第47話 【姫様の実力・3】
姫様は順番的に最後辺りみたいで、最初は他の生徒の魔法を見ることになった。
さっき見ていたから、どのレベルか分かってるから姫様以外は特に興味ないな……。
「ジュン、そんな興味無さそうな顔してるわね」
「あ~、姫様以外は特に興味ないなと思いまして」
実際これは本音で、今の姫様の実力を知りたいと俺は思うが他の生徒の実力を確認する程では無いと思っている。
正直な所、学園の生徒のレベルはゲームで大体は知っている。
授業や一人一人の魔法レベルなんかは端折られていたが、学園編でも生徒同士で戦う場面はいくつかあってそれで大体のレベルは把握している。
「護衛対象の姫様の実力がどれ程か、それだけですね俺が今興味があるのは」
「ふふっ、それなら楽しみにしておくと良いわよ」
姫様は笑みを浮かべながらそう言った。
それから特に何事もなくテストは進み、ようやく俺の本命である姫様のテストが始まった。
「皆さん、怪我をしたくなかったら離れていてくださいね」
姫様がテストの為に前に出ると、先生の一人がそう言うと生徒達はそれまで見ていた場所から数歩下がった。
何で、皆下がってるんだ? 取り敢えず俺も下がっておくか……。
「ジュン君って姫様の魔法、初めて見るんだよね?」
同じように最初の場所から少し離れると、姫様と同じクラスのミリアーナさんが声をかけて来た。
「ええ、そうですけど……この感じ、もしかして姫様って相当な魔法使いなんですか? 昨日、ティアナさんから姫様が起こした事件の事は聞きましたけど」
「フィーちゃんの魔法の実力は相当高いよ。学園に入る前は、天才児って言われてたティアナちゃんよりも魔法の腕が上で魔法科に入ったら凄い成長するぞって期待されてたほどよ」
昨日の話だと、問題児的なイメージが強かったけど、もしかして姫様って魔法の方も天才的な能力を持ってるのか?
ゲームでは基本、回復系や聖属性の魔法を使っていたイメージしかない。
あっ、でも確か公式のキャラ設定だと魔法の力も相当高いって書かれていたっけかな?
そんな事を思いだしながら、俺は魔力を集め魔法を放とうとしている姫様の方へと視線をやった。
「いきます」
魔法の準備が出来た姫様はそう言うと、巨大な火の鳥を出現させ試験用の的に放った。
あの魔法、中級以上クラスの魔法だ。
それをこんな物語始まる3年前から使えてたって、姫様マジでヤバいだろ……。
姫様の魔法に驚く俺や生徒達、そんな俺達に姫様はドヤ顔で見つめゆっくりとこちらへ戻って来た。
「どうだったかしら、私の実力は?」
「……凄かったです。城の建物を破壊する程の力があるとは事前に聞いてましたが、まさかあのレベルの魔法を使えるとは思いませんでした」
「私もです。姫様、あんな魔法が使えるのに護衛って必要なんですか?」
俺とクロはそう姫様に言うと、姫様は胸を張って嬉しそうにしていた。
その後、テストは順調に進み本日の一通りの授業は終わり帰宅した。
「姫様って魔法の訓練とかしてるんですか?」
「偶にしてるわね。ずっと城の中で暮らしてて、気分転換したい時とかにしてるわ」
「それって誰かに習ったりしてるんですか?」
「してないわよ。本当は付けたいってお父様達に言われたけど、どうせ使う予定の無いのに教わるのは嫌って言って自由にさせてもらってるのよ。大きな魔法を使うとストレス発散にも丁度いいから、邪魔されたくないのよ」
……それであの魔法を使えるって、そこそこ使えるレベルじゃないだろ。
そう俺は心の中で前世で暗記するまで見ていた設定資料に対して、心の中で文句を言った。
「それであの魔法を使えるって、姫様って凄いですね」
「元々魔法の才能はあったらしいから、一人でも魔法を使い続けていたらいつの間にかあんな魔法も使えるようになってたのよ。子供の頃は時間が有り余ってて、暇で暇でやれる事といえば魔法を使うくらいしかなかったのよ」
「作法とかも姫様は、最初から完璧出来ていたと言ってましたね」
「ええ、作法以外にも他の習い事とかも基本直ぐに出来るようになって時間が余ってたのよ。やる事はやってるんだから外に出してって言っても、お父様達は出してくれなかったから、結局残った魔法の訓練を一人でやってたのよ」
今じゃストレス発散の為にやってる、と姫様は言い丁度王城に着いたので馬車から降り、ここで本日の仕事は終わった。
姫様を城内まで見送った後、俺達は昨日同様に訓練場へと向かった。
訓練場に着いた俺とクロエは、入口付近で分かれ俺は昨日と同じ所で剣の訓練をしようと思い移動した。
「おっ、ジン! 今日も来たんだな」
俺の稽古場所は兵士達が訓練してる所から近く、昨日と同じく大勢の兵士を稽古しているアンドルさんからそう声を掛けられた。
アンドルさんは守護神と呼ばれているが、それでも剣術や体術といった戦闘能力も高く十数人程度の一般兵相手だと倒す事は不可能だ。
ゲーム開始時点では更に今より強くなっていて、ユリウスやアンドルさんが居るのに魔王に怯えているんだと不思議に思って位だ。
「今日もやってるんですね。兵士さん達生きてますか?」
そう声をかけると、倒れている兵士達の一部から「なんとかな~」と声が聞こえて来た。
「どうだジン、お前も参加するか?」
「あ~、いえ今日はちょっと自分の剣術を見つめなおそうと思ってまして、すみません折角誘ってもらったのに」
「自分の課題があるなら、無理に誘わんよ。課題を乗り越えたら、またいつでも参加したらいい」
アンドルさんはそう言うと、倒れている兵士達に「ほらっ、いつまで寝てる」と言って再び訓練を再開させた。
そんなアンドルさん達から少し離れた場所に移動し、俺は自分の訓練を始めた。
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