第316話 【神聖国の動き・3】
翌日、昨夜姫様の部下に大事な話があるから時間がある時に行きたい、と伝言を頼むと朝なら時間が空いてると返事が来た。
その為、朝食を食べた後に俺は一人で姫様の元へと向かった。
「……ちょっと、待ってね。ジンの言った言葉が意味不明過ぎて、脳が理解を出来ないでいるわ」
昨日の事を姫様に一通り説明すると、姫様は頭を抱えてそう言った。
そして、姫様は落ち着く為、レンが開発して姫様に俺が渡した頭痛によく効く薬を飲んだ。
「それじゃあ、なに? その悪魔が一時的に戻ってる隙を突いて、元凶の悪魔を捕まえて力を奪って魔女の所に監禁してるの?」
「はい。あそこなら逃げる事は不可能ですからね。師匠から逃げたとしても、力を失った悪魔が空島から神聖国まで行くのは不可能なので」
万が一、何かしらの方法で師匠から逃げたとしても、空島から神聖国に行くのは不可能。
だから俺は、本来だったら姫様の所に連れてきた方が色々と説明しやすかったが、空島に監禁して姫様の所へと来た。
「ジンと魔女がおかしいと前から知ってたけど、まさかそこまでとはね……」
姫様はもう深く考えるのを止めた様で、呆れた声音でそう言った。
「それにしても、ずっと昔から神聖国に悪魔が裏で動いていたとはね……ジンが居なかったら、知る事も出来なかったわね」
「師匠ですら気づけませんでしたからね。悪魔を知っていて、悪魔を捕まえる事が出来る人が居なかったら、多分ずっと気付かれる事は無かったと思います」
「魔女ですら無理だったの? ……という事は、本当に奇跡的に見つかったという事になるわね。ジンは本当に凄いわね」
姫様はそう言うと、話は今後の神聖国の動きについてに変わった。
「その悪魔が言うには、これから神聖国が大々的に動き出す予定なのよね?」
「はい。魔物の騒動は俺達が抑えましたが、それでも王都やその他の街で人間による騒動が起こされていて、それを止める名目で動くみたいな事を言ってました。既にそれは前々から決まっていた事らしく、その悪魔が居なくても実行に移されると言ってました」
「成程……わかったわ。もしもの時の為に、私達も準備だけはしておくわね」
その後、姫様は「また何かあったら、伝えてね」と言って話し合いは終わった。
そして、姫様の所から俺はそのままハンゾウの所へと移動して、ハンゾウにも姫様に言ったように悪魔の事について話をした。
「ハハッ、流石は英雄様だな。まさか、人知れず神聖国を裏から操ってた悪魔を捕まえて、無力化していたなんてな」
「ああ、だがまだ安心するなよ? あいつから聞いた感じ、上位悪魔はあいつ以外は居ないらしいが、下位の悪魔がまだ5体は居るらしいからな」
「そいつらも召喚済みなのか?」
ハンゾウのその質問に対して、俺は頷き「召喚された悪魔達だよ」と答えた。
ルゼラ、カルム以外に下位悪魔が5体となると、普通の人間の軍だと対応が難しいだろう。
「って事は、ジン達が戦うのか?」
「まあ、そうなると思うけど極力は目立ちたくはないな。既に色々と目立ってて、行動範囲を狭めたくないからな……それに人間側でも、下位悪魔程度となら対抗できる人は俺達以外にも居る。代表な人で言うと、ユリウスとかは戦えるだろう」
「剣聖か、確かにあいつの強さなら悪魔にも勝てそうだな……」
他に戦えそうな人で言うと、アンジュとアスカも戦えるだろう。
後、今は療養中で王都に居ないがフローラも力の弱い下位悪魔程度なら、互角以上に戦えると俺は予想してる。
「というか折角今は勇者の功績に皆が目が行ってて、自由に買い物とか行けるようになったのにまた目立って買い物が出来なくなるのが嫌なんだよ」
「ふっ、そんな悩みはお前達位だろうな、他の冒険者や兵士が聞いたら妬まれそうだな」
「本当の事だから、仕方ないだろ? ハンゾウは裏で動いてるから感じた事が無いと思うが、人の視線も耐えるの辛いんだぞ?」
「お前達を見てて知ってるよ。あれは、俺には耐えられないな」
ハンゾウは苦笑いを浮かべてそう言うと、俺は「だから今回は、極力目立ちたくない」と言った。
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