第393話 【お休み期間・1】
師匠達から魔法玉に似た玉、ナシャリー様が命名した〝増幅玉〟を受け取った翌日、俺達は最後の挨拶をしに屋敷へと向かった。
今日は終わりを告げるだけなので、人が集まり次第、戦女達の所に行き授業の終わりとこれからについて伝えた。
戦女達はレリーナさん達の話を聞くと、俺の方を見て「あの、罰はないんですよね?」と不安そうに聞いて来た。
「大丈夫ですよ。皆さん、あれからは真剣な取り組んでいましたので、罰を受ける方は居ませんよ」
最後まであの脅しが効いていたのか、それを聞くと戦女達はホッと安心していた。
それから戦女達にレリーナさん達はこれからも気を付ける点を伝え、戦女達とは別れた。
そして、俺達はいつも待機していた部屋で、再教育の為に集まった者達のお疲れ様会を行う事にした。
その席ではお酒も出ていたのだが、俺は自主的に飲まないようにした。
「あれ、ジン君ってお酒飲めたよね? 今日は飲まないの?」
「一応、飲めはするけど弱いんだ。だから、折角のお疲れ様会だから今日は飲まないようにしておくよ。俺の事は気にせず、クロエ達は飲んでも良いからな」
酒を飲んでない俺にクロエ達が気遣って声を掛けてくれたが、俺はそう言って二人は一緒にお酒を取りに行った。
そしてそんな二人と入れ替わるようにして、レリーナさんが俺の近くに寄って来た。
「あら、ジン君はお酒が弱いのね。意外だわ」
「自分でも最近気づいたんですよ。なのであまり外では飲まないようにしてるんです」
「そうなのね。私もジン君と同じで、お酒飲めないのよね」
「レリーナさんもですか?」
意外にもレリーナさんも酒が飲めないと聞き、俺は少し驚きながら聞き返した。
「ワイン一杯分くらいなら平気なんだけど、二杯目からはもうダメなのよ。でも夫はお酒が強くて、フローラもその血を受け継いでてかなりの酒豪なのよ」
「フローラが酒豪って、見た目からは想像も出来ないですね」
「ふふっ、本人もその事を気にしてて家以外では控えるのよ」
「お母様、私が隠してた事を何でジン君に普通に伝えてるんですか!」
レリーナさんと話していると、少し離れて位置にいたフローラが早足で近づいてくるとレリーナさんに詰め寄りながらそう言った。
「全く、お母様がジン君の事を気に入ってるの知ってますけど娘の秘密を話の種で伝えないでください」
「あら、私はてっきり話してると思ったのよ? だって、友人関係になった後はよく遊んでいたじゃない」
「あの頃は、お酒を飲んでいなかったじゃないですか!」
母親の言葉にフローラは少し声を張って言い返すと、溜息を吐いた。
その後もお疲れ様会は続き、楽しい時間を俺達は過ごした。
「成程な、あの戦女達が改心したのか……どんな手を使った? 魔女から精神系魔法でも教わったか?」
「そんなヤバいものは使ってない、ただ脅しはしたけどな」
お疲れ様会が終わった後、俺はクロエ達を宿に送り届け一人でハンゾウの所へと来た。
「それでハンゾウ。頼んでいた情報は手に入れたか?」
「勿論だよ。ほらっ」
ハンゾウに頼んでいた情報が集まった確認すると、ハンゾウは資料をテーブルの上に置き、俺はその中身を確認した。
頼んでいた情報は俺達が迷宮で攻略してる間、外で変わった事について出来るだけ集めて欲しいと言う内容だ。
軽く目を通し、かなりの量があるなと感じた俺は宿に戻って読もうと【異空間ボックス】に入れた。
「それで、この後の予定はどうするんだ? また迷宮にでも潜りに行くのか?」
「そのつもりだよ。神様と約束したし、報酬も受け取らないといけないからな」
「報酬は時間が掛る物を頼んだって言ってたけど、一体何を頼んだんだ?」
ハンゾウは俺が伝えてない報酬の内容が気になるのか、一見興味が無い振りをしながらそう聞いて来た。
「まあ、俺達が受け取りに行ったら分かる事だが……その前にお前は知りたいみたいだな、いくらで買う?」
「ッ、沢山金持ってる癖にこんな事も教えてくれないのかよ」
「冗談だ。ただ面白い事になる事は間違いないし、多分それが公になったらもっとこの国は騒がしくなると思うぞ」
「だから、その報酬が何なのか教えろよ!」
ムキになったハンゾウに俺は笑いながら、俺達が神様に頼んだ報酬を教えた。
「マジかよ……お前達やっぱりおかしいだろ、普通神様からなんでも頼めるって言われて、それを頼む奴はお前達以外居ないぞ……」
「楽しい方が良いからな」
そう俺は笑みを浮かべて言うと、ハンゾウは「その話が本当なら、俺達も準備しておいた方が良いな」と言い、部下を呼び指示を出していた。
俺はそんなハンゾウに「またくるよ」と言って、転移で宿に帰宅した。
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