第496話 【元英雄との訓練・2】
クロムさんはその魔法が当たるギリギリの所で、驚異の反射神経を見せ、クロエが放った魔法を全て回避した。
そんなクロムさんに俺達は驚いていると、クロエは避けられると分かっていたのか追撃用の魔法を既に放っていた。
「流石、この中で一番クロムさんの事を分かってるな。あの魔法は流石に当たったと思ったのに、クロエは外れた事に動揺もしてないみたいだな」
「あんな至近距離でも避けれるクロムさんの反射神経ヤバすぎるだろ……」
俺達はクロムさんの動きに驚いているが、クロエは全く動揺していない。
それが当然かの様に、次々と攻撃手のを緩めなかった。
「ジンお兄さま、クロエお姉さまの動きが前と少し違う気がするんですけど……」
「イリスも気づいたか? クロエも大会を経て色々と考えてたみたいで、新しい戦い方を編み出したみたいだ」
クロエは持ち前の反射神経や勘の鋭さ、そして俺達パーティーで最も目が良い等と身体能力がそもそも高い。
そんなクロエは今まで前衛から後衛、そして現在は中衛を任されている。
前衛の時は短剣を使っていたが、後衛、中衛に下がってからは魔法の方が多くなり、身体もそこまで動かさない攻撃方法をとっていた。
しかし、レイとの連携を経験したクロエは、レイの動きを取り入れて新たな戦い方を編み出した。
「クロエお姉さまも色々と工夫してるんですね。今も十分強いのに……」
「まあ、俺達の場合は趣味の一つになってる所があるからな。そもそも
、レベル100もあれば冒険者として食うに困る事は無いからな。イリスだって、もうレベル上げの楽しさや自分が強くなる快感を忘れられないだろ?」
「……そうですね。昔、まだ村で普通に暮らしてた時は生きる事しか目標がありませんでしたが。今は、自分が強くなっていくので楽しいです」
イリスは俺の言葉を聞くとそう言って、クロエとクロムさんの戦いの観戦を続けた。
レイとクロムさんの戦い以上に、クロエはクロムさんといい勝負を繰り広げている。
親子であるからか、互いの攻撃を読み避けるという動きが本当に紙一重で見ていて楽しい試合だ。
「クロエちゃん凄いな~。私は手も足も出なかったのに」
「レイは速さって言うより、攻撃力重視だからな。クロムさんとの相性が悪かったんだろう」
「それはそうかも、あんなに速い人と戦ったのはじめてで悔しさを感じるよりも、もう一度戦いたいって気持ちが勝ったもん」
それからクロエとクロムさんの戦いは続き、互いに攻撃を一撃も許す事無く10分が経過した。
魔法を使うクロエは体力と魔力を同時に消耗してる分、クロムさんよりも疲労が蓄積されている。
一方でクロムさんは疲れてないかと言えば、レイの時以上にクロエに追い詰められているようでかなり疲れているようだ。
「意外と接戦だな」
「レイの場合は相性が悪かったけど、クロエの場合は新しい戦法はクロムさんとの戦いに置いて相性が良いみたいだな」
近距離、遠距離両方から魔法を放つクロエにクロムさんも攻めきれないでいる。
しかし、良い試合が続いていたが、試合は突然終わりを迎えた。
クロエの魔力が限界が来て、意識が朦朧として倒れそうになった。
倒れる寸前、それまで戦っていたクロムさんは一瞬でクロエに駆け寄り、地面に倒れる前に抱きかかえた。
「クロエ。無茶しすぎだぞ? これは訓練なんだから」
「だって、お父さんを追い詰められたの今回が初めてだったんだもん……」
クロエは普段は見せないいじけた様子でそう言うと、レイに肩を貸してもらい休憩場所に移動した。
そしてレンから回復薬を貰い、そのまま少しだけ横になる事にした。
「クロエは強かったですか?」
「ああ、知らない間に本当に強くなっていたよ。俺があそこまでクロエに追い詰められたのは、クロエも言っていたが今回が初めてだ」
そうクロムさんは、嬉しそうな表情をして言った。
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