第497話 【元英雄との訓練・3】
「それでクロムさん、休憩はどうしますか?」
レイと戦った後、クロムさんに休憩は必要か聞いたが休憩は要らないとその時は答えていた。
しかし、クロエとの戦いで大分消耗してるし今回は休憩が必要かと思いそう声を掛けた。
「いや、そのまま行こう。体が温まった状態でジンとは戦いたいと思っていたからな、今の俺が体力が限界だろうと思って油断だけはするんじゃないぞ?」
「分かってますよ。クロエ達の戦いを見て、クロムさん相手に油断はするつもりは無いです」
クロムさんはこのまま続けると言われた俺は、それから準備運動を行った。
「ジン君は確か、魔法と刀を使った戦い方だったよね?」
「そうですね。でも、今回は剣士のクロムさんに俺の技術がどこまで通用するか試したいので、魔法は無しで戦うつもりです。ハンデとかではなく、純粋に試したいからいいですか?」
「良いよ。俺もジン君の刀の腕がどこまで高いのか、前から気になってたからね」
クロムさんからそう許可を取った俺は、刀を抜いて構えた。
そして試合開始の合図をレンに出してもらうと、クロムさんはいきなり速攻を仕掛けて来た。
「なッ!?」
レイ、クロエと同じ戦法で来ていたからまた同じかと寸前まで思っていた。
しかし、クロムさんは俺に近づいた瞬間、目の前から姿を消して俺に足払いを仕掛けて来た。
その動作が一瞬で俺はその足払いを避ける事が出来なかったが、倒れる寸前に片手で地面に手をつき。
反動を活かして、クロムさんとの距離を取った。
「足癖が悪いなんて情報。聞いてませんよ……」
「思い付きだよ。ジンの強さは俺もクロエから沢山聞いて、知っているからな」
ニヤッと笑みを浮かべるクロムさんに、俺はやられたなと反省した。
そして俺はもう一度、刀を構えて今度は俺からクロムさんに攻撃を仕掛けた。
「良い攻撃だな。力も乗ってるし、なにより早いな」
クロムさんはそんな俺の攻撃を簡単に受け止め。
俺を弾き飛ばして、今度はクロムさんから攻撃を仕掛けられた。
刀を活かし、クロムさんの攻撃を回避する俺だが、クロムさんの攻撃の手数は凄まじく。
俺は一瞬の隙を見て、クロムさんと距離を取った。
「逃がさないよッ」
「ッ!」
しかし、俺が距離を取ろうとするとクロムさんは一瞬で間合いを詰めて来た。
「ジンのその一旦距離をとる癖。俺でも知ってるから、治した方が良いぞ。俺みたいな速い動きをする奴だと、こうやって間合いを詰められるからな」
「クロムさん、もしかして数日時間空けたのって俺の戦い方を調べてたとかじゃないですよね?」
「ふふっ、実はそれもしてたよ。現英雄であるジン君とどこまで戦えるか試したかったからね」
クロムさんは態々数日時間空けたのは、俺の情報も集める為だったとその時に知った。
「俺はこれでも負けず嫌いだからジンにも勝ちたいと思って、情報を集めていたんだよ。まあ、ジンは有名だから情報は簡単に集まったから、後は対策の為に色々と作戦を練っていたんだ」
「クロムさんがそんな事をしてくるとは思いもしませんでしたよ。でもまあ、俺もクロムさんの戦い方は知ってるので、お互いさまではありますね」
そう言って俺は距離を取れば、危ないという事が分かったのでそれからは俺はクロムさんと近い距離で戦いを続けた。
互いに一歩も譲らない戦いが続き、俺とクロムさんの戦いは試合の制限時間である一時間まで続いた。
試合結果は、決着がつかなかったので引き分けとなった。
「流石、クロムさんですね。衰えたと言ってましたけど、全然そんな事無いじゃないですか」
「いや、これでも力は落ちてる方なんだよ。昔はもっと勘も鋭かったんだ。十数年、王都で隠れ住んでたせいでかなりそういった面での力が衰えてるから、何とかして全盛期に近い状態に戻す事が今後の課題だな」
「今でもかなりヤバいとは思いますけどね」
そう俺は一人反省をしているクロムさんの言葉に、呆れた表情をしつつそう言った。
その後、イリスとレンは最初からクロムさんと戦う気は無かったので、一通り全員との戦いが終わったので、休憩という事になった。
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