第487話 【獣人国との話し合い・1】
レンから魔法玉の派生作品を見せてもらった翌日、姫様から呼び出しをされて王城へと俺は来ている。
「姫様、何か獣人国に関する事で何かあったんですか?」
「実は捜査に出ていた獣人国側が、何人かこっちに戻って来てね。その時にジンの魔力を王都内で感じたから、話をしたいって向こうがお願いしてきたのよ。それで、一応ジンを読んでどうするか決めようかなって」
「そうだったんですか、多分俺がハンゾウの店に寄った時ですね。獣人国の魔力探知能力を舐めてました」
自分の魔力が探知されない様に気を付けてはいたが、獣人国の探知能力が俺の予想を超えていた。
いやでも、クロエの探知能力を普段から見てるんだから、もっと気を付けておくべきだったな……。
そう俺は軽く反省をして、獣人国との話し合いについてどうするか考えた。
「ここで断ると、話がややこしくなりそうですから、その話し合い受ける事にします。向こうの考えも聞いてみないと分かりませんからね」
「分かったわ。ジンが了承したら、明日のお昼に話をしたいって言ってたんだけどその時間は大丈夫かしら?」
「問題ないですよ。場所は、城ですか?」
「ええ、念の為に私も同席しようと思ってるわ」
姫様はそう言うと、今回話し合いの相手となる獣人国の人物について軽く教えてくれた。
相手は二人居て、男女のペア。
二人共王族の関係者で血縁的には、クロムさん側ではなくエレナさん側みたいだ。
姫様が感じた印象は落ち着いていて、話しやすいみたいだ。
「姫様に対してはそうかも知れませんが、俺に対してはどういう接し方をしてくるかですね。姫様は、一国の王女ですけど俺はただの冒険者ですからね」
「……ジンは自分の事を〝ただの冒険者〟なんて言うの、もうそろそろやめて方がいいんじゃないの? 本当に〝ただの冒険者〟の人達が可哀想よ」
俺の言葉に対して、姫様は呆れた表情を浮かべながらそう言ってきた。
「別に貴族でも何でもないんですから、ただの冒険者に変わりは無いですよ? ただちょっと、活躍してるだけです」
「……まあ、いいわ。それじゃ、今日呼び出しの本題は終わったのだけど、実はもう一件ジンを呼んだ理由があるの」
「もう一つですか?」
そう聞き返すと、姫様は扉に向かって「入って来て良いわよ」と言うと、部屋の外からアンドルさんとユリウスが入って来た。
「ジン。久しぶりだな」
「アンドルさん、お久しぶりです。ユリウスさんと一緒に来るって、珍しいですね?」
「ああ、ちょっとジンと話したい事があってな姫様にジンと話す時間を作ってもらったんだ」
アンドルさんはそう言うと、手に持っていた資料をテーブルの上に置いた。
見た感じ、かなり重要そうな資料だ。
「資料の中身が気になるようだな、この資料の中には兵士全員の名簿が書かれているんだ」
「兵士全員が? でも、何でそんな物をここにもって来たんですか?」
「……実はな、この間の竜人国で行われた大会に兵士の奴等が参加していたんだ」
アンドルさんは言い難そうに話し始めると、そのまま続きを話した。
なんでも前回の大会に国の兵士、それも上位の者達が出たが誰一人として目立った活躍をしなかったらしい。
アンドルさんやユリウスさんは、姫様の護衛があるから出れなかったらしいが、その中には次期団長候補の者達も居たと言われた。
「マジですか? 目立った活躍した兵士とか居なかったですよね?」
「……ジンって偶にそうやって、本当の事を平気な顔をして言ってくるわよね」
溜息交じりに姫様がそう言うと、アンドルさん達は顔を下に向けて悲しそうにしていた。
「俺やユリウス、それにリオンも現役でいるから今は良いんだが、次世代の事を偶に考えるんだが……」
「正直、団を率いていけそうな人が居ないんだ」
「まあ、でもまだユリウスさん達が現役でいるなら問題はないんじゃないですか? その間に育成すれば、十分間に合うと思いますよ?」
そう言うと、アンドルさんは「その件でジンに話を持ってきたんだ」と真顔で言われた。
「この資料を持ってきたのも、ジンに見込みのある奴を見比べて欲しいんだ。勿論、ジン達が育ててくれた団員達の事も載ってる」
「……俺が何でこんな事を?」
「ジンの弟子を見て、ジン達が本気を出せばあれ程強い人物が出来上がるって話が出てな、別にジンに育成しろとまでは言わないから、見込みのある奴だけでもと思ってな」
イリスはこの間の大会に出場していて、アンドルさん達はその時にイリスの強さを目にしたのだろう。
確かに元々は、村娘のイリスがあそこまで成長したら、俺達に任せたら凄く成長すると思うのは分かる。
「……どうせ、断っても何度も言われそうですから、今回だけですよ? 言っておきますけど、別に人を選ぶセンスがあった訳では無いですよ? 本人の頑張りが一番だという事は、先に言っておきます」
俺はそう前もって言って、アンドルさん達が持ってきた資料を手に取り、兵士達の情報確認を始めた。
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