第483話 【悪魔の子・3】
「ジン君、どうするの? 王族ってなると、話がややこしくなりそうだけど?」
「……一旦、獣人国の出方を見るのが良いだろうな。多分、クロムさん目当てで来てるなら、クロエもその対象に入ってるだろうから、クロエも暫くは師匠の所で暮らして、俺達はその間に情報収集だな」
事情を色々と聞き、クロエも暫くは動かさない方が良いだろう。
そう俺が決めると、横に寝ていたクロエから「えっ、私もお留守番なの!?」と驚いた声を上げた。
「安全を考えると、そうした方がいいと俺は思ってる。クロムさん達はどう思いますか?」
「……獣人国の獣人は特に鼻が鋭いから、クロエが俺の娘って事は気付くだろうから暫くは俺達と隠れていた方が良いと俺も思う」
「私も同意見ね。クロエの事は、向こうの人達はあまり分からないと思うけど、それでも匂いとか魔力で勘づかれる可能性が高いわ」
両親からそう言われたクロエは、シュンッと落ち込んだ。
「クロエちゃん、こればっかりは仕方ないよ。大丈夫、直ぐにジン君がどうにかしてくれるよ!」
「そうそう。ジンなら直ぐにこんな問題も解決して、また一緒に冒険に出られるから」
「そうですよ! ジンお兄さまなら直ぐに解決してくれます! だから、少しだけ待っていてください!」
レイ、レン、イリスの順にクロエを元気づける為、そう言うとクロエは俺の方を見て「本当に?」という風な視線を向けて来た。
「頑張ってはみるよ。ただ今回は相手も大きな相手だし、慎重に動く予定だからあまり早く終われると期待はしないでくれ……」
正直な気持ちでそう言うと、クロエは頷き「頑張って」と応援の言葉を呟き、話し合いは終わりにした。
その後、クロエをクロムさん達は家の方におんぶして連れて行き、師匠の家には俺達と師匠が残った。
そしてそのタイミングで外からファムが戻って来て、さっき居なかったレイ達に挨拶をした。
「この子がもしかして、ジン君が言ってた悪魔に似た子?」
「ああ、ファムって名前で生まれる時に、親に悪魔が憑いてて悪魔の魔力が影響して、こんな姿をしてるみたいだ」
ファムの事をそう紹介すると、レイはパッと笑顔をファムに見せ「よろしくね。ファム君」と挨拶をすると、レンとイリスも挨拶をした。
「師匠。さっきは聞きそびれましたけど、ファムはこのまま空島で一緒に暮らすんですか?」
「それなんだけど……子供を育てるなんて、私もナシャリーもした事が無いから難しいのよね」
まあ、魔女である師匠達には向いて無さそうだ。
「かといって俺達が見るとなっても、変身魔道具を常時付けてもらわないと騒ぎになりそうですし……ファムはどうしたい?」
「その、街で暮らすのは……怖いです」
顔を下に向け体を震わせながら、ファムは自分の気持ちを正直に話しくれた。
今まで自分を追いかけまわしてきた相手がいるかも知れない街で、安心して暮らすなんてファムには難しいか……。
「そうなると、ここでクロエ達に暫く面倒を見てもらうが今は良いんですかね」
「そうね。暫くはクロエちゃん達が居るし、あの一家に面倒を見てもらうのが良さそうかしら……でも、その後の事も考えないといけないわね」
師匠の言葉に俺は、何処かいい場所は無いか考えていると、部屋の中にあった植物が目に入り、ある場所の事を思い出した。
「ファムは人間が苦手なだけで、魔物や魔人に対しては怖いとかは無いか?」
「人間よりも魔物の方が、まだマシだと思います」
「そうか、なら良い場所がある。師匠、ファムを商人の里に連れて行くというのはどうですか? あそこなら、ファムみたいな子供も受け入れてくれると思いますけど」
「……一応、聞いてみるのはアリね」
師匠も空島で自分達が見るよりも、まだ子供の面倒を見れそうな商人の里の方がいいと思ったのか。
俺の提案に頷くと、ファムに商人の里がどんな所かを説明をして、師匠の転移魔法で商人の里に移動した。
そうして商人の里へとやってきた俺達は、エミリアさんの家に向かった。
「あら、珍しいお客さんね」
「お久しぶりです。エミリアさん」
家を訪ねると、エミリアさんが出迎えてくれて俺達は家の中に通された。
そして俺はエミリアさんに経緯を説明して、ファムを里に受け入れてもらえないか尋ねた。
「子供ね。それも悪魔の力を多少引き継いでる……別にいいんじゃない? セシリアも良いでしょ?」
「はい。別に構いませんよ」
エミリアさん達は俺達の頼みに対して、すんなりと受け入れてくれた。
「ファムも良いか? ここなら、安心して暮らせると思うぞ」
「はい。ここなら人間も少ないですし、何より住んでた森に雰囲気が似てるので暮らしやすそうです。その、色々と考えてくださり、ありがとうございます」
ファムは人間と生活してた期間は少ないにも関わらず、そう礼儀正しくお礼を言って俺達に頭を下げた。
その後、ファムを連れて来た手前、これで後はよろしくとは言えないので、偶に様子を見に来るとエミリアさん達に言い。
師匠は空島へと帰り、俺達は王都の様子を聞く為、姫様の所へと向かう事にした。
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