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第439話 【正式加入・3】


 その後も俺は資料を見て、特にこれといって事件は無く、休みが終わったら普通に迷宮探索に戻れそうだなと思った。

 そして二つ目の資料を手に取り、俺は中身を確認した。

 ハンゾウにはもう一つ、迷宮の探索状況とは別に後輩として面倒を見ているカシムについても俺達が居ない間の成果について調べて貰っていた。


「ふ~む、頑張ってはいるみたいだけど、あいつはまず仲間を見つけないと今後は厳しいだろうな……」


 本人から聞いた話だと、以前まではパーティーを組んでいたらしい。

 だけど、そこは前衛と後衛のバランスが悪く、カシムは自分から抜けたと言っていた。


「一人でやれる所まで頑張りたいとは言ってたけど、後になればなるほど、仲間を見つけるのに苦労するだろうからな……」


 そう俺はカシムの事で悩んでいると、部屋の扉をノックする音が聞こえ、返事をして開けると外には悩みの種のカシムが居た。


「ジンさん、おかえりなさい! 依頼から戻ってきたら、ジンさん達が戻って来てると聞いて、直ぐに挨拶に来ました」


「丁度良かった。お前の事で悩んでいたんだ。部屋に入れ」


「は、はい? わかりました」


 カシムは俺に言われた通り、部屋に入ると椅子に座り俺の方をジッと見つめた。


「なあ、カシム。俺達が居ない間に、仲間は見つかったか?」


「いえ、特に探しても無かったので仲間は……」


「前にも言ったけど、今から探しておかないと後になった後悔するぞ? ただでさえ、前衛って職業は冒険者でも沢山いるんだから、後から仲間を探そうとしても見つからないって事になるぞ?」


 そう注意をすると、カシムは顔を俯かせ「すみません……」と体を小さくして謝罪をした。


「……なあ、もしかしてだけど以前仲間と何かトラブルでも犯した事があるのか? それで仲間を作りたくないとか思ってるんじゃないのか?」


「……」


 俺の指摘はどうやら図星だったらしく、カシムは俺から視線を逸らした。


「カシム、話せる内容だったら話してくれ」


「……わかりました」


 ジッと見つめる俺にカシムは観念したのか、俺と出会う前のパーティーについての話をしてくれた。

 その内容はゲーム時代のクロエの人間不信の理由に似ており、組んでたパーティーメンバーに魔物の囮にされたとカシムは言った。

 その時のトラウマで、仲間を見つけようにも背中を任せても大丈夫なのか? と疑心暗鬼になってしまっていると教えてくれた。


「成程な……ってか、そんな大事な事なら最初から言えよ。無理矢理、仲間を見つけさせようとしていた俺が悪いみたいじゃないか」


「すみません。その、こんな心が弱い奴を面倒見てくれないかと思って黙っていました……」


「それに関してはカシムは悪くないから、そう落ち込まなくてもいい」


 落ち込むカシムに俺は慰めて、それならどうするか考える事にした。

 このまま一人で冒険者を続けたとして、カシムの能力的にどこかで躓くと予想できる。


「カシムは友人とかはいないのか?」


「元居た村には居ましたけど、王都に来てから初めてのパーティーでそんな事が起きて、友人もいないです……」


「……そんな見た目なのに、お前独りぼっちだったのか」


「はい。あっ、でもジンさん達は別ですよ? 憧れの人達に対して、そんな怖いとかは感じてないので」


 カシム自身が心を許らせる相手なら、怖いとかは感じないのだろう。


「早い所、心を許せる仲間と出会えるのが一番いいんだろうけど、それはかなり難しい事だからな……」


 その後、一先ず仲間については後日、改めて考える事にして話は俺達が居ない間に指定しておいた課題についてへと話題を変えた。

 前衛職、それも素手での戦いをするカシムに対して、うってつけの訓練相手は〝岩石山ダンジョン〟でのゴーレム討伐だと俺は考えた。

 レベル上げも出来るし、ゴーレムなら同クラスの魔物よりも硬く、訓練相手に丁度いいと思った。


「どうだった。初めてのゴーレムとの戦いは?」


「最初は倒すのに時間が掛りましたが、何度も闘う内にジンさんから教えて貰った通り、ゴーレムの弱点を見抜いて一発で仕留める事が出来るようになりました」


 俺はそう報告をしたカシムに対して「頑張ったな」と褒めると、嬉しそうにカシムは笑顔を浮かべた。

 それから俺は、明日は休みだから久しぶりに訓練を見てやると言い、話し合いは終わらせてカシムは部屋から出て行った。

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