第484話 【獣人国の対応・1】
いつもの部屋に転移した俺達は、まずは先に城の中の魔力探知を行い。
獣人国の者達が居ないか確認をして、姫様の部屋に向かった。
「ジン。貴方達には国を出る様に手紙を出したつもりだけど、何でまだいるの?」
「一応、クロムさん達は安全な師匠の所に預けて来たので情報を貰いに来たんです。ちなみに自分達の魔力がバレない様に、ちゃんと魔法で隠してますから安心してください」
「まあ、貴方達ならそこら辺は完璧にしてるとは思うけど、万が一があるかも知れないのよ?」
姫様は少し怒り気味にそう言うと、溜息を吐いて現状の説明をしてくれた。
まず獣人国側だが、既にクロムさん達がこの国で暮らしていた事は把握しているらしく、デュルド王国に捜査の協力を頼んできたみたいだ。
しかし、獣人国の目的をある程度察した姫様は先に獣人国の動きを読んでクロムさん達を逃がし。
獣人国もクロムさん達が王都から消えた事に気付いて、この周辺国の捜査に向かったと姫様は話してくれた。
「姫様もよく獣人国相手に騙そうなんて思いましたね」
「ジン達を失うのと、獣人国と敵対する道。どっちを選んだ方が良いかって言われたら、獣人国と敵対した方が国としては被害は抑えられるもの。貴方達を失う道を選ぶ程、この国は馬鹿じゃないわ」
「俺達の事そんなに高く見てるんですか?」
「高く見てるなんて次元じゃないわよ。お父様からはどの国の王族より、ジン達の事を優先しろって言われてるのよ」
マジか……想像してたよりも、大切に扱われるみたいだ。
「そう言えば、クロエの姿が無いけど。クロエも空島に置いて来たの?」
「はい。クロムさん達曰く、クロエの事は分からないと思うけど魔力で勘づかれるかも知れないからという事で、動きを決めるまで空島で隠れて貰う事にしました」
「まあ、その方が安心と言えば安心ね……流石の獣人国でも、空島までは追えないでしょうね」
「行けたとしても、最強の門番の師匠が居ますからね」
いくら獣人国が強いと言っても、魔女である師匠に加えナシャリー様も居る。
そんな中、クロムさん達を連れていけるなんて不可能だろう。
その後、獣人国も一通り調査を終えたら、この国に戻ってくるだろうから、その時の対応について話し合いを始めた。
「まあ、向こうが無理矢理連れて行くという姿勢でないのであれば、クロムさんと獣人国とで話し合いの場を設けたいところですが……姫様から見た感じ、どういう印象を抱きましたか?」
「そうね。無理矢理にでも連れて行くという感じは、私の感覚としては少し感じたわね。クロエの父親は向こうでは、相当有名人らしいわね」
「そうですね。俺達もついさっき、詳しく聞きましたけど今の獣人国の王家の血筋らしいですからね」
そう言うと、姫様は「私も聞いた時は、驚いたわ」と言った。
「まさか、クロエが私と同じ王族とはね。今度から、どう接しようかしら?」
「今まで通りで良いと思いますよ。本人も、自分が王族って認め切れてないと思うので、それに姫様からの対応が変わったらクロエは悲しむと思いますよ」
「あら、それならやめておいた方がいいわね」
姫様は口ではそう言ってるが、表情は少し笑みを浮かべていた。
「それでジン。どうするんだ? 獣人国が戻ってくるまでは、俺達は何もしないのか?」
「いや、折角姫様が時間稼ぎをしてくれたなら、その時間を使ってこっちも色々と準備をしようと思う」
俺はレンの言葉に対して、そう言って各自の役割を伝え始めた。
まず初めに姫様には引き続き、獣人国の対応をしてもらい。
獣人国が戻ってきた際は、直ぐに連絡をして欲しいと頼んだ。
「分かったわ。獣人国の動きは、私の部下を使って見張っておくわ」
「お願いします。それでレンはイリスには、今後もしも戦いに発展した際の為に薬の調合をしてほしい。拠点で悪魔達も使って、出来るだけ効果の良い薬を量産しておいてくれ」
続いてレンとイリスには、薬の量産を頼んだ。
正直、現状は戦う事は想定してないが、クロムさん達の話を聞く限り獣人国は強さを重視してる。
そんな獣人国と話し合いが出来たとしても、殺し合いじゃない勝負形式の戦いには発展するかもしれない。
「今も在庫は大量にあるが、それでもまだ必要なのか?」
「念の為にな、それに交渉材料として薬を使えるかもしれないから頼む」
「まあ、ジンがそう言うなら」
レンは俺の言葉に納得してくれた。
「最後にレイだが……」
「……分かってる。私は戦う事がパーティーの役割だから、準備段階ではする事が無いんでしょ?」
俺の考えを察してレイはそう言うと、笑みを浮かべて「それなら戦いに備えて、私は訓練しておくね!」と元気よく言った。
最後に俺の役割は情報収集を主に行うのと、獣人国の者達への警戒という事でそれぞれの役割は決まった。
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