第416話 【弟子試験・3】
魔法戦闘に関しては、特に問題はなく進んだ。
驚く様な相手はいなかったが、何度か王城で見かけた事のある兵士等は参加していた。
兵士に関しては近接戦闘の方でもちらほら見かけていたので、かなりの数が参加しているみたいだ。
「なんとか問題なく一個目の試験は終わったな」
「はい。ルークさん達もお疲れさまでした。本当に手伝ってくださり、ありがとうございました」
「ジンの頼みだったからな、また困ったことがあればいつでも頼ってくれていいんだぜ」
そうルークさんはいうと、ドルクさんも「いつでも頼みに来いよ」と言ってくれた。
その後、俺達は一個目の試験を合格した人達に対して、二つ目の試験内容の説明を始めた。
二つ目の試験内容は戦闘技術の確認をするというもので、近接戦闘は俺と戦い、魔法戦闘はクロエとの一対一の戦いをしてもらう。
本当はレイも戦う予定だったが、事前に試験レベルに手加減できるか確認したところ、少し怪しかったので俺が担当することになった。
「えっ、今からジンさんと戦えるんですか?」
「英雄と一対一で戦う……」
試験者の中には俺と戦うことに驚く者もいたが、大半の者達は俺と戦うことができて嬉しそうだった。
その中でも特に楽しそうにしていたのは、ユリウスとアンジュだった。
アンジュに関しては事前に戦える試験があると知っていて、その為だけに試験を受けに来ると言っていた。
だから驚く事はなかったが、まさかアンジュと一緒にユリウスとアンセルが居た事には驚いてしまった。
「それじゃ、早速試験を始める。武器はそこの箱の中に用意してあるから、得意な武器を選んでこっちにくるように、それとこれは一番大事なことで一人の持ち時間は三分だから長く戦いは続けられないから」
そう俺は試験時間を伝え、第二の試験を始めた。
第二試験は第一試験よりも難しく設定しており、殆どの試験者は俺に対して有効打を与えることはできなかった。
しかし、そんな中でもちゃんと少ない時間で俺の動きを観察して、戦いができてる者も中には居た。
「そこまでっ!」
「はぁ、はぁ、はぁ……お、俺は合格ですか?」
「……ギリギリだけど、合格だ」
一番最初、俺に突っかかってきた獣人の男は俺から合格と聞くと、疲れ切った顔から笑みがこぼれ「よっしゃ」とガッツポーズをした。
最初こいつを見た時、偉そうな態度だったから追い出そうかと思ったが、案外技量もそこそこ良く、根性もある。
正直、舐めてる態度をとっていたから他の試験者よりも力を出していたが、こいつは自分なりの戦いをやりきっていた。
「性格さえ鍛えたら、いい感じになりそうだな……」
そう俺は離れていく男を見ながら、次の試験者の相手を始めた。
それから二時間程、俺はぶっ通しで試験者の相手をして、全ての試験者の相手を終えた。
第一試験で大体全体半分以上が消え、第二試験では更に人が消えて、今残ってる試験者は丁度100人だった。
「大分、人が減ったね」
「まあ、正直もっと減らす予定だったけど、意外とやれる人が多かったな。まあ、中には戦い目的で来てる人も何人か居たけど」
ユリウスやアンジュのように弟子に絶対になる! という考えではなく、俺との闘いを目的に来てる人も何人か居た。
多分、何処からか第二試験が俺との闘いというのが漏れていたのだろうな、通過した合格者の1割はそういう考えの人達だった。
「この後、お昼休憩を挟んで第三試験を始める」
それだけ伝えて、俺達は外の会場から待機室へと戻ってきて、お昼休憩をとることにした。
そしてお昼休憩はレン達も同じ時間の為、お互いの試験について情報を交換し合った。
「そっち100人も通したのか? 俺の方は、10人もいないぞ?」
「厳しく見てたんだけど、かなりやり手がおおくてな……逆にレンの方は落としすぎじゃないのか?」
「普通に見てこれだからな、そこまで厳しく見てないぞ? なあ、イリス?」
「はい。レンお兄さまの試験は、そこまで厳しくなかったのです。人が減った理由は、集まった方達の勉強不足です」
レンと同じく試験を見ていたイリスはそういうと、俺はどんな試験内容かレンに聞いてみた。
第一試験は俺達と同じく、大体の実力を見るために簡単な薬の調合をさせたとレンは言った。
「できた薬は粗悪品が多くて、材料選びも下手でそこで大量に落としたんです」
イリスがそう言うと、レンは「実力を過信した奴が多かった」と冷めた口調で言った。
そして、第二試験は本格的な薬の調合技術を見るという内容だった。
「これもまあ最悪だったな、流石に国に使える錬金術や研究者はそこそこ出来ていたが、それ以外の者達はボロボロだった。正直、あの実力でよくここに来ようと思ったなというレベルだった。イリスのように勉強熱心と言う訳でもなかったからな、完全に試験をなめていた奴らだった」
その後、レンは「無駄な時間だった」と言って食事を早々に終えると、気分を落ち着かせるために散歩してくるといって出て行った。
【作者からのお願い】
作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら
下記の評価・ブックマークをお願いします。
作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。