第573話 【臨時加入・4】
「今更だけど、世界樹の素材ってそんな簡単に手に入る物なの?」
「一応、知り合いに頼めば貰えるとは思うけど、弓に出来る長さの物は頼んだ事が無いから行ってみないと分からないかな。最悪、貰えなかったとしても世界樹の枝自体は今も持ってるから、これを使って何とか代用品を考えようとは思うよ」
ルル姉からの質問に対し、俺は【異空間ボックス】から世界樹の枝を一本取り出して見せながらそう説明をすると。
話を聞いていたシャーリーさんが体をビクッと反応させて、世界樹の枝に釘付けとなっていた。
「シャーリーさん、大丈夫ですか?」
「あっ! す、すまない。世界樹の話自体は知っていたけど、こうして実物を見たのは初めてで少し驚いたんだ」
俺の言葉にハッと気が付いた様で、恥ずかしそうな雰囲気でシャーリーさんはそう言った。
その後、姉さん達の装備に使う素材について把握した俺達はその素材の採取に向かった。
手始めに向かった場所は、ルル姉達前衛組の武器の素材に使う功績を取りに功績が採れる迷宮へとやって来た。
「採取目的で来るのは久しぶりね」
「そもそも最近は、迷宮探索ばかりしてたものね。迷宮じゃ、攻略優先で採取はあまりしてなかったものね」
「えっ、それは勿体無いと思うよ」
フィオロとルル姉の会話を聞いていた俺は、信じられない会話を耳にして真顔でそう口にした。
「あの迷宮って神様が今も管理してるから、外の素材と比べて品質がかなり良いから集められる余裕があるならしてた方が絶対に良いよ」
「ほら、やっぱり集めてた方が良かったでしょ」
姉さんは俺の言葉を聞くと、ルル姉達に対してそう言った。
もしかしたら姉さんは、素材を集めながら攻略した方が良いって提案していたのかも知れないな。
「素材集めって作業感があって、あまり好きじゃないのよね。今回見たいに装備の為なら新しい装備の為に頑張れるけど、いつ使うか分からない物を集めるのはね……」
「私もルルと同意見なのよね。素材集めする時間あるなら、迷宮を攻略して敵を倒したいわ」
「うん。ルル姉とフィオロは、俺のパーティーで言うとレイ達タイプだね。まあ、正直ルル姉達の気持ちも分からなくはないよ。時間も掛るし、手間だからね」
研究者のレンが居たから俺達も素材集めに力を入れてるが、そうじゃなかったら俺もここまで素材に熱くはなってはいないだろう。
「だけどあの迷宮に関しては、素材を見て見ぬ振りをして先に進むのは大金を捨ててるも同然だと俺は思うよ」
「う~ん……まあ、ジンがそこまで言うなら、これからはなるべく採取もしていこうかしらね」
「その方が良いよ。ちなみに大金を捨ててるも同然って言ったけど、これからは実際に捨てる事になるかも知れないよ。迷宮の素材、特に下層の素材が外に出始めて高値で売買され始めてるからね」
俺達のパーティーやユリウスといった先行隊以外の冒険者も、最近は下層への攻略を着々と進めている。
それにより迷宮の素材は外の世界でかなり価値が出始めて、50層以降の素材でもかなり高く売買されてるとハンゾウから聞いた。
「だとしたら、今後は本当に採取をやった方がパーティーの資金の足しになりそうね」
「十分なると思いますよ。ちなみに鉱石よりも、薬草系の方が高値で取引されてるみたいなので攻略も同時にしたいという考えだったら、薬草系だけでも採取して先に進むのをお勧めします」
「……ジン君は何でそんな事まで私達に教えてくれるの?」
シャーリーさんは俺がタダで情報を渡した事に対し、疑問に感じたのかそう質問をしてきた。
「姉さんのパーティーだからという理由が大きな理由の一つですが、もう一つは今の壊れた値段設定を崩したいと言うのが理由ですね。入手難易度的に高いのは仕方ないとは言え、今の価格は高すぎるんですよね。だから市場に流せる冒険者を少しでも増やしたいと思って伝えたんです」
「成程……まあ、今回の装備作りでお金も沢山使いそうだし、折角良い情報を貰った訳だし装備作りが終わったら迷宮探索をしつつ、積極的に採取をしていこうかしらね」
「そんな話を聞いたら無視できないものね」
俺の話を聞いた姉さん達は、今回の装備作りを終えたら迷宮探索に戻り、今まではスルーしていた素材採取を頑張ると約束をしてくれた。
その後、目的の素材がある階層までやってきた俺達は辺りを探索して、鉱石を探し始め。
大体一時間程掛けて、約半分の量が集まった。
「しんどっ! ジン達ってこんな事を攻略しながらやってるの?」
「まあ、慣れだな。フィオロは魔法でなんでもしようとしてるから、余計に疲れるんだよ」
泣き言を叫んだフィオロに対し、俺は汗をタオルで吹きながらそう言った。
フィオロ以外は最近は採取をしていなかっただけで、元々はしていたからか30分程してから感覚を取り戻していた。
特にププルさんはドワーフ族というだけあって、鉱石採取の才能は姉さん達の中で一番あった。
「エヘヘ、昔はこれでもオラは鉱石取りの名人って言われてたんだ!」
「綺麗に採れてる鉱石を見たら、そう言われていたんだなと納得しますよ。流石、ドワーフ族ですね」
ププルさんはそう褒めると、嬉しそうな顔をして苦戦しているルル姉の手伝いに駆け足で向かって行った。
それから特に問題は起こる事無く、無事に目標の量の鉱石を採った俺達は迷宮を出る事にした。
【作者からのお願い】
作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら
下記の評価・ブックマークをお願いします。
作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。




