第347話 【遊戯神の迷宮・1】
予定日の朝、俺達はいつも通り朝食を済ませ迷宮の場所に転移で移動した。
念の為、何かあったらいけないと思い事前に俺は一人でこの迷宮まで来て、転移で来れる様にしていた。
「ここが迷宮なの?」
「入口自体から他の迷宮とは違うんだね」
遊戯神の迷宮は、他の迷宮とは外見から違う。
普通の迷宮は基本的に洞窟の入口の様な形だが、神の作る迷宮は神殿の様な建物が作られてその中に入口がある形となっている。
また予約が出来なかった冒険者達も沢山集まっていて、あの人達は予約して入る冒険者達が出た後に出来る新規枠を狙っている人達だ。
「ジン様御一行様ですね。お待ちしておりました。中へどうぞ」
俺達はそんな人達の中を歩いて行き、入口で守っている兵士さんに予約者に配られたカードを見せて中に入った。
中に入ると、既に俺達と同じく〝第一探索者〟の冒険者達が集まっていた。
第一探索者にも順番があり、10組までの冒険者が迷宮に挑む事が出来て俺達はフィーネさんの運がよく一番目に入る権利を持っている。
「やっぱり、ジン達もここに来たのね」
集まってる冒険者の中には知り合いもいて、その中からアンジュさんが歩いて来て俺達に話しかけた。
「お久しぶりです。アンジュさん」
「ええ、久しぶりね。最近まで旅行に行ってるって聞いてたけど、やっぱり迷宮には挑みに来たのね」
「はい。旅行先でルークさんに迷宮の事を聞いて、予約出来てないから無理かなと思ってたんですけど、気を利かせてフィーネさんが予約してくれていたんですよね」
「パートナーはそういう冒険者の性格を考え、動いてくれるから助かるわよね。私も最近まで休んでいたんだけど、迷宮の話を聞いて急いで戻ってきたらレイナが予約してくれていたのよね」
アンジュさんがそう言うと、後ろからユーリに変装中のユリウスが現れた。
「ユーリさんも一緒なんですね」
「勿論だよ。神の作った迷宮なんて楽しそうだからね。無理を言って、数日間休みを貰って来たんだ」
ユリウスは楽しそうにそう言うと、キラキラとした目で「どんな所かワクワクするよ」と言った。
「アンジュさん達はいつもの様に二人で挑戦するんですか?」
「本当はそのつもりだったんだけど、神の作る迷宮だから何が起こるか分からないでしょ? だから、今回だけ特別にもう一人仲間を入れる事にしたのよ。流石に神の作る迷宮だから、舐めて挑んだら危ないと思ってね」
あのアンジュさんが仲間を入れたのか、どんな人が仲間なんだろ?
そう考えていると、アンジュさんは「貴方もジンに挨拶したら?」と後ろを振り返って言うと、そこには長身の男性が立っていた。
……いつの間に、そこに居たんだ? 全く、気配を感じ取れなかったぞ?
「ジン達の話は色々と耳にしている。俺の名前は、アンセル。よろしくな」
男性が名乗った名前に、俺達は「え?」と口を揃えて驚いた。
アンセルって、あのアンセルか? ハンゾウさえも、調査を止めた謎の多い人物だろ?
「よ、よろしくお願いします。そのアンジュさん、アンセルさんとはどういう繋がりなんですか?」
「う~ん、腐れ縁ってかしらね? ユーリと同じで、私達は同じ所で育ったのよ」
「アンジュ、俺の話は止めてくれ。折角、色々と隠しているんだから」
「そうだったわね。という訳で特に話せる事は無いみたい。あっ、でもあれは言っておいた方が良いわよ? ジン達も多分、間違って認識してると思うわよ」
そうアンジュさんが言うと、アンセルは嫌そうな顔をして「だったら、そこはアンジュが言ってくれ」と言って去っていった。
「アンセルさんって、本当に情報を遮断してるんですね」
「昔、色々とあったから、それで自分の事は特に情報を出さないようにしてるのよ」
そうアンジュさんが言うと、ユリウスは「色々とあったからね……」と悲し気にそう言った。
アンジュさん達の過去は色々と大変だったと聞くし、そこで何かが起きたんだろう。
そう思うようにした俺は、最後に言っていた〝あの事〟について聞いた。
「ああ、それはアンセルが女の子って事よ」
その情報に俺達は再び驚き、去っていったアンセルの方を見てアンジュさんを二度見した。
「マジですか?」
「本当よ。元々、声が低いからそれで調整して男性の様に見せてるのよ。女性と思われるより、そっちの方が楽だって本人は言ってて格好もあんな風にしてるのよ」
そうしてアンセルについてたった一つだが、かなり驚く内容の情報を聞いた俺達はアンジュさん達と別れ、迷宮の入口へと向かった。
そして入口にも兵士が立っていたので、その人に予約のカードを見せて俺達は遂に迷宮の中へと入っていった。
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