第516話 【これからについて・2】
「それでクロムさん、どうしますか? 獣人国はクロムさんの事を本当の意味では狙って無かったみたいですが」
「……ここで約束してくれたら信じるよ。金輪際、俺の事を狙わないって」
俺の言葉にクロムさんはそう言うと、クロヴィスさんは数秒考え込み「分かった」と口にした。
「これを機に完全にクロムの事は諦める。もうこれから先、クロムに王になってくれとは言わない」
「本当か?」
「信用出来ないのは承知の上だ。これからの儂等を見ていて欲しい」
「……まあ、見るも何も住んでる大陸が違うから見る事は無いと思うけどな」
クロムさんはそう言うと、手をクロヴィスさんに差し出し、クロヴィスさんはクロムさんの手を握り二人は仲直りの握手を交わした。
「え、エレナ? わ、儂とも仲直りはしてくれんか?」
クロヴィスさんとクロムさんを見ていたエレナさんの父である人物は、腰を低くしてそうエレナさんに尋ねた。
そんな男性に対して、エレナさんはニコリと笑みを浮かべ「嫌よ」と口にした。
「悪魔に洗脳されてて分からないならもう一度言ってあげるけど、私は死ぬ思いをしたんだから許す筈がないでしょ?」
「そ、そんな……」
「諦めろ。ルドリック、儂等はクロム達に酷い事をしたのは事実なんだから」
落ち込むエレナさんの父親を、クロヴィスさんはそう慰めた。
「親父達はこれからどうするんだ? 獣人国にはまだ悪魔が残ってるみたいだが」
「戦うしかないだろう。獣人国は儂等の国だからな、それが無駄な戦いだとしても儂等は諦めない。諦めない強さはクロムが一番知っておるだろ?」
「嫌って程にな……なあ、ジン」
クロヴィスさんと話していたクロムさんは、俺の名を呼びその続きを言うのを言い淀んだ。
そんなクロムさんの言葉を察した俺は、「手伝いますよ」と俺から言った。
「クロムさんも気になってるんですよね。獣人国の悪魔の事、俺も同じです。この世界に悪魔が居たら駄目だとまでは思って無いですが、獣人国の人達に迷惑を掛けてる時点で仕置きは必要ですからね」
「本当にすまん……借りを作ってばっかりだな」
「借りだなんて、俺がしたいからしてるだけですよ。それに悪魔なら、レイも闘いたそうにしていたので丁度いいですからね」
そう俺は後ろで話を聞いていたレイの方を見た。
「うん。悪魔とは一度戦ってみたいってずっと思ってたんだよね! 今回の悪魔はジン君が直ぐに倒しちゃったから、戦う時間も無かったけど獣人国に居る悪魔とは一度ちゃんと戦ってみたいな!」
「あんな感じなので、借りとか考えなくても大丈夫ですよ。それにいざって時の為に、師匠にも話をしてから来てもらえないか聞いてみようと思います」
魔女である師匠が来るかも知れないと聞いたクロヴィスさんは、安心した顔で「そうしてくれると、本当に助かる……」と言った。
「師匠は悪魔に好き勝手させるのは嫌いですので、話せば来てくれると思います。ですけど、何も考えずに獣人国に行けば悪魔も何をするか分からないので、しっかりと作戦を練ってから行った方が良いと思いますね」
「それはそうだな、悪魔への対応の仕方はジンが一番知ってるだろうから、作戦から頼めるか?」
「はい。ですけど、獣人国の地形とかに俺は詳しく無いですし、より詳しい獣人国の情報が必要ですので、一先ずここから移動しましょうか」
そう俺は言って、治療を終えた獣人国の者達を何回に分けて空島へと移動させた。
そして空島に移動してきた俺は、以前獣人国から逃げる為に作られたクロムさん達の家の中に主要人物だけ入り話し合いを始めた。
「ジン殿、こちら獣人国の首都付近の地図となります」
「ありがとうございます。ディアナさん」
話し合いを始めて最初にディアナさんは、獣人国の首都近くが掛かれた地図を渡してくれた。
「へ~、俺が出た時から大分変ったみたいだな」
「はい。クロムさん達が出てから、獣人国は争いも無い時代へと変わったので色々と変わっています」
クロムさんの言葉にディアナさんはそう言い、アルヴィスの証言を聞きながらどうやって悪魔達を退治するのか話し合いを続けた。
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