第572話 【臨時加入・3】
その後、その日は特に予定はない俺は宿で大人しく過ごす事にした。
翌日、朝食の席で姉さん達と集まり、食事をしながら装備についての話し合いを行っていた。
「装備の素材だけどさ、どの程度の素材を集める?」
「う~ん……正直、今はまだ私達は成長途中だから、どうしたらいいか皆で昨日話してたんだよね」
「ジンなら最高級の素材を集められると思うけど、その素材で出来た装備が私達の成長を止めてしまう可能性もあるでしょ」
「装備だけよくして、自分の能力を過信してしまう冒険者の話は昔からあるもんね」
冒険者の中には、貴族や金持ちといった者達が道楽としてやってる者達も居る。
そういう奴等は特に装備に金を掛けて、自身の能力を過信して周りに迷惑をかけている。
「だけど姉さん達は、慢心とかしないだろうから良い装備を身に着けても良いとは思うけどな」
「ううん。そういった油断から事故に繋がるから、自分達に見合わない物は身に着けないって冒険者になった当初に決めたの」
「ヘレナはこういう所は頭が固いから、何を言っても無駄よ」
姉さんが真剣な表情で言うと、ルル姉はコソッとそう伝えて来た。
う~ん……そうなると、姉さん達の装備の素材が逆に難しくなったな。
「最高級の素材なら手に入れる場所は知ってるけど、それ以外となると分からないな……」
「ギルドで聞くのはどうかしら? ジンならパートナー契約してるから、色々と教えて貰えるんじゃない?」
「あっ、確かに! 素材についてほぼ聞いた事無いけど、そういうのも確かに聞けたはず!」
そう俺は言った後、食事を終えて姉さん達と一緒に冒険者ギルドへと移動した。
ギルドに到着した俺は受付でフィーネさんは居るか聞くと、奥からフィーネさんが出て来て俺は姉さん達と一緒に部屋に案内して貰った。
「フィーネさん、突然来てすみません」
「いえ、大丈夫ですよ。いつ来て頂いても対応できるようにしていますので、それで本日はどういったご用件ですか?」
「実は姉さん達の装備の素材集めを手伝う事になったんですが、俺が知ってる素材はどれも最高級の素材でして、姉さん達に合う素材を知らなかったんですよね。それで今日来た理由なんですが、姉さん達とクラスに合う装備の素材について聞きたくて来ました」
そう俺はフィーネさんに今日来た要件を伝えた。
フィーネさんは今の話を聞くと、直ぐに「成程、分かりました。少々お待ちください」と言って部屋を出て行き。
数分後、資料を持って部屋に戻って来た。
「まず最初にですが、ヘレナさん達について色々と質問をしてもよろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です」
フィーネさんの言葉に、姉さんはそう返事をすると。
フィーネさんは姉さん達の戦い方だったり、陣形について色々と質問を始めた。
少し疑問に思ったのは、姉さん達に対する質問はかなり詳しい質問ばかりという事だ。
「フィーネさん、もしかして姉さん達の事を元から調べてましたか?」
「ジンさんの関係者ですから、軽く調べてはいますよ。ジンさんの性格上、偶にこのように一緒に依頼を受ける可能性もありますので、ジンさんの周りにいる冒険者の方についてはある程度は頭に入れてます」
ニコッと笑みを浮かべながらそう言ったフィーネさんに対し、俺は〝仕事が出来る人だな〟と改めてそう認識した。
それからフィーネさんは姉さん達に合う装備の素材について、いくつか提案してくれた。
だけど、一つだけどうしても難しい素材があった。
「分かってはいましたけど、シャーリーさんの武器の素材に関しては俺が思っていた物以外は無さそうですね」
「そうですね。魔力伝達が良く、弓としても使える物と言ったら世界樹しかありませんね。どちらか片方でしたら、沢山ありますけど」
「シャーリーさん、どうしますか? 一応、伝手を頼れば手に入れる事は出来ますけど」
「……ヘレナ、どうしたらいいかしら」
シャーリーさんは困った様子で少し考え込むと、隣に座っていた姉さんにそう尋ねた。
「シャーリーは前から欲しがってたし、私は良いと思うよ。それにシャーリーの弓と魔法にはいつも助けて貰ってるから、皆もそうだよね?」
「ええ、シャーリーが前からそういう弓を探してたのは知ってたし、代わりの物が無いならそれでいいと思うわよ」
ルル姉がそう言うと、他のメンバー達も反対意見は無く。
シャーリーさんの弓については、特別に世界樹の素材を使おうという事になった。
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