第564話 【新薬・3】
王都にある拠点へと移動してきた俺は、地下にある研究所へとそのまま向かった。
実験室にはレンとイリス、そして数名の悪魔達が居た。
「わ、私が魔女様の弟子にですか!?」
研究所へとやってきた俺はイリスに重要な話がある言い、ヘレナーザさんの弟子候補に選ばれたと伝えた。
「あっ、でも私はお兄さま達の弟子ですけど……」
「正直、ヘレナーザさんがどれだけ教えるのが上手いのか分からないけど、魔女の弟子になった俺とレンはそれ以前と比べたら物凄く成長した事は確かだ。イリスは俺達の弟子になってるからって想いで、今回の誘いを断るのは俺はやめた方がいいとは思う」
「ジンの言う通りだな、それに別にヘレナーザ様の弟子になったからと言って、ヘレナーザ様がどう思うか分からないけど、俺達はずっとイリスの事は大切な弟子だと思ってるぞ。なあ、ジン?」
「当たり前だ」
レンの言葉に俺は頷きそう言い、イリスの返答を待った。
それから少しの間イリスは考え、俺とレンに対して「魔女様の弟子になりたいです」と伝えてくれた。
その後、イリスの返答を聞いた俺はレンに許可を取りイリスと共にクロエ達の所とへ向かった。
「ヘレナーザ様が私達の師匠に!?」
「えっ、それって本当なの!?」
ドラゴン族の里でドラゴン達と訓練をしていたクロエ達に対し、俺はヘレナーザ様が弟子にしたいという事を伝えた。
二人はその話を聞くと盛大に驚き、嘘じゃないのか確認してきた。
「本当だよ。ヘレナーザさん曰く、俺の師匠やナシャリーさんを見てて自分も弟子が欲しくなったらしいんだよ。それで弟子を探してたけど見つけられなくて、俺からクロエ達を弟子にするのはどうかって提案したんだ」
「魔女様の弟子って事は、今よりもずっと強くなれるよね!」
「まあ、そこは頑張り次第だとは思うけど、今より色々と学べる事は確かだよ。俺も師匠の弟子になって、色々と学んでるからね」
それからクロエとレイは弟子になると言い、直ぐに返事をしたいからと俺は三人を連れて空島へと戻って来た。
「もう戻って来たのね。って、三人共連れて来たって事は了承したのね」
「はい。ヘレナーザさん、三人共弟子になりたいみたいですけど本当に大丈夫ですか?」
「勿論よ。これから、よろしくね」
ヘレナーザさんはクロエ達にそう言うと、クロエ達は「よろしくお願いします。師匠!」と返事をした。
その返事を聞いたヘレナーザさんは嬉しそうな顔をして、早速クロエ達にどういった訓練をしようかという話し合いを始めた。
「ヘレナーザさんがクロエ達を弟子としてとって教え始めるんなら、また予定を調整しないといけないな……」
「あら、何か予定とか決めていたの?」
「はい。そろそろ冒険者活動に復帰して、最高ランクまで上げようかなと考えていたんです。本当だったら少し前に達成してる予定だったんですが、獣人国の問題がありまして後回しにしていたんですよ」
「そうだったのね。それなら、先にそっちを終わらせた方があの子達も修行に身が入ると思うわね」
師匠はそう言うと、楽しそうにクロエ達と予定を話し合っていたヘレナーザさんへと近づき、冒険者活動の件について伝えてくれた。
ヘレナーザさんはその話を聞くと少し考え込み、暫くして「それなら、先にランクを上げ切ってからでもいいわよ」と言ってくれた。
「良いんですか? ヘレナーザさんを後回しにする感じになりますけど」
「大丈夫よ。色々と準備をしようとも思ってたから、その時間に使うわ」
「そうですか、ありがとうございます。なるべく、早く用事は終わらせるように頑張りますね」
その後、ヘレナーザさんは早速クロエ達の育成の為に調べ物をしてくると言ってその場から消えた。
クロエ達は自分達がまさか魔女の弟子になれるとは思っても居なかったらしく、ヘレナーザさんが居なくなった後も少し興奮気味だった。
それから俺はクロエ達と共に王都へと戻って来て、レンに今日の出来事について伝えた。
「成程な……まあ、俺としてはどっちでもいいけど、ジン達が決めたならついて行くよ」
レンは俺達の話を聞くと、研究もひと段落してるから冒険者活動に賛成してくれた。
それから夕食は宿で食べ、そのままその日は眠りについた。
その翌日、未だ王都は俺達の話題で持ちきりの為、前日にギルドへ連絡していた俺は冒険者ギルドの個室へクロエ達と共に転移した。
「皆様、お久しぶりですね」
「フィーネさん、お久しぶりです。昨夜は突然連絡して、すみません」
「いえ、それらも含めて私はジンさん達のパートナーですので大丈夫ですよ」
久しぶりに顔を合わせたフィーネさんは、笑顔で俺達を出迎えてくれた。
そしてそれから少しフィーネさんと世間話をしていると、俺達に合った依頼の書類をリコラさんとティアさんが持ってきてくれた。
リコラさん達も久しぶりの為、軽く世間話をしてから本題へと移った。
前回からかなり日が開いていて、まずはあとどれくらいの依頼数でランクが上がるのか聞いた。
すると、イリスに関してだが獣人族の問題解決で俺達と共に行動していたおかげか金級冒険者に上がれると伝えられた。
「普通の依頼じゃなくて、上がる事ってあるんですか?」
「今回の場合、国際的な問題でもあったので貢献者としてイリスさんのランクが上がる事になったんです。本当はジンさん達も白金級にあげてもいいだろうという話になったみたいですが、ジンさん達が一緒に上がろうとしている事を伝えた所、ジンさん達はランクは上がりませんでした」
「それは良かったです。折角、ここまでイリスのランク上げに専念していたのに最後は一緒じゃないとなると、今までの頑張りが無駄になっていましたからね」
フィーネさんにそうお礼を言った後、俺達は今日受ける依頼をいくつか選び、早速その最初の依頼の場所へと向かった。
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