第470話 【強者達の戦い・2】
俺とヨルドの戦いは序盤とは違い、俺が優勢の状態で進んでいた。
魔法をほぼ封印されてる状態の俺は、普段とは少し違う戦い方を強いられているが大分その戦い方にも慣れて来ている。
「最初に比べて、動きが格段が上がってるわね。さっきのスキルは容易に使わせちゃ駄目だったわね。それにしても、そんなに強化されるのにあんな直ぐにできるものなの?」
「あのスキルは、流石の俺でも使用するのに時間が居るからな、お前と戦ってる間に完成させていたんだよ」
【開放】は全身に魔力を通わせる必要がある為、俺でも使用するのに数十秒時間が必要だ。
ヨルドの勘が鋭いのは知っていた俺は、なるべく気付かれないように数分かけて準備をしていた。
「本当に気付かなかったわ。気配の消し方も凄いのね……益々、気に入ったわ!」
俺との戦闘中にもヨルドは興奮度は増して行き、更に攻撃の力が高まっていった。
ヨルドの情報として本人の気分が乗ると、身体能力がそれに合わせて上がるという情報もあって、なるべくそうしないようにしていた。
しかし、俺の行動は全て無駄で、ヨルドは俺と戦うという事だけで興奮して、これに関して気にしても意味が無くなってしまっていた。
「ヨルド。さっきまで楽しそうにしてたのに、随分と苦しそうだな」
ヨルドとの戦いが始まって30分程が経った頃、その頃になると体力をかなり消耗したヨルドは息遣いが荒くなっていた。
俺も疲れはしているが【開放】のスキル効果で、まだ余裕がある。
このスキルを偶然会得する事が出来て、本当に良かったと今本当に感じている。
「フフッ、流石に私も貴方との戦いで余裕を保てないわよ。ただでさえ、貴方からは凄まじい魔力を直接感じて、それに耐える為に体力を使ってるもの」
「んっ? 平気な顔してたから大丈夫だと思ってたが、そっちも効果があったのか」
「ない方がおかしいでしょ? 貴方のその魔力、今まで私が戦ってきた強者達の中で一番よ。——だから、本当に楽しいわ!」
ヨルドはそう叫ぶと、全身に力を入れると会場の地面に亀裂が入った。
そしてヨルドは、力を溜めた状態で俺に向かって突進してきた。
なんの工夫も無い、そんな攻撃だがその攻撃は今日俺が受けて来た攻撃の中で一番強い攻撃だった。
「……貴方、本当に強すぎるわ。流石、悪魔にも勝った人ね」
「お前も十分強かったよ。正直、俺が知ってる強者の中でも5本の指に入るレベルだ」
「フフッ、そう言ってくれるのは嬉しいわ」
そうヨルドは満足した顔で言うと、体力の限界を迎えその場で仰向けで倒れた。
ヨルドが倒れたのを見届けた審判は俺の勝利宣言を叫ぶと、会場中から歓声が巻き起こった。
「医療班の方、これそいつに飲ませておいてください。我慢できるスキルを持ってるとはいえ、俺の攻撃をまともに食らい続けてて体中の骨が折れてますから」
「は、はい! ありがとうございます」
倒れてるヨルドを運びに来た医療班の人に、俺はレンの作成した薬の中でも最高級品の物を渡して会場を出た。
ヨルドのスキルは自身の強化に繋がるスキルではあるが、攻撃を無効化する能力では無い。
その為、ダメージはシッカリと入っていて俺の攻撃をまともに食らい続けていたヨルドの体は相当ボロボロになっていた。
「そんな状態でも笑いながら攻撃をしてきてたからな、相当な修羅場を潜り抜けて来たんだろうな……」
情報を見た時からおかしな奴だとは思っていたが、想像以上にヤバい奴だった。
魔法も無効化されていたし、俺がもしあいつへの対策を何もしてなかったら負けていたかも知れないな。
「負けていたって、お前本気出してなかっただろ? 本気出せば、さっきの奴も楽に倒せただろ?」
俺の考えを読み取ったベルロスは、そう俺に呆れた口調で言ってきた。
「こんな街中で俺の本気を出したら、一般人の人に迷惑を掛けるだろ?」
「……まあ、確かにお前の本気は周りにも影響を及ぼすレベルになってるな」
「だろ? まあ、力が会場から漏れないように結界なんか張れば本気も出せたが、偶にはああいうヒリヒリとした戦いもしたかったからな」
そう俺が言うと、ベルロスはそれ以上何も言ってこなかった。
そうして俺はクロエ達が待つ部屋に戻ってくると、レイは既に部屋から居なくなっていた。
【作者からのお願い】
作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら
下記の評価・ブックマークをお願いします。
作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。