第557話 【戻って来た迷宮探索・4】
それから全員のステータスの確認を終えた俺達は、これからの迷宮探索をどうするのか話し合いを始めた。
「さっきレイはレベル上げを頑張るとは言ってたけど、これからの探索はどういう風に進めるかちゃんと決めようと思う。神様から聞いた感じだと、追加されたエリアは更に強く設定しているみたいだしな」
「さっきは勢いのまま言ったけど、皆に迷惑はかけたくないからちゃんと決めた事は守るよ」
俺の言葉に対して、レイは落ち着いた雰囲気でそう言った。
「まあ、でも一度戦ってみないと分からないよね。それに追加エリアまで、まだ私達も攻略してないからそこに行ってから一度戦って見て、どの程度なのか調べてからの方がいい気はするかも」
「それは確かにそうだな……具体的にはその時に決めるとして、大体は決めておかないか? レベル上げを目的にするのか、攻略を目的にするのかとかさ、結局外がまた俺達の話題で騒がしいから冒険者活動の代わりでここに来てるだけだから、前回みたいに長期間は居ないと思うからな」
迷宮へと避難して来た俺達だが騒動が起きる前は、冒険者活動を頑張っていてそのまま騒動が終われば冒険者活動を再開する予定だった。
しかし、あまりにも外が俺達の話題で騒がしく、街を歩くだけで人が寄って来ていたから、迷宮への避難を決めた。
「一応、様子見で一週間籠るんでしょ? それなら、レベル上げは満足に出来ないだろうから、攻略メインで行動してもいいんじゃないかな?」
「クロエちゃんの意見に賛成かな。レベル上げもしたいけど、こんな短期間じゃ満足に出来ないだろうから、最初から攻略メインって考えて行動した方が良いかも」
「私もクロエお姉さまの意見に賛成です」
「俺はまあどちらでもいいから、皆で決めた事に文句は言わないよ」
クロエの意見に対して皆はそう言って、誰も反対する人が居なかった為、攻略メインで一週間迷宮探索を行う事が決まった。
そうして話し合い後、今日は攻略には行かない為、各自自由行動の時間とした。
俺はと言うと、久しぶりに迷宮街の遊戯施設へと向かった。
「ここが確か、新しく出来た施設だったかな?」
迷宮に戻ってきた際、神様から遊戯施設も少し変えてるから、暇な時は見に行ってみてよと言われた。
その施設の名前は〝ドールバトル〟という施設で、人形を戦わせる遊戯施設だ。
人形には様々な武具が用意されていて、遊戯施設で使えるコインで購入が出来る。
「あれ、ジン君がここに居るって珍しいね」
「姉さん? 姉さんこそ、こんな所で会うなんて思わなかったよ」
人形を受付で購入して、武具を見て回っていると姉さんと遭遇した。
確かに迷宮に来る前に姉さん達も迷宮に行くとは聞いてたけど、まさかこんなに直ぐに会うとは思わなかった。
「姉さんこのお店は来たことあるの?」
「うん。ジン君は初めて?」
「初めてだね。さっき受付で人形を買ったばかりだよ」
「そうなんだ。それじゃ、私が少し教えようか?」
姉さんからそう言われた俺は折角ならと思い、姉さんから色々と〝ドールバトル〟について教えて貰う事にした。
姉さんは以外にもこの遊戯施設に通っているらしく、特にこの施設に通っていると聞いた。
「意外だよね。姉さんがこういう施設に通ってるなんて」
「私も最初はあんまり来てなかったんだけど、この施設が出来てからは通い始めたかな? 人形の育成とか出来て、従魔を持たない私からしたら成長させるのが楽しいんだよね」
人形には5つのパラメーター〝攻撃力、守備力、体力、魔力、敏捷〟があり、それらを鍛えたり装備を整えたりして戦わせる事が出来る。
従魔を持たない人は特にこの施設を楽しんでいるらしく、姉さんもその一人だと言った。
それから俺は姉さんに一通り教えて貰い、ついでに人形の武具も見繕って貰った。
「ジン君、初心者なのに装備だけは凄い立派になっちゃったね」
「迷宮の素材は沢山余ってるからね」
ギルドやリーザの所に素材は処分しているが、まだ沢山余っている。
そうして装備を揃えた俺は、早速だが〝ドールバトル〟の対戦を始めてやる事にした。
対戦にはいくつか種類があり、その中で今回は〝練習対戦〟と言って人と戦うのではなく、施設側が用意した人形との対戦だ。
「ドールバトルは基本的に人形が勝手に戦うんだけど、人形に持たせてる武具で人形の戦い方が変わってくるんだよ。今、ジン君の人形は杖を持ってるからこの場合は魔法を使って戦うね」
姉さんが言った通り今の俺の人形には杖を持たせていて、対戦相手である人形は剣を持っていた。
それから試合が始まると、勝手に人形達が自動で動き出した。
俺の人形は相手の人形が接近して来たのに対し、軽く後方へと避けると、そのまま避けながら魔法を放った。
魔法の威力は初期の人形の割には高く、その魔法が一発当たっただけで相手の人形は壁まで吹っ飛び、そのまま試合が終了となった。
「……ジン君の人形さん。今のレベルで持てる装備の最高レベルの装備を着てるから、練習用の人形だと簡単に倒せちゃったね」
「まあ、でも要領は分かったよ。今は装備のおかげで勝てたけど、人との対戦とかなってくると難しくなってくると思うし、育て方もかなり考えないと勝ち続けるのは厳しそうだね」
「そうなんだよね。一応、人形自体は受付で買う事は出来るけど、育てるのにもコインを使うから、育て方とかの情報を売ってる情報屋とかも現れ始めてるんだよね」
「そんなのも出てきてるって、かなり人気だね」
その後、俺は姉さんと一緒に人形の装備を見て回ったり、姉さんの対戦を見たりと楽しんだ。
最初は人形バトルと聞いて、特に興味は湧かなかったが姉さんと一緒に色々としてみて、意外と俺も楽しんでいた事に途中で気づいた。
多分、隣で一緒にしていた姉さんが楽しんでいたから、自然とそうなっていたんだと思う。
「なんだか、こうして一緒の趣味が出来たのって初めてだね」
「……家の事が無くなってよく会うようになってから、俺が一方的に料理を食べさせたりはしてたけど、一緒の趣味は今まで無かったね」
「うん。今日一日一緒に楽しめて、今までも勿論楽しかったけど、また別の楽しみ方が出来て凄く良かった。今度はルルも誘って三人で遊んだりしたいけど、ジン君どうかな?」
「良いと思うよ。折角の姉弟だしね。ルル姉を人形でボコボコにしたいから、それまでにもう少し〝ドールバトル〟の事を勉強しておくよ」
そうして姉弟で同じ趣味が出来た俺と姉さんは、また遊ぼうと約束をした。
【作者からのお願い】
作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら
下記の評価・ブックマークをお願いします。
作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。




