第378話 【目的の物・2】
ハンゾウの店へと着いた俺は、店員にハンゾウが居るか確認をして奥の部屋に通された。
そしてハンゾウに、最近の情報について聞いた。
「新しい情報で言うと、戦女が他国でちょっと迷惑掛けたってのは知ってるな。勿論、面倒事を起こしてた方の戦女だがな」
「世界を救った勇者の仲間なのに、迷惑を掛けたのか……どの程度、迷惑を掛けたんだ?」
「そんな大したことではないみたいだが、野放しにしてると何をするか分からないって国が判断して、迎えに行ったみたいだな」
まあ、確かに勇者が旅に出ると言って先回りするような人達だからな……。
「正直、勇者としても戦女達が他人の事を思う気持ちがあれば、あそこまで拒絶しなかったのにあの戦女達はその辺が欠けてるからな……」
「実質、魔王討伐が遅れたのもそのせいだしな、国としてもこれ以上は放っておけないと思ったのか数日前に同じ戦女だったアスカを連れて迎えに行ったみたいだ」
「アスカが居れば、まあ大丈夫だろうけど国がまた騒がしくなりそうだな……」
俺はふと戦女達が戻って来て、もしも俺が勇者の旅に関係してると知ったら、こっちにも迷惑を掛けられそうだなと想像した。
迷宮探索が今はあるからまだ良いけど、もしも攻略が終わったら俺達も直ぐに国を出た方が良さそうだな。
その後、ハンゾウから最近の王都の状況についても聞き、店を出て迷宮の家へと戻って来た。
俺は家の中にそのまま入らず、裏手に回り訓練をしてるクロエ達の所へと向かった。
「二人共、休みの日だからあまり無茶はするなよ」
「分かってるよ~、ちゃんと運動のつもりでやってるから」
「無茶はしないようにやってるから、大丈夫だよ。ジン君」
俺の声に激しい戦いをしながらそう言った二人に、俺は苦笑いを浮かべながらそのままベンチに座った。
それから数分後、戦いを終えたクロエ達は汗を拭きながら俺の方へと寄って来た。
「ジン君、今日は外に情報を聞きに行ってたんだよね? 他の冒険者さんの進み具合はどうだったの?」
「ぼちぼち攻略が進んでるみたいだけど、やっぱり5層の試練で大分落とされてるみたいだよ。住宅に入れない冒険者も頑張って進もうとしても、他の冒険者が風呂に入ったりと快適な生活を送りながら冒険してるのにストレスを感じて出て行く人が多いみたいだな」
「まあ、そうだよね。本来、迷宮の探索でお風呂なんて入れないもんね」
「現状、一度5層の試練で落とされたら住宅に入れなくなってるけど、神様もそこら辺は見てるだろうからもしかしたら改善されるかも知れないが、それまでは試験に落ちた冒険者はもう来ないだろうな」
遊戯神様は楽しい事が好きだから、人が減るだけの今の状態から改善するだろうとは思う。
「それと60層突破の冒険者も、増えてきてるってのも聞いた。俺達を合わせて10組程いるらしが、半分は知り合いみたいだ」
「ルークさんやアンジュさん、それにヘレナさん達だね」
「ああ、もしかしたらギルドが把握してないだけで更に多いかも知れないから、玉の採取に苦戦してると追い抜かれそうだ」
そう俺が言うと、レイは「明日から、また頑張らないとだね」と言ってクロエともう一度模擬戦闘を始めた。
それから俺は二人を裏庭に残して家の中に入り、明日からの攻略について考える事にした。
「リウスは一匹でどうにか出来るから、俺達の方だよな……二手に分かれるのは得策じゃないけど、このままだと他の冒険者に追い抜かれる可能性もあるから、そんな事を言ってる場合じゃないかも知れないな……」
玉の回収も大切ではあるが、現状一番攻略が進んでるならそのまま最初の攻略者になりたいという気持ちもある。
俺はベッドの上で、これからどうするか悩んでいると、部屋の扉をノックする音に気付いて返事をすると、レンが部屋に入って来た。
「あれ、レン? 研究してるんじゃなかったのか?」
「明日の攻略もあるから、早めに終わらせてきたんだよ。というか、ベッドに横になってるって事はもしかした寝てたのか?」
「いや、ちょっと考え事をしててな」
「攻略の事か?」
そうレンから言われた俺は頷き、今の悩みについてレンに伝えた。
「それなら、採取は止めて魔物狩りに集中するか?」
「えっ、それだとレンが欲しい物とか採れないんじゃないか?」
「欲しい物は沢山あるけど、玉の方が大事だからな。それに玉以外は、他の迷宮でも採れそうなものだからな、玉の確保が最優先だよ」
それから俺はレンにお礼を言い、リビングで待ってるクロエ達の所へと向かった。
そして明日からは、採取系は全部やめて魔物狩りに集中すると伝えた。
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