは驚きを通り越し呆れた顔となった。
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