第376話 【深層地帯で魔物狩り・4】
「あと少しで迷宮の最深部というだけあって、出てくる魔物の強さもまた一段と上がったな」
探索開始から一時間程が経ち、俺達は既に何度か96層で魔物と遭遇して戦闘を行った。
出てくる魔物は基本、装備を着用しており集団の魔物の中に数体、魔法を使う魔物が追加されるようになった。
その魔法の威力は凄まじく、銀級冒険者レベルの魔法を普通に放って来て最初見た時は驚いて、加減を間違えて一発で全部を仕留めてしまった。
「そうだね。でもこれで、玉持ちじゃない魔物達ってのが少し怖いよね」
「魔法使いならほぼ確実で金級冒険者以上の強さを持っていそうだし、もしも玉持ちの魔物が玉を割って中の魔力を吸収したら、面倒な魔物が出来そうだな」
「間違いなく面倒だろうな……レイ、面白そうだからって玉持ちの玉を割らせるとか考えるなよ?」
「そんな事はしないよ! 今の魔物で十分満足してるから、そんな皆に迷惑が掛かる事は流石の私でもしないよ」
レンの忠告に対して、真顔でレイはそう言った。
そんなレイの言葉にレンは言い過ぎたと思ったのか、直ぐに「すまん」と謝罪をした。
「でも一度だけ試したいって気持ちはあるんだよな……楽しみたいとかそういうのではなくて、どうなるのかって」
「それは分かるかも……あんな凄い玉の魔力を吸収したら、魔物がどう変化するのか気にはなるよね」
そう俺とクロエが言うと、レイが「試すの?」と聞いて来た。
「いや、流石に本物の玉持ち相手にそんな無茶はな……本物の玉を2つ回収した後、偽物が出る階層に戻って試すのはありかも知れないけど、時間的に厳しいかもしれない」
「それなら、ここに来る前に試しておけばよかったな。何度か玉持ちが玉を割ってたけど、吸収する前に倒してたからな」
「今、考えたら勿体ないなって思ってるよ」
本物で試すには惜しい為、今更出来ないけど偽物の玉を破壊した魔物がどうなるかちゃんと見ておけばよかったと後悔している。
最初に魔力が魔物に吸収されてるのを見て、何かヤバい事が起きそうだと思ってそれからも対処していたが、一度くらいは見ておくべきだった。
「キュ~!」
そんな話をしていると、遠くの方からリウスが飛んできた。
「帰って来たって事は、玉持ちの魔物を発見したのか?」
「キュッ!」
「そうか、よくやったぞ!」
玉持ちを発見したリウスの頭を俺は撫で、皆に急いでその場に向かうように言った。
それから5分程して、リウスの案内の元で辿り着いた先に確かに玉持ちの魔物が居た。
見た目はローブを被り、右手には杖を持ち、左手には師匠が持っていた玉と同じ物を持っているオーガが居た。
種族的に前衛で暴れるタイプだが、あの個体は魔法を使うタイプのオーガだろう。
「まだあいつらは俺達に気付いてないみたいだな……折角の本物の玉だ。必ずとろう」
そう俺は皆に言って、魔物達に奇襲を仕掛けた。
まずは周りにいる魔物に向かって俺とレンの魔法を放ち、仲間がやられた事に動揺した他の魔物にクロエとレイが接近して片付けた。
そして後方に残っていた玉持ちのオーガは、杖と玉を掲げると巨大な魔法を作り俺達に向けて放って来た。
「キュ~!」
「よくやったリウス!」
その巨大な魔法はリウスが放ったブレスで相殺され、渾身の魔法を消された玉持ちのオーガは動揺していた。
その隙に近くまで寄っていたクロエがオーガの左腕を切り落とし、玉を回収しようとした。
しかし、自身の腕が切り落とされたにも関わらず右手に持っていた杖から魔法を放ったオーガは口で杖を咥え、玉を右手で拾い直した。
「グルォォォォ!」
次の瞬間、オーガは叫びながら玉を砕いてしまった。
その光景を見たレンは「ああ……」と悲し気に呟き、俺達は直ぐにオーガの処理へと動いた。
「折角の本物の玉だったのに、残念だね」
「まあ、一度目でとれるとは正直思ってなかったからな……クロエが腕を切り落とした所までは良かったんだけど、まさかあそこまで魔物が玉に執着してくるとは思ってなかったのが誤算だな」
「うん。後ちょっとだったのに、ごめんね」
自分のミスだと感じたのかクロエが謝罪したので、俺達は「クロエのせいじゃないよ」と言って慰めた。
その後、リウスには「また見つけたら、報告を頼む」と言って俺達は再び二手に分かれて探索を再開した。
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