第549話 【新たな情報・4】
「それで、全力の勝負でいいのか?」
「うん。ジン君との差を確認したいからね」
セインは笑みを浮かべてそう言い、俺は全力を出すなら少し準備が必要だと伝え、セインをその場に待たせて師匠の居る空島へと向かった。
そして師匠に勇者と模擬試合をしたいから、それの結界を張ってほしいと伝えた。
「こんな雑用の為に呼びに来てすみません。その、嫌だったら断っても大丈夫です」
「別にいいわよ。弟子ちゃんの頼みだもの」
師匠は俺の頼みをすんなりと引き受けてくれて、一緒に草原へと転移すると師匠は俺とセインが戦う空間に結界を張ってくれた。
「これで全力を出しても迷惑は掛からないわよ」
「流石、魔女さんだねこんな凄い結界を一瞬で作るなんて……」
セインは師匠の作った結界に驚いていたが、直ぐに戦いの準備を始めた。
俺もそんなセインを見て、戦いの準備を始めた。
「あれ、ジン君この前はドラゴンの力を借りてたけど今回は使わないの?」
「別の方と言っていいか分からんが、あれと似た技をもう一つ持ってるからそっちを使うんだよ。まあ、見たら驚くだろうけどな」
「ジン君が凄い事はもう知ってるけど、まだ驚く力を持ってるの?」
セインは興味津々と言った様子でそう言うと、戦いの準備を終えて俺達は距離を取った。
そして互いに武器を手に取り、審判役は師匠にお願いした。
「二人共いいわね? 試合開始」
師匠のその合図を聞いた俺とセインは、試合開始と同時に返信をした。
セインは前回同様に神と一体化し、その姿は神々しい姿へと変化した。
そして俺はと言うと、刀に封印されてるベルロスの力と一体化して姿を悪魔っぽく変えた。
「その姿が悪魔の力を利用した姿だね」
「あれ? 意外と驚かないんだな、もしかして知ってたのか?」
「見たのは今回がはじめてだけど、話は聞いてたからね。まあ、内心は凄く驚いてるけどね。その悪魔の力を利用してるみたいだけど、大丈夫なの?」
「心配しなくても力は完全に封印されてるし、俺が乗っ取られるなんて事も無い。そもそも、そんな事をしらたこいつが消えるようになってるからな」
まあ、ベルロスは元の生活に対してはそこまで執着も無く。
今の方が制限はあるが、人間界を見ていられるからマシだと思っている。
「ジン君がそう言うなら、大丈夫だとは思うけど……それにしても、僕との戦いでは不利なんじゃない? 僕は神様と一体化していて、神聖力がこもった力を使えるんだよ?」
「ふっ、やってみたら分かるさ」
自信有り気なセインに対し、俺はそう口にして戦いを開始した。
魔力がこもった剣と刀がぶつかり合い、大きな振動が起きた。
レベル、身体能力共に俺の方が上みたいでセインは、少しだけ耐えていたが数m吹き飛んだ。
「……凄いね。僕もかなり強くなったと思ってたけど、ジン君の方が成長してるみたいだね」
「これでも色々と沢山戦いを経験して来たからな、なんならつい最近はクロエ達と5000を超える魔物と戦ったばかりだからな」
そう俺が言うと、セインは笑みを浮かべて「本当にジン君達は化け物だね」と言うと、再び動き出して戦いを再開した。
それからセインと俺は、一時間程戦い続けた。
神と一体化したセインの力は、確かに前回よりも格段に上がっていたが、それ以上に俺が成長していた為、試合の結果は俺の勝利となった。
「勝てないだろうなとは最初から思ってたけど、まさか逆にここまで差が出来てるなんて思わなかったよ。ジン君、益々化け物になってない?」
「まあ、否定は出来ないね。大会の後から、獣人国の問題解決の為に悪魔が乗り移った獣人族と戦ったり、魔物の大群と戦ったりして、自分でも気づかない内に成長していたんだと思う」
「……まあ、でもここまでボコボコにされたら、逆に訓練へのやる気が出てくるよ。今回は僕の我儘に付き合ってくれてありがとね」
「いや、俺もセインの今の実力を確認しておきたかったから、申し出は有難かったよ」
そう俺とセインは握手を交わし、模擬試合の為に結界を張りに来てくれた師匠に対し、俺達は「ありがとうございました」とお礼を言った。
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