第531話 【戦いを終えて・5】
移動してやって来た街は少し暗い雰囲気で、警戒心が強い様子だった。
今回の依頼は依頼されてギルドに出された日で、情報は王都の冒険者ギルドまで来ていない。
その為、俺達は最新の情報を得る為にこの街の冒険者ギルドへと向かった。
「まさかこの依頼をかの英雄様に受けて頂けるとは、思ってもいませんでした」
「丁度、冒険者活動を再開してパートナーの方にこの依頼を紹介されたんです」
この街の冒険者ギルドのギルドマスターは、俺達が依頼を受けてくれた事を凄く感謝していた。
それから俺はギルドマスターから、依頼についての情報を聞いた。
討伐依頼で討伐対象がブラックウルフの群れとは依頼に書かれていたが、どれ程の数が居るのか俺達の依頼には調査段階と書かれていた。
しかし、話を聞くとどうもかなりの量らしく、最低でも20匹は居るみたいだ。
「それはかなりの大群ですね……」
「そうなんですよね。この街は王都程、冒険者が揃ってる訳では無いので対処が難しく、王都の方に依頼を出す形になったんです」
「最近は特に迷宮のせいで王都に冒険者が集中してますしね」
そう言った後、これは早期解決が良いだろうと判断した俺達は、ギルドを出た後、目撃証言を材料に魔物の探索を始めた。
「いた」
「流石、クロエ。獣人国、悪魔との戦いを経てまた更に探知能力上がった?」
「そうかも? 前よりも微量な魔力でも感じ取れるようになったよ」
本当に探索能力だけは、クロエには一生勝てないだろうな……。
そう俺は思いながら、クロエが見つけた魔物の群れの方へと向かった。
最低20匹と言っていた魔物の群れだが、確認しただけでも50匹は居そうだ。
子供のウルフも見かけたから、ここら一帯で暮らしていて増え続けているみたいだな。
「ウルフだけかと思ってたけど、見た感じ他の魔物も混ざってるみたいだね」
「ああ、ゴブリンとオークもいるな……まあ、悪魔よりも弱いだろうが油断せずに行こう」
俺のその言葉に皆は返事をすると、伝えていた作戦通りに皆は動いて魔物との戦闘を始めた。
ウルフ達は突然の俺達の奇襲に驚き、真面に連携を取る前に一気に数を削った。
そして俺達の存在に気付いて警戒をしだした魔物相手に、俺達油断せずに狩りを続け。
魔物を発見してから、大体10分程でこの場の魔物は全て討伐した。
「取り合えず、これが依頼対象のウルフの群れだとは思うけど。念の為、確認としてももう少し探してみようか」
それから俺は、再びその周辺の調査を始めた。
その結果、街の周辺には戦った魔物の集団以外にそれらしい魔物達はみかけなかったので、俺達は街に戻り依頼を達成した事を報告した。
報告の際、ブラックウルフの群れではなく、他の魔物も混じった集団だと伝えると、ギルドマスターは物凄く驚いていた。
「申し訳ございません。私共の調査不足で、ジン様方に間違った情報を会伝えしてしまいましたッ」
「まあ、俺達だから対処は出来ましたが。今後は、最低でも複数の種族が混じってる事位までは調査をしておいてくださいね」
俺はそんな注意だけしてギルドを出て行き、王都の冒険者ギルドへと戻って来て達成報告を済ませた。
フィーネさんは俺達の帰りが早い事には既に慣れてる為、特に驚くことは無く「お疲れさまでした」と笑顔で迎えてくれた。
「久しぶりの依頼はどうでしたか?」
「まあ、一部情報に誤りがありましたが無事に達成する事が出来ました」
そう俺が言うと、フィーネさんは「何か間違った情報がありましたか?」と驚いた顔で聞いて来たので、依頼先で起こった事を伝えた。
「大変、申し訳ございませんでした。こちらの不備で冒険者を失う事件になってしまうのを防いでいただき、ありがとうございます」
フィーネさんは俺達に頭を下げるとそう言って、今後このような事が無いようにきちんと調査をして依頼をお伝えしますと言った。
その後、今日は他にも依頼を受けようと思っていたのだが、フィーネさんから依頼を改めて選び直しをさせてほしいと言われ。
今日の冒険者活動は、一つの依頼を終えただけで終わる事になった。
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