第582話 【課題・4】
俺と姉さん達との訓練は、あれからは一週間続いた。
そのおかげで俺は大分、転移頼りの戦いの癖が抜けて魔法の技術が向上したような気がしている。
また姉さん達も一週間、俺と戦い続けてより連携力が上がってお互いに良い時間だった。
「師匠。後で模擬戦闘お願いしても良いですか?」
「ふふっ、あれから凄く頑張ったみたいね。良いわよ弟子ちゃんがどれだけ成長したのか見てあげる」
一週間振りに空島へとやってきた俺は、家で寛いでいた師匠に挑戦をする事にした。
師匠は俺が来たことに嬉しそうに笑い、直ぐに了承してくれた。
それから少しして、俺と師匠は外に出て来て模擬戦闘の準備をした。
「師匠。始められます」
「ええ、私もいつでも良いわよ。スカイ、合図出してくれる?」
「分かった」
今回も俺達の戦いを見物するドラゴン達はおり、その中からスカイさんを師匠は合図役として呼んでいた。
そうしてスカイさんは空に向かって合図用のブレスを放ち、俺と師匠の戦いは始まった。
開始早々、俺は無数の魔法を同時に展開して師匠に向かって放った。
一つ一つの魔法を操り、師匠に攻撃を与えようとする俺に対して、師匠は両手から出す魔法だけで対応していた。
「師匠の動きについていけてるッ」
訓練の成果を戦いを始めて直ぐに俺は実感した。
前は防戦一方だったが、今回は互角よりに戦えていて師匠も防御に回る事も多い。
「ふふっ、たった一週間でここまで成長するなんて流石、私の自慢の弟子ね」
「前回、コテンパンにされたおかげです。今回は勝ちます」
「簡単にやられたりしないわよ」
その後も戦いは続き、俺と師匠の攻防は続き前回よりもかなり戦えていた。
そうして戦闘を始めて一時間が経過した頃、遂に戦いは終わった。
「か、勝った! 勝ったぞぉぉぉ!」
師匠相手に粘り強く魔法を撃ち続けた俺は、粘り勝ちで師匠に勝利した。
魔力をかなり消費した師匠は、前回の様に平気そうな顔では無く疲労が溜まってる感じの表情となっていた。
「たった一週間で本当に強くなったわね。流石、弟子ちゃんね」
「師匠の教えが良かったおかげです。今回、師匠から課題を貰ったおかげでより自分の魔法の技術が上がりました。本当にありがとうございました」
「ふふっ、弟子ちゃんを育てるのは師匠の務めよ」
師匠は疲れた表情から、嬉しそうな表情を浮かべてそう言った。
それから流石に前回みたいに連戦は厳しく、俺は師匠と共に師匠の家で休む事にした。
「それでこの一週間、ずっと弟子ちゃんはお姉さん達と訓練をしてたの?」
「はい。姉さん達の協力もあったおかげで、あれだけ魔法の技術を上げる事が出来ました」
「それはお姉さん達にも感謝しないといけないわね」
そうして俺がどう一週間を過ごしていたのか、師匠に教えていると家の呼び鈴が鳴り誰かが来たようだ。
師匠に行かせる訳にも行かないので俺が玄関を見に行くと、そこには竜王ヴェルド様が居た。
「ヴェルド様? どうしてここに?」
「さっき部下から、マリアンナとジンが戦っておると聞いてな。この様子じゃと、もう終わったのか?」
「はい。つい先程終わって、俺も師匠も魔力をほぼ使い果たしたので休んでいた所です」
俺はそう言って家の中にヴェルド様を連れて行くと、リビングで休んでいた師匠は「あら、久しぶりね」と言ってヴェルド様も迎え入れた。
「本当に一足遅かったな、お主達の戦いは面白いとスカイも言っておったから次こそは見たいと思ってたんだが」
「ふふっ、残念ね。今日はもう疲れたしやらないわよ。弟子ちゃんも疲れてるから、貴方の模擬戦闘も無理よ」
「むっ……ふぅ~、それは仕方ないのう。で、どっちが勝ったんじゃ? マリアンナか?」
ヴェルド様の言葉に対し、師匠は首を横に振り「弟子ちゃんが勝ったわよ」というとヴェルド様は驚いた表情をした。
先に試合形式、魔法だけの戦いと聞いていたから師匠の方が分があり、俺が負けたと思っていたのだろう。
「成程な、クロエ達が修行してる間もジンは強くなる為に頑張っていたみたいだな」
「置いて行かれたくはありませんから、それに今回は俺の悪い癖も治すいい機会だったので凄くいい修行が出来ました」
「そうかそうか、ジンはまだまだ強くなってるんだな。こんな優秀な弟子が居て、マリアンナが羨ましいの」
「私もこんなに凄くいい子が私の弟子で誇らしいわ」
その後、ヴェルド様は折角来たからとこっちに居たドラゴン族と戦ってくると言って家を出て行った。
どうせ家の中に居ても休憩してるだけだからと、俺と師匠はヴェルド様の戦いの見学をする事にした。
ちなみにヴェルド様が来た時点で大半のドラゴン族は逃げており、スカイさんがヴェルド様の相手をする事にした。
ヴェルド様の戦いはそれはもう一方的な戦いで、あのスカイが防戦一方でただただボコボコにされる試合。
そんな試合を俺と師匠は、いつもドラゴン族が見物してるようにただ楽しむように見ていた。
「師匠。偶には人の試合をこうしてみるのも悪くないですね」
「そうね。特にドラゴン族は派手さもあるから、面白かったわね」
そう俺と師匠は言い、凄く良い休憩時間を取る事が出来たのだった。
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