第559話 【ドラゴン族との関係・2】
翌日、俺達は久しぶりに迷宮の外へと出てドラゴン族の里へと向かった。
「あっ、ジン! 久しぶり!」
「ジン達が来たよ!」
里の入口に転移すると、ドラゴン達が寄って来て少ししたら沢山のドラゴン達に囲まれていた。
そんなドラゴン達を退かして奥からスカイが現れると、竜王の所へと案内すると言って背中に乗せて貰った。
そうして連れてきてもらった場所には、人間の姿をした竜王が待っていた。
「お久しぶりです。ヴェルドさん」
「うむ、久しぶりだなジン。それにクロエ達も元気にしておったか?」
ヴェルドさんは俺達が部屋に入ってくると、笑みを見せてそう出迎えてくれた。
「まずは態々呼び出してしまって、すまんな。折角、迷宮の攻略を楽しんでおったんじゃろ?」
「いえ、大丈夫ですよ。ヴェルドさんにはお世話になりましたから、それに捕らえられていたドラゴン達の事も気になっていたので」
「ジンは優しい奴だな。あの馬鹿共もちゃんと意識戻って、今は里で療養中だ。全く、凄腕とは言え従魔使いに使役される程の精神力とは情けないから、これから里のドラゴン達にはもう一度訓練を付ける予定じゃ」
ヴェルドさんがそう言うと、今回呼び出し理由を話し始めた。
俺達を呼んだ理由、俺達に対するお礼をしたいという内容だった。
「既に国に対しての礼は済ませたが、ジン達にはしておらんだろ? 我らの方で、ジン達にどんな礼をしたらいいか話し合ったが。良いお礼の品が思い浮かばなくてな、それなら本人達を呼んで聞こうと思ってこの場を設けたんじゃ」
「そんな、お礼の為にドラゴン達を助けた訳じゃないので、国が貰ったと同じ素材を受け取るだけで十分ですよ?」
「それは我等が嫌なんじゃ。人間の国には勿論感謝しておるが、あの戦いで一番活躍したのはジン達だろう? それにドラゴン達の救援を聞いて、動いてくれたのもジンだから、ジン達には特別な礼をしたいと我等は思っておるんじゃ」
ヴェルドさんからそう言われた俺は、本当にお礼の為に頑張った訳じゃないから急にお礼の品を要求されても、全く思い浮かばない。
クロエ達は何か思い浮かんでるのかと思って、クロエ達の方を見たがクロエ達も全く思い浮かんでない様子だ。
「その、本当にお礼の品は良いですよ? 特に欲しい物もありませんし……」
「そこを考えて欲しい。我等もジン達に口だけで感謝を伝えるのは嫌じゃ」
ヴェルドさんは頑固な性格なのか、一切引く気はなく真顔でそう言った。
俺はそんなヴェルドさんに対して、少し考える時間を下さいと言ってヴェルドさんの部屋を出て、クロエ達と話し合いを始めた。
「……どうする? ヴェルドさん、絶対に引く気はないみたいだけど」
「そうみたいだね。でも、本当に欲しい物ってないよね?」
「そもそも、俺達の場合は欲しい物があったとしても自分達で手に入れられるだけの力があるからな……ドラゴンの素材だって、国に取りに行けば貰えるみたいだし」
そう俺とクロエ、そしてレンが口にすると、レイが「それならドラゴン族との対戦権とかはどう?」と言った。
「いや、それは逆にドラゴン族が喜ぶだけになるだろ? 現に今だって、ジンと戦いたいドラゴン達が沢山居るって、前の大会の時にスカイさんがジンに言ってたのレイも覚えてるだろ?」
「あっ、そういえばそんな事言われてたね……う~ん。私だったら、ドラゴン達と戦うだけでもいい気がするけど、それだとお礼の品にはならなそうだね」
「逆にこっちが渡すみたいな感じになるな……う~ん。イリスは何か思いつくか?」
「ドラゴンさんなら珍しい鉱石とか持ってそうだなとは思いましたが、迷宮でも手に入りますからお礼の品としてもらう程ではないですよね……」
鉱石系もドラゴンの素材を貰えるなら、そこまで欲しいと思える物ではないしな……。
それから俺達は数分間考えたが、中々いい案が思い浮かばず様子を見に来たスカイにどんな物を頼めばいいか相談に乗ってもらう事にした。
「う~ん、まあジン達が欲しい物が無いのはこっちも分かってたけど、そこまで物欲が無いとはね……変に考えすぎずに宝が欲しいって言って、親父に宝を選ばせたらどう? それだったら貰った後で要らなかったら、売ってお金に出来るでしょ」
「いや、流石に頂いた物をそのまま売るとは考えてませんけど、欲しい物も特に思い浮かばないですし、そう頼んでみます。クロエ達もそれでいいかな?」
「うん。大丈夫だよ」
クロエがそう言うとレイ達も頷き、ドラゴン族からのお礼の品はヴェルドさんが選ぶ宝という事になった。
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