第499話 【獣人国の動き・1】
ハンゾウの店へとやってきた俺は、奥のハンゾウの所へと向かった。
「突然呼んで悪いな。ついさっき、報告が来て早くに伝えた方がいいと思って呼んだ」
「かなり大事な情報みたいだな、聞かせてくれ」
そう言って俺は、ハンゾウから獣人国の新たな動きについて話を聞いた。
少し前に獣人国へと帰国した獣人国の者達だが、また新たにこちらの大陸に来よう準備をしているらしい。
その中には獣人国の偉い者達も目撃したと、ハンゾウは部下から報告が来たと言った。
「獣人国は戦争でもするつもりか?」
「いや、そんな感じでは無いみたいだぞ。今度はちゃんと偉い立場の人間が来て、もう一度話をしようとしていると俺の部下は言っていた。ただそれが本当かどうかまでは分からないが」
「もう一度話って、クロムさんの言っていた通り諦めてなかったのか……」
「俺の部下も言っていたが、一度断れて諦めるような人達じゃないって言ってたな」
クロムさんの予想が的中した事で俺はより警戒を持とうと、心に決めてハンゾウとの話し合いを続けた。
「それじゃ、ハンゾウ。引き続き、獣人国の動きで何か分かったら報告を頼むぞ」
「そっちも頑張れよ」
そうしてハンゾウとの話し合いを終えた俺は宿へと帰宅して、少し遅い夕食を食べ、シャワーを浴びてその日は寝た。
翌日、皆と朝食を食べた後に昨夜、ハンゾウの所で聞いた話を伝えた。
「やっぱり諦めてなかったんだね。クロムさんの予想が的中したんだ」
「そういう事になる。ただまだ向こうも準備してる段階らしく、明日明後日くることはないみたいだ。だから俺達もそれまでに出来る事をやろうと思う」
「でも出来る事って言っても、クロムさんの力を取り戻す以外にする事って何かあるの?」
俺達の最大の目的だったクロムさんの力を戻すというのは、もう殆ど終わっておりレイはそれ以外にする事はあるのか聞いて来た。
「そうだな。薬関係もレンとイリスのおかげで心配も無いから、やる事と言えば俺達の力をもっと上げるって事位だな」
「という事は、迷宮に戻るの?」
俺の言葉に対し、レイは嬉しそうな顔をして反応をした。
「そのつもりだけど、今回は今までみたいに全員で迷宮には行かない。というのも、いつ獣人国が来るか分からないから王都に残って情報を常に新しいのを持ってないといけない」
「それじゃあ、順番に残るの?」
「いや、今回は俺が残ろうと思う。ハンゾウとやり取りできるのも俺だけだからな」
そう言うと、レイは「えっ、ジン君来ないの!?」と驚き、イリスとクロエも驚いていた。
ただレンは分かっていた様で「まあ、残るとしたらジンだろうな」と納得していた。
「それにレイは俺のレベルを抜かしたいって言ってただろ?」
「それはそうだけど……ジン君と離れて行動するのは、なんか違う気がするよ」
「それは私も思う。ずっと一緒だったのに離れると寂しいよね」
「私もジンお兄さまが居ないのは寂しいです」
レイ達から俺が残る事に対してそう言われ、俺は少しだけ嬉しさを感じた。
「そう言って貰えるのは、仲間として凄く嬉しいよ。でも、今回は別々で動くのが最善だと俺は思ってる。獣人国の動き気にして、なにもしないのは違うからな」
そう俺が言うがクロエ達は納得する様子は無く、少し説得に時間が掛ってしまった。
「ジン。お疲れ」
「ああ、レンも説得に協力してくれてありがとな」
クロエ達の説得は俺一人の力では難しく、レンにも協力してもらいクロエ達の説得に成功した。
「まあ、王都の事はジンに任せるよ。だけど何かあったら直ぐに俺達に報告するんだぞ?」
「分かってるよ。そこまで一人で解決しようなんて思って無いから」
分かってるよな? という感じで言ってたレンに対し、俺はそう言葉を返した。
「レンも皆の事を頼むよ。多分、俺が居ない分頑張ろうとして無茶するかもだから」
「分かってる。クロエ達の事だから、無駄に張り切ってしまいそうだから、そこはちゃんと見ておくよ」
俺の言葉にレンはそう言うと、互いに頑張ろうなと言ってレンは部屋から出て行った。
その後、準備を終えたクロエ達を迷宮へと送り届け、俺はハンゾウの所で聞いた話を姫様にも報告しようと王城へと向かった。
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