第482話 【悪魔の子・2】
その後、家を見て来たクロムさん達が戻って来て、ファムの話は一旦終わりにして、今後についての話し合いを始めた。
「正直、クロムさんが王になりたくないという意思が強いのであれば、その意思を伝えに獣人国に一度出向く必要はありそうですね」
「伝えただけで、納得してくれそうにはないと思うけどな……こんだけ年数が経ってるのに追いかけてくるという事は、今も俺に王になれと思ってる奴等が多いんだと思う」
「……クロムさん、そのクロムさんを王にしたい人って、出て行く前はどの程度居たんですか?」
獣人国は大きな大陸で一つの国だし、そこまではいないだろう。
俺は数を聞く前までは、そう考えていた。
「大体、国の8割近くは俺を指示していたな……強さこそ、王に相応しいって考えの思想が強い所だから」
「は、8割ですか……想像以上ですね」
「クロエちゃんのお父さんって、かなり凄い人だったんだ……」
「そんな凄くはないぞ? ちょっと、戦争で目立っただけだよ」
レイの言葉に謙遜するクロムさんだが。
そんなクロムさんを見つめながら、エレナさんは獣人国時代のクロムさんの事を話し始めた。
「目立っただけって、戦争の前から目立つ存在だったじゃない。そもそも、王の候補に上がるのも生まれが良いからって、何で話を聞いてくれてるジン君達に話さないの?」
「ちょっ、エレナ!?」
「……えっ? 生まれが良いからって、どういう事?」
クロエはエレナさんの言葉に、自分の知らない事があると察して驚いた顔をしてそう尋ねた。
まあ、薄々クロムさんが生まれが良い事は薄々気付いてはいたから、俺はそこまで驚きはしない。
「クロエは知らないと思うけど、お父さんは元々ある一つの集団の長の子だったのよ。こっちの国で例えると、一国の王子という事になるわ。それだから、お父さんを王にしようと躍起になってる人が沢山いるのよ」
「お父さんって、王族だったのよ!?」
「違うぞ!? エレナのたとえが悪いんだ。良くて、領地持ちの貴族って感じだ」
クロエの反応に対して、クロムさんは慌ててそう訂正を入れた。
「成程、クロムさんはそんな部族の長の子として戦争で活躍してしまって、部族とそれ以外の者達から王になってくれと言われ続けていたって感じですか?」
「そういう事になる。逃げる際に無理矢理、親父に丸投げして来たから多分今は親父が王になってると思うが……」
「一番、王にしようとしてたのがそのお父さんだったから、今まで探し続けられていたんでしょうね」
エレナさんの言葉に項垂れるクロムさんと、その横ではクロエが情報の処理が追い付かず固まっていた。
「クロエちゃんが王族って、なんだか突然過ぎて混乱しちゃうね……」
「流石にな……」
「クロエお姉さまが王族……敬語とか使った方がいいんですかね?」
レイ達がそう言うと、固まっていたクロエは「今まで通りで良いよッ! というか私、王族じゃないから!」と叫んだ。
その声に対して、クロムさんも「そ、そうだ! 俺も王族じゃないぞ!」と謎の宣言をした。
「取り合えず、クロムさん達の事情は分かりました。エレナさんも大事な情報を言ってくださり、ありがとうございます」
「本当は、もっと早くに伝えておくべきだったんだけどね。この人が、娘にも黙ってろって煩くて伝えられなかったの」
エレナさんはクロムさんの肩を突きながら、そう言うとクロムさんは申し訳なさそうな顔をしていた。
「それにしても王族だと、また難しい話になりましたね」
「そうなのよね。そそれにもっと難しい話をすると、私の両親も今の獣人国では偉い立場だから、話でどうこう決まるかも怪しいのよね」
「えっ、お母さんもなの!?」
「私は別に王族とかではないわよ? ただちょっと、戦争時にクロムの部族と協力していて、それでちょっと偉い立場の役職に居るのよ」
エレナさんの言葉にクロエは再び驚いた顔をして、気を失いそうになりフラッと立ち眩みをした。
行き成り両親が王族と偉い立場の人間と聞いたら、元々平民と思っていたクロエからしたら情報過多で処理が出来ないのも分かる。
その後、立ち眩みをしたクロエをソファーに寝かせて、話し合いの続きをした。
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