第514話 【対獣人国・4】
「知り合いなのか?」
「同じ上位悪魔であるが、力は弱い方だった。いつも俺に挑んでは、負けていて退屈凌ぎにもならなかった奴だ」
ベルロスは相手の悪魔が誰だか分かると、途端に飽きた様子でそう言った。
そんなベルロスからの評価を聞いた相手の悪魔は、「その言い方はなんだ!」と怒っていた。
「確かにお前に勝った事は無いが、今は俺の方が上なんだぞ! お前は人間に負けたんだからな!」
「獣に憑いて、粋がってるみたいだから言っておくが。俺が負けた相手が普通の人間だと思ってるんなら、お前は正真正銘の馬鹿だぞ? 目の前に居る人間がどれ程、強い奴なのかまだ気付かないのか?」
ベルロスは呆れた様子でそう言うと、アルヴィスと呼ばれた悪魔は俺と目が合うと、少し後ずさりをした。
「さ、さっきまでより魔力が強まった? な、何者なんだこいつは!?」
「そう言えば、俺が人間界に呼ばれるよりも前からお前居なくなってたけど、その時から獣人に憑いてたのか? まあ、それなら知らないとは思うが。こいつはあのマリアンナの弟子だ」
「マ、マママ、マリアンナの弟子!?」
アルヴィスは俺の顔と見て、驚き倒れた。
悪魔からしたら、師匠って本当に怖い存在なんだな……師匠の名前だけど、ここまで悪魔が怯えるなんて本当に凄い人だ。
「それにお前さっきから気付いて無いみたいだから言っておくが、俺は既に封印されてる。この俺がだ。理解したか?」
「……ッ!」
アルヴィスはベルロスの話を聞くと、直ぐに動き出した。
攻撃を仕掛けてくるのかと、俺か身構えたが何とアルヴィスは目の前から消え逃げてしまった。
「……は? 悪魔が逃げた?」
「ああいう奴なんだよ。それより、追わなくていいのか? ここで苦手したら、面倒だと思うぞ」
「そうだな。もしかしたら、今回の騒動の原因もあいつかも知れないからな」
ベルロスの言葉に俺は頷き、アルヴィスを捕らえる為に動き出した。
「うぐぐ、離せ! 離せよッ!」
「……なあ、ベルロス。こいつは本当にお前に挑む程の悪魔なのか?」
「だから言っただろ、退屈凌ぎにもならないって? こいつは打たれ強くはあるが、それ以外の強みが全くない。あるとすれば、ルゼラに似た話術くらいだろうな」
ベルロスから捕らえる様に言われ、俺はアルヴィスを全力で捕まえる事にした。
魔力を消し、逃げようとするアルヴィスに俺は少しイラッとしながらも、特に問題事は起きずにアルヴィスを真っ直ぐ捕まえに向かった。
アルヴィスは逃走用に色々と仕掛けを用意していたが、その全てを突破していき俺は捕まえる事に成功した。
そして俺に掴まったアルヴィスは、文句ばかり叫んでいる。
「煩いぞ」
ギャーギャー騒ぐアルヴィスの頭を叩いた俺は、そのままクロムさん達の所へと戻って来た。
そこで俺が目にしたのは、先程まで戦っていた獣人族が大人しくしている姿だった。
その中には勿論、クロムさんの父親も居て、申し訳なさそうな表情をしていた。
「もしかしなくても、洗脳系に近い力が切れて正常に戻った感じでしょうか?」
「本当にジンは察しが良いな。その言葉通りだよ」
クロムさんの近くに寄った俺はそう言うと、クロムさんからそう言われ、クロムさんの父親であり獣人国の現国王は話し始めた。
「こうして真面に話すのは初めてであるな、私は獣人国の王をしている。クロヴィス・フィストルという者だ」
そう名乗ったクロムさんの父親に対し、俺は心の名で「アルヴィスに名前似てるな~」と考えていた。
しかし、先程まで敵対していたとは言え相手は王族なので、俺は一先ず挨拶を返した。
「それでクロヴィスさんは、正常に戻ってみたいですけど、どうしますか? こちらとしてはクロムさんの事は諦めて、戦いを終わってほしいんですけど?」
「勿論だ。そもそも、儂等としても無理矢理クロムを連れて帰ったとして、王になどなってくれるわけが無いと分かっているから、十数年前に諦めていたんだ」
「それは本当なのか? だけど、悪魔に多少洗脳されてたとはいえ、かなり違和感は無かったぞ?」
クロムさんの言葉に対して、獣人国の王は下に俯きながら「……諦めてはいるが、期待も少しは今もしている」と言った。
それから、一先ず話し合いは後にして戦いが終わったのなら、獣人国の手当をした方が良いと判断して、俺達は獣人達の治療から始めた。
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