第551話 【奇襲作戦・2】
「良かったんですか? 奇襲部隊の方にユリウスさんをいれても」
あの後、話し合いが終わった俺は会議室から他の人達が出たのを見届けて、姫様にユリウスさんが奇襲部隊にした事について聞いた。
「ユリウスに以前から、ジンと共闘したいとお願いされていたのよ。今回は丁度いい機会だと思って、ユリウスを奇襲部隊に入れたのよ。後は防衛に力を入れすぎて、作戦が失敗したら元も子も無いでしょ?」
「まあ、確かに作戦が失敗したらそうですけど……俺が隊長に任命された時点で、ユリウスさんは防衛に入ると思っていたので驚きましたよ」
そう俺が姫様に言うと、姫様から「そこは実力と性格から、ジンに決めようって最初から考えていたわ」と言われた。
その後、奇襲作戦は明日決行する為、今日は早めに休むように姫様に言われて俺達は宿に帰宅した。
そして姫様に言われた通り、俺達はその日は何処にも行かず宿でゆっくりと過ごして一日を終えた。
「それじゃ、転移するよ」
翌日、奇襲部隊の者達は城に集まり、俺の転移魔法でスカイが調べて分かった敵陣の近くへと転移で移動した。
移動した場所は山の近くで、木々が生い茂っていて視界はそこまでよくはなかった。
しかし、この中でも一番の感知能力が高いクロエは「沢山、敵が居るね」と直ぐに敵の場所を察知していた。
「クロエは凄いな、ドラゴン族よりも感知能力だけで言えば高いんじゃない?」
「えっ、そこまでですか?」
「うん。仲間を捜索してる時、この距離で敵の感知は出来てなかったよ」
スカイのその言葉に俺は驚き、言われた本人であるクロエも驚いた顔をしていた。
「ドラゴン族よりも優れた感知能力って、クロエちゃん凄いね」
「そこまで自分の感知能力が高いとは思わなかったから、ちょっと驚いてる。その、本当に私の感知能力ってそこまで高いんですか?」
「高いよ。多分、獣人族でもそこまで感知能力が高い人は居ないと思うから、純粋にクロエの力だと思うよ」
スカイからそう褒められたクロエは、ドラゴン族という種族から褒められた事に笑みが浮かび上がる程に嬉しがっていた。
それから俺達は自分達の魔力を感じ取られないようにして動き出し、敵のアジトへと向かって行った。
「ジン君、作戦だけど今朝話した感じで行くなら、ドラゴンが出て来るまでは僕やジン君達は待機しておくのかい?」
「いえ、最初は全員で行こうかなと思います。最初が一番、相手にダメージを負わせられると思うので、そこで変に余力を残していたら失敗に繋がると思います」
移動中、作戦の事で確認をしてきたユリウスに対して俺はそう伝えて、その情報をセインとヨルドにも共有してもらった。
そうして移動を始めて20分程経った頃、ようやく視界の先に敵のアジトが目に入った。
そのアジトには、これまで調査して来て敵だと認識した者達の紋章が付いた装備を着けている者達が大勢居た。
そしてその他にも、沢山の魔物がそのアジトには居た。
「作戦開始」
俺は静かにそう口にして、それぞれ戦闘準備を終えて敵のアジトへと襲い掛かった。
敵は俺達の存在に一切気付いていなかったみたいで、急に襲われてかなり慌てていた。
「緊急事態発生、緊急事態発生!」
襲い始めて数十秒後、魔法で声量を拡大した敵のその報告が行われ、アジトの奥から続々と敵が現れて来た。
そして作戦を開始してから5分程経った頃、遂にスカイから聞いていた通り、ドラゴンが5体現れた。
「作戦通り、行くぞッ!」
ドラゴンが現れた瞬間、それまで敵の制圧に参加していた俺はそう叫び、ドラゴンの対処部隊を呼び集めた。
ドラゴンへの対応は、俺のパーティーメンバーとセイン、ヨルド、デイル、ユリウスの計9名で対応する事にした。
「レイとイリス、クロエとレンは一体ずつ頼む。そして、セインとユリウスさん、ヨルドとデイルもそれぞれの長所を活かして一体ずつ対処を頼む」
「「了解!」」
俺はクロエ達には慣れてる組み合わせで頼み、セイン達にはそれぞれ関わりのある者達と共に戦って貰うように指示を出した。
唯一、ヨルドとデイルの組み合わせは心配だが、そこについてはクロエ達に様子見を見ながら手助けを頼んでいる。
そして皆にはドラゴン一匹に対して、二人で相手するように指示を出したが、俺は一人でドラゴンと戦う事にした。
それは俺がこの中で一番強いからという理由も一つあるが、今目の前で操られてるドラゴンを見て俺は一人で戦おうと決めた。
「お前等、絶対に助けてやるからな……」
スカイからは聞かされてなかったドラゴン達の正体は、俺がスカイとおにごっこをしていた時に応援してくれていたドラゴン達だった。
あの時、俺はあいつらに色々と声を掛けて貰い、挫けそうな時もあったがそこを乗り越えれたのはあいつらの応援があったからだ。
そんなあいつらが敵に操られてるのを見て、俺は直ぐにでもあいつらを開放してやりたいと気持ちが高ぶっている。
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