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第328話 【罰・4】


「カハッ——」


 俺と団長の戦いは、数分で終わりを迎えた。

 大剣扱う団長の一太刀は、確かに強力な技ではあった。

 しかし、相手である俺は刀使いだ。

 団長の攻撃をズラして一瞬で詰め、そのまま団長の体に刀を突きさした。


「ま、まさかここまで実力の差があるとは……流石、英雄ですね」


「……お前もよくやったよ。俺相手に怯まず、戦えたんだからな」


 団長は俺の言葉を聞くと、笑みを浮かべ「ありがとうございました」と言って目を閉じた。

 その一部始終を見ていた神聖国の者達は、もしかしたらという淡い期待が打ち砕かれ、更に絶望へと落とされていた。


「頼みの綱が倒れて、悲しむんじゃなくて自分達の身の危険を感じる所は流石だな。そこだけは、感心するよ。だが、まだこれだけで済むはずはないよな?」


 俺の言葉と同時に天井が破壊され、一匹のドラゴンが部屋の中を覗き込んだ。

 竜王のドラゴン形態、その姿を目にした神聖国の者達は最早悲鳴すら出せていなかった。


「なんだ。生きてる人間が多いの? ジン、我らの仕事はもう終わったぞ」


「すみません。ちょっとゆっくりやってました。というか、逆にヴェルドさん達が早いんだと思いますよ?」


「そうね。もう少し楽しんでいたら良かったのに、こんなに早く終わらせて良かったの?」


「ふんっ、抵抗しない相手に遊ぶのは飽きたんじゃよ。ほれ、ちゃんと撮って来てやったぞ」


 竜王はそう言うと、魔道具が入った袋を俺に渡してきた。

 俺はそれを受け取ると、竜王にお礼を言って神聖国の者達へと視線を向けた。


「ふふっ、ずっとここに閉じ込めさせられて周りがどうなったか知りたいだろ? 死ぬ前に神聖国で起こった事を見せてやるよ」


 俺はそう言いながら魔道具を起動させて、魔道具に映っている神聖国だった所を見せつけた。

 数百のドラゴンにより、神聖国の街だった所が破壊され、人が住んでいたとは思えない程になっていた。

 その光景をみた神聖国の者達は、自分達が見て来た光景が壊されていく現状に耐えきれないのか気を失うものが続出した。


「気絶して楽になろうと思うなよ?」


 気絶した者達に対して、俺は薬を振りまいて強制的に起こし、神聖国で起こった出来事を全て見せつけた。

 その内容は衝撃的で、神聖国の者達の殆どは既に恐怖のどん底へと落とされていた。

 

「弟子ちゃん、そろそろ良いんじゃない? 反応も悪くなって来たし、なんだか臭いわ」


「……そうですね。わかりました。それでは終わりにしましょうか」


 俺と師匠の言葉に神聖国の者達は、ようやくこの地獄から解放されて死ねると思い、安心した表情をしていた。

 しかし、俺と師匠はそんな神聖国の者達に対して、悪魔も逃げ出せない拘束道具で全員を縛った。


「……ふっ、本当にここで死ねると思ってたのか? 確かに周りの国からしたら、ドラゴンの怒りで神聖国は消えたと思われるかも知れないが。それだと、折角手伝ってくれたドラゴン族に申し訳ないだろ? ちゃんと、世界の悪として断罪させるつもりだよ」


 俺は最初からこの場に上層部の者達だけを集めたのは、自分の鬱憤を晴らす目的とは別にその目的もあった。

 そして、まだ生かされると知った神聖国の者達は更に絶望している。


「それじゃ、帰りますか」


 そう言った俺は下で待っていたクロエ達を呼び、今回の神聖国に対する粛清は終わりとして、後はデュルド王国に残った問題を丸投げした。

 その後、神聖国の後処理を請け負ったデュルド王国は連日話し合いが行われ、日に日に姫様達の顔はやつれていっていると聞いた。

 神聖国の粛清後、自分の精神面が不安定な状態になった俺は、一週間の活動休止をクロエ達に言って休む事に専念した。

 自分が起こした問題を国に丸投げして、自分だけ休んでるのは申し訳ないとは思ったが、今の俺は自分でもヤバいと理解していた。


「……人を殺し慣れる前に終わらせることが出来てよかったな」


 正直、俺は自分の手で上層部も含め殺す事も考えていた。 

 しかし、そこに辿り着く前に多くの人を自分の手で殺してしまい、精神面が不安定となっていた。

 俺はこのままだと道を踏み外すと思い、上層部の処理は国に投げる事にした。


「取り合えず、暫くは安静に過ごすとするか……」


 そう俺は口にして、再び眠りについた。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、何と言うか話し合える『人間』じゃなくて 田畑を荒らす【害虫】と話し合い何て無理よねえ
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