第561話 【ドラゴン族との関係・4】
あの後、ドラゴン族が模擬試合をする際に使用する場所へと、俺達は移動して来た。
まず最初、誰から戦うと尋ねると。
「はい! 私、戦いたい!」
と、レイが勢いよく返事をした。
そんなレイを俺は見て、ドラゴン族の方に「こちらはレイが最初に戦うみたいです」と言うと。
赤いドラゴンが前に出て来て、レイとの戦いを希望してレイと赤いドラゴンは模擬試合をする為に会場の方へと降りて行った。
「ジン君、さっき貰ってた本だけど、あれはマリアンナ様には見せるの?」
「正直、それがあの本を選んだ理由だから見せる予定だよ。後は単純にタイトルを見て、少し気になったからな。古の魔法って書いてある時点で、昔の時代に使われていた魔法が書かれてるだろうからな」
「もし、良かったら私にも見せて欲しいな……」
「聞かなくてもクロエにも見せる予定だったよ。魔法が好きなクロエに見せないって、そんな酷い性格はしてないからね」
クロエは俺のその言葉を聞くと、嬉しそうな顔をして「楽しみに待ってるね」と言った。
その後、ドラゴン達と俺達はそれぞれ戦いをして、日が暮れるまでドラゴン族の里で過ごした。
「ジン達、今日はあいつらの我儘に付き合ってくれて感謝する」
「いえ、俺達も訓練の成果を確かめられたので良かったです。ドラゴン族と戦うなんて、滅多に出来ないですからね」
「……ジン。世辞でもそんな事を言ったら、あやつらが調子に乗ってまた戦いたいと煩くなるぞ?」
「……まあ、でも楽しかったのは本当ですよ。ただまあ、何度もするのは違いますね」
ヴェルドさんは俺がお世辞で言った事を瞬時に察して言ってきて、俺は周りに居たドラゴン達の視線を見てからそう言葉を返した。
それから少し、ドラゴン族と話しながら落ち着いていると、一匹の青色のドラゴンが飛んでやって来た。
「ヴェルド様、頼まれていた物が出来たとドワーフ族の者から預かってきました」
「もう出来たのか? 頼んだのは数日前なのに、よくこんなに早く出来たの」
「竜王様に頼まれたのなら、他の仕事は放って全力で取り組むと言ってましたから、その言葉通りにしたんでしょう。こちらがその完成品です」
そう言って飛んできた青色のドラゴンは、ヴェルドさんに木箱を渡した。
ヴェルドさんは渡された木箱を手に取ると、箱の蓋を取り中身を確認した。
「うむ、良い出来だな……ジン。お主の仲間を呼んでもらえるか?」
ヴェルドさんからそう言われた俺は、遠くでドラゴン族と話していたレイ達を呼んでヴェルドさんの前に集まった。
「これは宝とは別に、ジン達に渡そうと思って用意していた物だ」
そう言って見せられたのは何の変哲もない短剣で、それが人数分用意されていた。
「えっ、また贈り物ですか? さっき頂きましたよ?」
「あれとは別と言っておるだろう? これはジン達と我等、ドラゴン族が友好関係であると言う証のような物だ。素材は普通の鉱石を使用しているが、我の魔力を付与しておってな。これを見せれば大抵のドラゴン族ならば、直ぐに我の知り合いと気付くようにしてある」
「……簡単に説明されましたけど、ドラゴン族と友好の証ってかなり凄い物じゃないですか?」
ドラゴン族はこの世界で、上位の存在だ。
竜人族が神の様に慕うように、他にもドラゴン族を崇めてる国や人々が居る事は知っている。
「じ、ジン君。なんだか凄い物を貰っちゃったね」
「正直、宝だけでも精神的に疲れてたのに友好の証だなんてな……」
あの後、何度も断ろうとしたが、ヴェルドさんは一切引かずスカイ達も一緒になって俺達は結局、ドラゴン族との友好の証を受け取った。
その友好の証である短剣は、普通の鉱石で作ったとヴェルドさんは言っていたが、見た感じミスリルと同等以上の希少な素材で作られてる。
まあ、ヴェルドさんの魔力を付与したと言っていたから、そのせいで武器としての性能が高まってる可能性は十分あるだろう。
「まあ、取り合えずこの武器は【異空間ボックス】に入れておくか……外に出してて、無くしたりしたら大問題になりそうだからな」
「万が一盗られたとしても、俺達に渡したとヴェルド様がドラゴン族に伝えておくと言っていたから、盗った奴が逆にドラゴン族に狙われそうだけどな」
「国が盗ったりしたら、知らない間に一国が消滅してるなんてありえそうだな……マジで大事に保管しておかないとな」
若干、怖さを感じつつ俺は短剣を【異空間ボックス】の中へと入れた。
その後、俺達は城に素材の受け取りに行こうと思っていたが、既に陽は落ちてしまっていた為、今日の所は一度迷宮の家に戻る事にした。
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