第49話 【報告会・2】
翌日、予定通り俺とクロエはギルドへと朝からやって来ていた。
久しぶりの冒険者ギルドに、何となく帰ってきた感を感じつつ俺達はフィーネさん達に連れられて相談室へと移動した。
「ジンさん、クロエさん、どうですかお仕事の方は順調でしょうか?」
「はい、特に問題無く出来ています」
フィーネさんの言葉に俺はそう返し、現状の報告を行った。
王家が協力的で変装や偽名の手配、その他の事も色々としてくれている事についても報告をした。
「流石、王家ですね。普通の護衛では、そこまでの事はしてくれません」
「色々良くして貰ってるなというのは感じてます。最初は嫌でしたが、受けて正解だったと今は思ってます。クロエはどうだ?」
「衣食住ついてて、訓練の時間もあって意外と楽しく仕事も出来てて私も受けて良かったと思うよ」
そう俺とクロエが言うと、フィーネさんは「それは良かったです」と笑みを浮かべてそう言った。
それから少し近況報告をしていると、資料の準備をしていたリコラさんが部屋に入って来た。
「ジンさん、クロエさん。お久しぶりです」
そうリコラさんから挨拶をされた俺達は、挨拶を返しリコラさんが持って来た資料に目を通した。
そこにはここ最近の冒険者の情報等が書かれていて、数日前までは俺とクロエの話題が多かったことがその資料が分かった。
「一週間、ジンさん達は姿をほぼ消していたのでその間に大分収まりましたけど、まだ一部では話題にされてます」
「……やっぱり、ダンジョンの記録更新が話題的に大きかった感じですかね?」
「そうですね。それと、昇格速度に関しても噂の種になっていました。クロエさんはまだ半年という期間があったのでそこまでですけど、ジンさんはたった一月ですからね」
クロエと俺は、また違った噂の広がり方をしているとフィーネさん達は教えてくれた。
クロエは半年の冒険者で活動をしているから、まあそこそこ優秀な冒険者だろうという噂の広まり方をしている。
しかし俺の場合、たった一月という期間しかなく、ヤバい奴という認識で噂が回っているらしい。
「一部ではクロエさんの力で上がったと言う者もいますが、そこに関しては銅級以上の冒険者が、それで上がれる訳がないだろと反論して喧嘩が起きたりしてました」
「普通の銅級冒険者は、そこそこの苦難を乗り越えて上がった人達ですからね。そこを侮辱されるのが許せなかったんでしょうね」
「そうですね。さらに上の銀級冒険者さん達も文句を言う銅級以下の冒険者達に、それだから昇格しないんだよと言って大騒ぎになってました」
あの時は色々と酷かったですとフィーネさんは、俺達が居ない間に起きた事件の事を疲れた顔をしてそう教えてくれた。
「ねえ、ジン君。もう大分、噂が収まってるならお仕事がお休みの日は、ダンジョンに行くとかもいいんじゃないかな? 偶に外に出ないと、姫様に話す冒険話も底が尽きそうだし」
「話の種も無くなって来たし、もう少し噂が落ち着いたらダンジョンに行くのもいいかもな」
「それでしたら、少し出る魔物が強くなってるダンジョンに行くのはどうでしょうか? ジンさん達ならそこでも普通に戦えると思いますし、既に一つ目に紹介したダンジョンは攻略してますから」
確かにその案は良いかもな、一度攻略した所を何度も攻略する冒険者はいるが俺達が攻略した所は人気のある場所だ。
そこを避けて少し難易度は上がるが、人が少ない場所の方が俺達にとっては都合がいい。
「仕事が終わるのが夕方なので、最大二泊三日で帰ってこれる場所を探しておいてもらえますか?」
「分かりました。難易度は以前より少し上がる程度に収めようと思いますが、それで大丈夫でしょうか?」
「「はい」」
フィーネさんの確認に対し、俺とクロエはそう返事をした。
それからそれぞれの報告を終え、少しだけ雑談をする事になった。
「先日、王城から使いの方が来ましてジンさん達の仕事ぶりについて報告を聞いたのですが、ジンさんあの剣聖に師事をされているんですか?」
「あ~、ただ剣士としてアドバイスを貰ってるだけです。俺も師匠とか要らないですし、ユリウスさんも弟子扱いはしないと仰っていたので」
「そうなんですか? 兵士の間では、あの剣聖が人に教えていると驚いてる者が多いと言ってましたけど」
それについて俺は一応、誤解を解こうと兵士達に言ったのだが。
普通にその日にユリウスに剣について色々と話を聞いたりしていたせいか、俺が弟子と言う事を隠そうとしてるという風になっている。
フィーネさんにそう言うと、「ジンさんって噂にされやすいですね」と言われてしまった。
「ジン君って話題性に尽きないから、噂にしやすいんだと思う」
「……それについては自分でも自覚してる。一応は、色々と気にして動いてるんだけど」
「最近だと、騎士団団長のアンドルさんとも仲がいいよね? メイドさんが言ってたよ。剣聖様と守護神様が同じ子を育ててるって」
「それは本当に何故か気に入られたんだよ」
ユリウスに関しては自分の課題を見てくれるしと思って、最後は俺から近づいた。
だがアンドルに関しては、何故か向こうから俺の事を気に入ったみたいでよく訓練に付き合わされている。
そのせいか最近は、攻撃よりも防御の訓練ばかりしていてそっちの方が得意になりつつある。
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