第522話 【獣人国へ・4】
翌日、朝食を作るメンバーが揃うと俺は各自に指示を出した。
メイン担当は俺とエレナさん、イリスがその補助でクロエとその他の獣人族の方達は皮むきや鍋を見張る等といった簡単な事を頼んだ。
「皮むきですけど、包丁を使うので怪我だけは注意してください。傷自体は回復薬で直ぐに治せますが、食材に血が付いたりしたら食べられませんから」
「「はい」」
クロエと獣人族の方達はそう返事をして、早速作業に取り掛かってくれた。
「エレナさんはスープの方をお願いできますか? 俺はメインの方を担当するので」
「ええ、分かったわ。味付けはどうする?」
「エレナさんにお任せします。昨日のスープもエレナさんが殆ど作ってくれましたが、かなり美味しかったので」
「ジン君にそう言って貰えると、嬉しいわね」
エレナさんはそう言うと、早速スープの作成に取り掛かった。
そして俺もメイン料理の作成に取り掛かり、イリスの補助もあり順調に料理が出来上がっていった。
「やっぱり、人数が多いとその分役割を分けられるからいいな……」
「そうね。獣人族が食事にあまり興味が無いって思ってたけど、意外とこんなに人が居たなんて十数年でかなり変わってみたいね」
エレナさんは、手伝ってくれた獣人族の人達を見ながらそう言った。
その後、食事を作り終えた俺達は料理を持って移動して、皆に食事を配って朝食を食べ始めた。
「ノックス。今、どの辺だ?」
食後、俺は操縦席のノックスの所へと来て、今どのあたりに居るのか聞いた。
「そうですね。順調に進んでいて、今は丁度この辺りに居ますよ」
ノックスは地図のある部分を指してそう言って、俺はその刺されたところと獣人国までの距離を見て「後、二日位は掛かりそうだな」と言った。
「天候が味方してくれたら、もう少し早く着くとは思いますけど、最大でも三日程で獣人国に到着します」
「そうか、分かった。もし何かあったら、連絡をくれいつでも対応できるようにはしておくから」
俺はそう言って操縦席から出て行き、自分の部屋へと戻って来た。
最大でも三日で獣人国に着くか……。
「この船でそれって事は、あの船だったらもっと掛かっていたって事だな……良かった。マジで」
俺は船に乗って何度目か分からないが、ハンゾウに対して感謝を心の底から送った。
その後、俺は隣の部屋で休んでるレンの様子を見に行った。
「レン。調子はどうだ?」
「悪くは無いよ。ずっと横になってるからな、まあちょっと寝すぎて逆に体が痛くなってるけど、船酔いよりかはマシだからな」
「動く事すらままならなかったからな、今後の事を考えて船酔いに効果のある薬でも作った方が良さそうだな」
「それはもう本当に思ったよ。今回の件が片付いたら、一番最初に作成しようと思う。なんなら、それ専用で作るつもりだ」
そう言いきったレンに、それが完成したら港街では特に売れそうだなという話をした。
それから数日間、特に問題無く獣人国へと近づいて行き、予定通り三日間の船旅で獣人国へと到着した。
「ここからでも悪魔の魔力を感じるわね。私が居ないからって、好き放題していたみたいね」
師匠は「フフッ」と楽し気に笑いながらそう言い、俺はそんな師匠を見て本当に師匠が居てよかったと感じた。
それから獣人国の方達と船を降りた俺達は、地上に降り立ち事前の作戦通り、このまま真っ直ぐ悪魔達が根城としている所へと向かう事にした。
「悪魔との戦いの経験はジンが一番多いが、俺達でも相手できると思うか?」
「獣人国の方達は、本来の実力を知らないので何とも言えませんけど。クロムさんなら普通に戦えると思いますよ」
向かってる途中、クロムさんからの質問に俺はそう答えた。
「悪魔は魔法を得意としてますけど、クロムさんの動きは悪魔が使う魔法よりも早く動けてますからね。師匠もそう思いますよね?」
「そうね。実際に貴方の戦いを見た事は無いけど、貴方の能力からしたら大抵の悪魔は倒せると思うわ」
師匠からもそう言われたクロムさんは、心配が解消されたのか凄くやる気に満ちた目をしていた。
その後、俺達は順調に進んで行き、獣人国に到着してから二時間程移動して、目的の場所へと到着した。
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