第387話 【問題児達・2】
問題児達の待つ部屋は、集まった部屋の一つ上の階だった。
フローラ達に連れられてその部屋に入ると、4人の女性が椅子に座って待っていた。
強気そうな女性、おっとりとした雰囲気を出す女性、そして双子で俺達に興味を示さない女性達が居た。
強気そうな女性とおっとりした女性は、一度は俺達の方に視線を向けたが双子達同様に視線を外して、興味を失ったかのような態度をとった。
そんな女性陣の態度を見ていたレリーナさんは、笑みを浮かべると俺の顔をみて「やって頂戴」と言われた。
「皆さん、初めまして本日から監視役を務める事になったジンです。そして一緒に参加する事になったクロエとレイ、そして私の姉のヘレナとルルです。よろしくお願いします」
そう俺はニコニコと笑みを浮かべて自己紹介をすると、女性陣は俺の言葉が聞こえてないのか、俺の自己紹介に何の反応も示さなかった。
はぁ、本当はやりたくないんだけど……。
「聞こえてないのですか?」
「「ッ!」」
俺は魔力の調整をして、4人の女性陣に対してだけ魔力の圧を掛けた。
部屋に来るまでの間、どうせ舐めた態度をとってくると思うから、最初から恐怖を与えなさいとレリーナさんから言われていた。
「カハッ……な、なによ。貴方、入ってくるなりこんな事をしてッ!」
「いえ、私の存在を認識出来ていなかったようなので、気づかれる為に魔力を発しただけですよ」
俺は笑顔を浮かべて文句を言ってきた強気な女性に対し、俺はそう言い返して順番に自己紹介をしてもらった。
俺の記憶にはゲームでの彼女達を知っているが、クロエ達がよく知らないので、あえて自分達から自己紹介をさせる事にした。
「私はアンナ・フォン・クウェルド。クウェルド子爵家の長女よ」
まず初めに、強気な女性はそう自己紹介を行った。
赤髪赤目で目つきが鋭いアンナは、ゲームでは前衛タイプとして使われていて、この世界でも変わらず剣士である。
得意な事は剣術で、貴族の女性ではあるが幼い頃から兄達の影響もあり剣に触れて育ち、勇者との旅で剣士として優れた才能を開花していった。
この世界のアンナもある程度、ゲームと同じではあるが勇者への想いが強く、ゲーム通りに剣士として成長は途中で止まっている。
「次は私ですか? 私は、ナナリー・フォン・アルフェルドです。アルフェルド侯爵の次女です」
おっとりとした雰囲気を出す女性は、アンナの次にそう自己紹介を行った。
金髪蒼眼をした彼女は、ゲームでは後衛タイプの魔法使いでこの世界でも同じく魔法使いだ。
彼女はアンナ以外の戦女に対してはそこまでないが、アンナに対しては性格の不一致で攻撃的でいつも喧嘩をしている。
そのせいで旅の道中ではストレスが溜まっていたと、アスカやフローラから聞いている。
「次は私達みたいだね。セレネ」
「そうだね。自己紹介はセレナに任せる」
「分かったわ。私はセレナ・フォン・ルディア、彼女はセレネ・フォン・ルディア。ルディア子爵家の娘」
自己紹介する時も仲良くしている双子は、そう自己紹介を行った。
そしてそんな彼女達だがエルフ族ではあるが、純血のエルフ族では無く、エルフと人間の間に生まれたハーフエルフだ。
エルフの持つ身体能力は受け継いでおり、姉のセレナが魔法使いで妹のセレネが斥候なのはゲームと変わらず、この世界でも一緒みたいだ。
彼女達は比較的そこまで問題では無いが、二人の世界に入る事があり、それで他人に迷惑を掛けてしまう。
そしてこの二人は、アンナ達の様に勇者を一人占めにしようという考えでは無く、二人で勇者と一緒になろうという考えを持っている。
「自己紹介は終わりましたね。先程も言った通り、ジン君にはあなた達の監視役を務めてもらいますから、これまでみたいに文句を言ったり勉強の成果が表れなかったらどうなるか、少しは考えてこれから行動をして頂戴ね」
「私達を脅すつもり? 見た所、彼は貴族ではないでしょ? そんな彼が私達に危害を加えてもいいの?」
「問題ないですよ。王族、そしてあなた達の両親から許可は貰ってます。大丈夫です。怪我は無いようにしますし、もし出来てもこちらの薬で完全に癒す事が出来るので、これまでみたいに反抗的な態度をとるのでしたら勝手にやってもらっても構いませんよ」
レリーナさんからの合図に気付いた俺は、レリーナさんと同じく彼女達に対して脅すような言葉を掛けた。
その後、レリーナさん達と姉さん達は彼女達への勉強を始め、俺とクロエとレイは後ろの方から彼女達の監視を始めた。
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