第314話 【神聖国の動き・1】
ギルドへの報告後、俺は皆と別れて拠点へと戻って来た。
レドラスは早速、部下となった悪魔に対して掃除のやり方を教えていた。
「レドラス。すまないが、そいつを一旦借りても良いか?」
「帰って来たか。神聖国について聞くんだろ。俺も気になってたから良いぞ」
俺の言葉に返したレドラス。
それから俺達は、拠点の来客用の部屋に移動した。
「それで、まずお前は名前はあるのか?」
「い、一応あります。下位悪魔のカルムと申します。得意な事は魔物を操る事です」
「魔物を操る? だからお前があの数千体の魔物の近くに居たのか?」
「はい。魔物を集めて、この国の街を襲撃するのが私の役目でした」
スラスラと自分の事を喋る悪魔。
こいつが本当の事を言ってるのか、レドラスに視線で確認すると「本当の事を言ってるぞ」とレドラスは言った。
「カルムに聞くが、神聖国には何体の悪魔が付いてるんだ?」
「全ては私も把握していません。ですが、自分が会った事のある悪魔だけでも2体は居ます。その内の一体は上位悪魔の方で、緑色の悪魔ルゼラ様です。レドラス様は知っておりますよね?」
「上位悪魔? 師匠は、上位悪魔が活発に動けば、分かると言ってたぞ?」
カルムの言葉に俺は驚き、レドラスの方を見た。
「……あいつならマリアンナも見逃すはずだな、あいつは上位悪魔の一体だが。力で言うと、一番弱いんだ」
「そうなのか? それなのに上位悪魔なのか?」
「あいつは力で恐怖を与えるというより、話術が得意でそれで悪魔界でも多くの部下を持っていたのを覚えている」
話術が得意か、そんな悪魔も居るのか。
悪魔にも様々な奴がいるとは聞いたが、悪魔らしくない力だな。
「そいつもお前みたく、この世界に召喚されてるのか?」
「はい。ですが、今は丁度悪魔界に戻っていて、この世界には居ないです」
「ふむ……前から聞こうと思ってたんだが、悪魔って一度召喚されたら自由にこの世界と悪魔界を行き来できるのか?」
ゲームの設定資料には悪魔の事はあまり書かれてない。
だから俺は何回か話に出ていた事をこの際と思い、レドラスに質問した。
「そうだな、この際だし説明しておくか」
レドラスは俺の質問に対して、簡潔に説明をしてくれた。
悪魔界と俺達が住む人間界は、神の作った結界によって自由に行き来する事は出来ないようになっている。
悪魔達は個々の能力で、人間を観察したりする事は出来ても本体で人間界に行く事は出来ない。
その為、どちらかの世界に行くには対価が必要で人間が悪魔界に行く方法は今の所知られてないが。
悪魔は〝召喚〟というやり方で、人間界に来る事が出来る。
その際、使うのは〝人魂〟で生贄を用意する事で、悪魔をこの世界に呼び出すことが出来る。
そしてその魂が尽きたら、悪魔は悪魔界に戻されるという仕組みになっているとレドラスは言った。
「ちなみにこれらを全て取っ払って無条件で呼び出し、悪魔を使えるのが〝悪魔の書〟をマリアンナは所持してる」
〝悪魔の書〟とは、元々はある悪魔が同じ悪魔を使役しようと作った物だったが、いつの間にか師匠が持っていたらしい。
「その悪魔ってまだ生きてるのか?」
「生きては居ると思うが、何処に居るか分からないな。ベルロスや他の力の強い悪魔が「魔女に渡すなんて馬鹿じゃねえのか」って言って、ボコボコにしてそれから姿を消した」
「色んな悪魔が居るって聞いたが、そんな凄い物を開発出来るのに馬鹿な悪魔も居るんだな」
そして最後にレドラスは、召喚された悪魔が悪魔界に一時的に戻れるのか説明してくれた。
「さっきも言った通り、悪魔も神が作った結界を容易に通る事は出来ない。ある程度の知識と経験のある悪魔は、召喚された際の〝魂〟のエネルギーを使い、世界を行き来する事が出来るんだ」
「それでさっき話に出た悪魔は、今は〝魂〟のエネルギーを使って悪魔界に戻ってるって事か」
「そういう事だ。ちなみに俺やフィオロは、マリアンナの持つ〝悪魔の書〟で呼ばれた存在だから行き来する事は不可能だ」
成程、色々と謎だった悪魔の事が大分知れたな。
「んっ? でもそうなると、ベルロスはどうなるんだ? あいつは、生贄を媒体にこの世界に召喚されたが、今は俺の刀に封印されてるよな?」
「ベルロスの場合は、その刀に力を封印されてるから行き来は不可能だと思うぞ? 本人に聞かないと分からないがな」
「そうか。まあ、今は良いか」
俺は悪魔についての話を終え、今後の動きについて知ってる事をカルムから聞き出す事にした。
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