第507話 【獣人国への対処・1】
獣人国が動き出したとハンゾウから伝えられてから、俺は大急ぎでクロエ達を呼び出して作戦会議を行った。
その作戦会議で戦いになった際、出来るだけ人が居ない所が良いと話に出て、まだ開発が進んでない竜人国の空き地というのが出た。
その土地を使わせてもらう為、俺は話し合いを終わった後に一人で竜人国へとやって来た。
「ジン様じゃないですか? どうしたんですか?」
「ちょっと話があって来たんですが、王様は居ますか?」
竜人国の王城前に来た俺は、門番にそう聞いた。
門番は中の兵士に俺が来た事を伝えると、少しして中から執事が現れ「中にお入りください」と言われて城内に入れて貰った。
そしてとある部屋に通されて、少し待っているとグラムス王では無く、第一王子のグライアが部屋に来た。
「ジンさんは毎回、突然来ますね。今回はどの様な要件ですか?」
「あれ、王様は居ない感じ?」
「ここ最近、立て続けに忙しくて休めてなくて休暇を取ってて、その間の国は私が任されてるんだ。一応、次期国王でもあるからその体験的なのも兼ねてね」
グライアはそう言うと、俺が来た目的は何か聞いて来た。
「今日来たのは、元神聖国の空き地を少し貸してもらいたくて話に来たんだ」
「空き地を? まあ、まだ全然開発が進んでないから貸すのは出来るけど、どうしてあの土地を?」
そう聞かれた俺は、グライアに対して獣人国との問題を最初から伝えた。
「そんな事になってたんだ。確かに獣人国関連の事はデュルド王国から聞いてたけど、こっちには獣人国の人達が来てなかったからそこまで大事になってるとは思って無かったよ」
「なんとか解決しようとしてたんだけどな、獣人国が諦め悪くて……」
「獣人国は諦めが悪かったみたいだね。取り合えず、街の近くじゃなければ土地については大丈夫だよ」
「そこは大丈夫。まあ、戦いに発展しない事が一番だけどな……」
その後、土地を貸して貰う事が決まったので、これでもし戦いに発展しても大丈夫そうだろう。
それから俺は竜人国からデュルド王国に戻り、拠点で待っていたクロエ達に土地は用意できたことを伝えた。
「そう言えば、クロムさんとエレナさんは獣人国と戦うとなった時、相手に知り合いとか居ると思いますけど大丈夫そうですか?」
「それが戦いだからな」
「ええ、相手が血の繋がった家族だろうと、私達の思いを踏みにじって連れて帰ろうとしてるという事は敵に変わりは無いわ。その時は、家族だろうと戦うわ」
クロムさん達は既に覚悟が決まっているのか、俺の言葉に対して真剣な表情でそう答えた。
「お父さん達、もう覚悟決まってるんだね……」
「そりゃな、話し合いで解決出来なかった以上はそうなると思っていたからな。獣人国が動いたって聞いた時にもう覚悟は決まってたよ」
「私もよ。獣人国の諦めの悪さは、私達が一番知っているものね」
当事者であるクロムさん達の言葉の説得力は高く、クロエは「私も覚悟決めなきゃ……」と呟いた。
「もしかしたら、戦いに発展しない可能性も少しだけあるとは思いますけどね」
「そうだな、その可能性に賭けたい気持ちはあるが……まあ、ほぼ戦う事になりそうだな」
クロムさんは、俺の言葉に対してそう言葉を返した。
その後、獣人国との問題が解決するまでの間、クロムさん達と俺達は拠点で一緒に過ごす事にした。
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