第583話 【新薬2・1】
師匠との模擬戦闘から数日が経ち、俺は久しぶりにレンに会いに来ていた。
というのも昨日、俺が居ない間に手紙が届いており〝新しい薬が出来た〟とレンから連絡を貰っていた。
「地下室には前にも来たことがあったけど、あの時から汚くなったな……」
前回、拠点の地下にある研究所に訪れた際は綺麗に片付いていた。
しかし、今回来てみると至る所に素材用のアイテムが落ちてたり、瓶がそのへんに積まれていて掃除がされていなかった。
「来たよ。レン」
「遅かったね」
レンは研究所の奥で作業中だったが、俺が声を掛けると手を止めてこっちを見てからそう言った。
それからこの場所だと長話は出来ないからと、俺達は研究所から上のリビングに移動した。
「ってか、研究所汚くなってたけど悪魔達が仕事してないのか?」
「いや、ちょっと研究の手伝いをしてって頼んで掃除を後回しにしてたんだよ。ようやくひと段落したから、明日には片付いてると思うよ」
レンはそう言うと、悪魔に持ってこさせた箱から一つの瓶を取り出した。
「それが新しい薬?」
「うん。効果はちょっと変わってて、説明が難しいから一旦飲んで説明するね」
そう言うと、レンは瓶の蓋を開けて中身を飲んだ。
するとレンの体が少しだけ光ると、何やらレンの体を薄い膜のようなものが包み込んだ。
「薄い結界みたいな感じだな、それはどういう効果なんだ?」
「この薬。実は毒を防ぐ薬を作ろうとして開発してたんだけど、飲んだ対象の傷を防ぐ薬が出来ちゃったんだよね。ちなみに一定のダメージを超えたり、30分時間が経つと効果は消えちゃうから一生効果が続くって訳じゃないんだよね」
「……凄い薬を作ったな。一定のダメージを防ぐって、それってどのくらいなんだ?」
「まだ検証中。ちなみにその検証に付き合ってほしくて、ジン君を呼んだんだよね」
そんな風に言われた俺は、実際にその薬の効果も知りたくなった俺は「勿論、手伝うよ」と言ってレンの検証に付き合う事にした。
場所は剣や魔法を使う為、屋内だと危険だと判断して裏庭へとやって来た。
「じゃあ、まずは剣だと怖いから棒で攻撃するぞ」
「いつでも大丈夫だよ。かかってきて」
レンは無防備な姿でそう言い、俺はそんなレンを攻撃するのは気が引けるなと感じつつも魔法で攻撃を与えた。
すると俺の攻撃は、レンの膜のようなものに吸い込まれてしまった。
「吸い込まれたな」
「うん。今のが薬の効果だね」
「これ近接はどうなるんだ?」
「衝撃が吸収される感じだよ。一回試してみて、怪我しないから」
そう言われた俺は、出来るだけ弱くレンに攻撃を与えた。
すると剣がレンに当たる数㎝手前で膜に攻撃が吸収され、レンは怪我しなかった。
「とまあ、ここまでは僕だけで検証も出来たけど、ここからどれだけダメージを吸収できるのかを検証したくてジンを呼んだんだ」
「成程な、了解。この薬は色々と使えるだろうし、全面的に協力するよ」
その後、俺は拠点で過ごす事にしてレンの新薬検証に付き合う事にした。
そうして検証を始めて三日が経ち、レンの作った新薬の効果を完全に理解した。
効果内容としては、持続時間は30分。
その時間は何も攻撃を受けてない場合であり、攻撃を受けるとその時間が減っていく。
「耐えられない攻撃分はそのまま受けるけど、この薬はかなり凄いな……」
「ふふっ、師匠には負けない為に色々と考えたからね。でも、この薬の使い道ってあるのかな……」
レンは薬の使い道が思い浮かばないのかそんな風に言い、俺はそんなレンに対して「あると思うぞ」と俺が浮かんだ使い道について話をした。
薬の用途として、訓練用と大会用と二種類の使い道があると俺は考えている。
一つ目の訓練用は、学園や国の兵士達が普段の訓練に使用をして、より実践的な訓練を行う用途。
二つ目の大会用は、学園等で定期的に行われてる大会でこの薬を使う事でより派手な実践的な戦いが見れるという使い道。
「あ~、確かにそれなら薬の使い道としてもあってるね。実戦での使い道しか考えてなかった」
「まあ、でも学園とか国に売るにしても大量に必要になって来るけど、これって大量生産は可能なのか?」
「うん。効果時間を長くする事は出来ないけど、短くしてより強い攻撃に耐えられるような改良品も作ってるよ」
「それなら売りに出しても問題無さそうだな」
その後、薬の検証は終わったので俺の役目はこれで終わりとなった。
レンからは検証に付き合ってくれたお礼にと、新薬と改良品の薬を貰って俺は数日振りに宿に戻る事にした。
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