表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
478/583

第478話 【望まぬ来訪者・2】


「でも、私の理想してる体を持つ人は今まで居なかったのよ。これまで色んな国を旅して、色んな人と出会ったけど理想に近い人は居ても、理想そのものの肉体を持つ人は居なかったの」


 そこでヨルドは区切ると、カシムに向けて真剣な顔で見つめた。


「でも今日、私は私が理想とする肉体を持つ人と出会えたの、貴方の肉体は私が理想してる体なのよ!」


「ヒィィッ!」


 話しを続けていたヨルドは段々と熱くなってきて、カシムに対して熱く語りかけた。

 そんなヨルドの言葉に対して、既に恐怖の対象と見ているカシムは悲鳴を上げて椅子から転げ落ちた。

 う~ん……まあ、カシムの驚く気持ちは分かるけど、これはカシムにとっては良い事では無いだろうか?


「……というと、ヨルドはカシムに自分の格闘術を教え込みたいって事か?」


「ええ、そうなるわね。ここまで理想的な体を持つ子とは、もう出会えないと思うわ」


「ふむ……カシム。お前はどうだ? 大会を見てたなら、ヨルドの強さは見て知ってるだろ?」


「そ、そうですね。確かに戦い方に関して言えば、俺も学ぶところは多いなと戦いを見てて思ってたんですが……その実際に教えられるとなると、ちょっと身の危険を感じると言うか……」


 カシムは完全にヨルドに怯え、最後の方は小声でそう言った。

 まあ、初見であんな対応をされたら誰だって怖がるのは当たり前だな。


「だけど正直な所、俺に教わるよりもヨルドに教わった方が良いのは確実だぞ? 体術に関して言えば、俺の知ってる中ではヨルドがトップだかな」


「あら、ジン君にそんな事言われるなんて嬉しいわ」


 俺の言葉を聞いたカシムは、相当悩んだ顔をした。


「カシムは強くなりたいんだろ? それなら、今回の話は乗った方が俺は良いと思うぞ?」


「……わかりました。ジンさんがそこまで言うなら、戦い方をヨルドさんに教えて貰います。よろしくお願いしますヨルドさん」


「ええ! よろしくねカシム君!」


 ヨルドは嬉しそうにカシムの手を握ると、カシムは「ヒッ」と情けない声を上げた。

 それからヨルドは、用事が終わったら声を掛けるからと言って宿を出て行き、カシムは俺の隣で後悔した顔をしている。


「ジンさん、俺の選択って本当に良かったですかね……」


「実際に戦ってみて、俺はヨルドが悪い奴だとは思わなかったから、大丈夫だとは思うぞ? まあ、本当に嫌な事をされたら俺に相談してくれたら対応してやるからな」


「はい。その時はお願いします」


 深々と頭を下げてカシムはそう言うと、溜息を吐いて立ち上がると自分の部屋で装備を変えて依頼に向かった。


「カシム君がヨルドさんの弟子になるんだね。私的にはいい組み合わせだと思うな、私達に体術を専門としてる人居なかったら丁度良かったよね」


「ああ、俺もカシムにどんな事を教えようかずっと悩んでたからな、ヨルドが教えるってなって俺的には助かったと思ってる。それにカシム本人の為でもあるからな、多少苦手意識ある相手だけど実力は本物だからな」


「というか、あのヨルドに教えて貰えるなんてあの男は幸運だと俺は思うぞ?」


「そうなんですか?」


 俺はルークさんの言葉にそう聞き返した。


「ジンもヨルドと戦って分かると思うが、実力は相当高い奴で体術を習いたい奴が大勢いるんだよ。だけどヨルドは自分の技術を教えるなら、最高の肉体を持つ相手と決めて、今まで誰一人として弟子に取った事が無いんだ。弟子になりたいって人を全員断ってて、ずっと自分の理想とする相手を探していたって話を聞いた事がある」


 俺が思っていた以上にヨルドは有名みたいだな、そんな相手に見定められたカシムはルークさんの言う通りかなり幸運なんだろう。

 その後、特に用事を入れてなかった俺達は一日宿でゆっくりと過ごした。

 そして翌日、朝食を食べ終わりいつからダンジョンに戻ろうか雑談していると、姫様の部下から手紙を渡された。

 俺はその手紙をその場で開けて、手紙の内容を確認した。


「もしかして、呼び出し?」


「……いや、なんか今すぐに王都から離れろみたいな事が書かれてた。それも、クロエの両親を連れて」


「えっ?」


 俺の言葉に話を聞いていたクロエは素っ頓狂な声で反応すると、宿の入口からクロエの両親であるクロムさんとエレナさんが入って来た。

 それもいつもとは違う格好で、姿を隠すフードを身にまとっていた。

 ただ事ではない雰囲気を察して、俺達は直ぐにクロムさん達を連れて俺の部屋へと移動した。

【作者からのお願い】

 作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら

 下記の評価・ブックマークをお願いします。

 作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 故郷から厄介事でもきた? 王位が空いちゃったとか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ