第538話 【新たな問題にむけて・3】
模擬試合から数日後、話し合いの日程日となり俺達は全員で王城へと馬車で移動していた。
「なんだかこうやって入るのって私達あんまりないよね」
「基本、ジンの転移で移動が許されてるからな」
「でも何で今日は馬車での移動なの?」
いつもみたいに転移をせずに正面の門から入る事に対し、レイは疑問に感じていたのかそう俺に聞いて来た。
「今日の話し合いは記事にされるらしくてな、参加者は基本的にこうやって馬車で王城に入るように言われてるんだ。今回の事件、人が関与してるなら牽制にもなるかもしれないからだろうな」
「あ~、成程ね。確かにジン君や他の人達の名前見たら、悪人でもちょっと躊躇うよね」
「俺だったら、正直ジンが居るって時点で逃げるだろうな……ジンに勝てる奴が現れたら、その時は世界の終りの気がするよ」
レンのその言葉に対し、クロエ達は同時に頷いた。
それから王城の前まで馬車で移動した俺達は、馬車から降りると沢山の人が王城の周りに集まっていた。
多分、あの人達が記者なんだろうな……。
「ジン様方お待ちしておりました」
門番は俺達を確認すると、門を開けて俺達は中に通された。
俺達の名を聞いた記者達はザワザワと騒がしくなっていたが、俺達は気にせず中に入って移動した。
そして城内へと入ると、メイドに会議室まで案内して貰った。
「あら、貴方達も来たのね。久しぶりね」
部屋に入ると、最初に声を掛けて来たのはヨルドだった。
「久しぶりだな、ヨルド。用事ってこれの事だったんだな」
「ええ、国からジン君達には黙っててって言われてたから、ジン君達には言えなかったのよね」
そうヨルドは言うと、俺達はヨルドの近くの席に座り少しだけ情報の交換を行った。
ヨルドの話によれば、やはり今起こってる事件はこの国だけみたいで、隣国には何の変化も無いと教えてくれた。
そうしてヨルドと話していると、会議室には続々と人が集まって来てその殆どの人物が知り合いだった。
「あれ、ルークさん達って王都に帰って来てたんですか?」
「さっき帰って来たばかりだよ。ジン達とはすれ違いで宿に一旦戻って、荷物を置いてから来たんだ」
「そうだったんですね。疲れてるのに話し合いはきついと思うので、これをどうぞ。疲労回復用の回復薬です」
そう言って俺は、レンの作った疲労回復薬をルークさん達人数分を渡した。
ルークさん達は「ありがとな」と言って受け取り、話し合いの前に飲みさっきまで疲れていた様子だったが元気さを取り戻していた。
その後、少しして全員が集まり最後に姫様が会議室に来て、話し合いが始まった。
まず最初に行われたのは現状確認として、それぞれの持つ情報のすり合わせから始まった。
「早い段階から気付いてたってのもあるけど、被害は最小限なのか……凄いな」
話し合いを聞いていた俺は被害は少し出ているが、建物の損傷や家畜が殺された程度で死者は、今の所出ていないみたいだ。
これは早い段階に国が気付き、姫様が動いた功績が大きいと俺は話し合いを聞きながらそう思った。
「それでは情報のすり合わせは終わりにして、今後についての話し合いを始めようと思います」
姫様はそう言うと、事前に決めていた内容を話し合いの場でその場に居る者達に伝えた。
その内容は至ってシンプルで、事件の黒幕を調査するという内容だった。
「フィアリス姫、一つ質問してもいいかしら?」
「何かしら?」
「黒幕の調査と言っても今の段階では、相手がどこにいるのかもわからないわ。手あたり次第、この国を探すのかしら?」
「違うわ。ユリウス、この資料を配って」
ヨルドの質問に対して姫様はそう答えると、ユリウスに資料の束を渡して会議室のメンバー全員に資料を配った。
その資料には、敵のいそうな場所に印が付けられていた。
「その資料は情報の共有前に作った物だから、後で新しい物を作る予定よ。でも、ある程度の敵の居場所は予測出来ているわ」
姫様のその言葉を聞いたヨルドは、ニコッと笑みを浮かべ「ふふっ、流石フィアリス姫ね」と言った。
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