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第295話 【蹂躙・2】


 作戦会議が終わり、明日から早速動く事になった。

 それから姫様のテントから、俺達の為に用意されたテントの所に移動した。


「なかなか、酷い状況みたいだね~」


「思っていた以上にヤバいな、士気の低下具合が半端ない」


「よくこれで、ここまでこれたねって感じだよね」


 テントの所までくる間、魔王討伐に集まってるこの団体の士気の低下具合が以上でクロエ達はその光景を見て、そんな感想を口にした。


「話では勇者も大分頑張ってはいるみたいだけど、女二人が喧嘩を続けてるみたいだな……今まで勇者を避けて来たけど、なんか可哀想に思えて来たな」


「自分を取り合う人達が周りに迷惑をかけてるのを、一番見てるだろうしね……」


「辛いか辛くないかで言えば、かなり辛いだろうね」


「私だったら、正直無理ってなって逃げだしたい空気感だった」


 そう俺達は勇者に同情して、明日の陣形について話し合う事にした。


「明日の陣形なんだけど、話していた通り俺がとにかく数を減らすから、クロエとレイで取り逃がした魔物をやっつけて欲しい。レンは、二人のサポートで危なくなったら、手助けに入る感じで行こうと思うけど何か意見はある?」


 確認の為、昨日話し合った事を聞くと、クロエ達は意見は無いと言って、明日の動きはこれで行く事が決まった。

 そして話し合いが終わり、少しゆっくりしていると俺達のテントの近くに誰かが寄ってきた。

 俺はその誰かの魔力を感じ取ると、皆にアイコンタクトを取り俺がテントの外に出て対応する事にした。


「久しぶりだね。ジン君、元気にしてた?」


「お久しぶりですね。勇者様、こちらは元気にしていましたよ。……逆に勇者様はお疲れの様子ですね」


「まあ、ね。色々とあって……ジン君なら姫様から聞いてるか」


「はい、戦女同士の喧嘩が酷いと」


 そう言うと、勇者は頷き乾いた笑みを浮かべ、溜息を吐いた。

 それからここでは話を聞かれるからと、誰も居ない所へと移動する事になった。


「何度も注意はしてるんだけどね……いい方向に行かなくてね。正直、最初の頃は仲良くなって欲しいと思ってたけど、今は取り合えず喧嘩しないで欲しいって思ってるよ」


「大変ですね……」


「うん、まあ、でもあと少しだからね。……実は魔王を討伐が出来たら、報酬金で一人旅に出る予定なんだよね」


 勇者のその夢を聞いた俺は、驚いた顔をしたが何とか大きな声には出さなかった。

 おかしいな、ゲームだと魔王を討伐した後だと残った問題を片づけて、そのまま結婚って流れだった筈だけど……。


「その顔、僕が旅に出る事が不思議って顔だね」


「はい、その旅の仲間達と良い関係だって聞いてたので、結婚とかするのかなと、そうじゃなくてもその旅に一緒に連れて行くのかと思いました」


「戦女の子達とは、確かに良い関係だよ。でもそれは、男女の関係というより友人に近い関係性なんだよね。その中でもアスカさんは面倒見のいいお姉さんって感じで、色々と相談にも乗ってくれてるし、すぐ喧嘩する戦女の子の仲裁役にもなってくれてるんだよ」


 男女の関係は無いと言った勇者に、俺は内心驚いていると勇者はそのまま話を続けた。


「それで、アスカさんに相談したんだよね。魔王を討伐した後、あの二人の様な面倒な女性が増えるかも知れないって、そしたらアスカさんにそれだったら旅に出たらどうかなって、アドバイスを貰ったんだよ」


「それで、一人旅にですか?」


「うん、魔王を討伐しても僕が死ぬまで聖剣は僕の物として使えるみたいだから、これさえあれば大抵の魔物は倒せるからね。自由な旅をしてみようって思ったんだ」


 勇者はその夢を叶える為、今は色々と耐えていると言った。

 しかし、何でこの話を態々勇者は俺に話に来たんだ?


「あの、それで何でそんな話を俺にしたんですか?」


「うん、この話をしたのには理由があって、ジン君には僕が旅に出る時にジン君が知ってる一番遠い街に転移で送ってほしいんだ。多分だけど、あの二人は僕の旅に同行するって言ってくる筈だから、逃げる為にジン君に助けて欲しいんだ」


 勇者のその必死な顔に、俺は本当に追い詰められているんだなとそう感じた。

 ここまで想い人を追い詰めてるって、あの戦女の二人は自覚してるのだろうか。


「……俺としては力を貸すのは良いんですが、勇者様を逃がすとなると俺個人では判断できません。一先ず、姫様に話を通して許可が下りるのでしたら手を貸します」


「僕もこれだけ世話になった国に、黙って出て行くのは非常識だと思って姫様には話をしてるんだ。姫様からはちゃんと許可を貰ってるから、安心して」


「そうでしたか、分かりました。それでは、その時が来たら力を貸しますよ」


 そう言うと、勇者は深々と頭を下げ、「ありがとうジン君」とお礼を言って立ち去った。


「……この世界の勇者は色々と悩まされてたんだな」


 勇者の考えを聞いた俺はそう思い、テントに戻る事にした。

 テントに戻ってくると、クロエ達から「勇者様と何話してたの?」と聞かれて、小声でクロエ達に勇者の考えを伝えた。

 それを聞いたクロエ達は、勇者がその考えに至ったのに納得して、何かあったらクロエ達も力を貸すと言った。

 その後、夕食わ食べた後、こんな所では風呂に入れないので、魔法で作った簡易的なシャワー室で汗を流して、俺達は眠りについた。

 そして翌日、朝食を食べ終えると俺達は早速、作戦を始める事にした。


「よ~し、暴れちゃうぞ~! ジン君。最初はかなり大雑把でもいいからね! 沢山、運動したいから!」


「ペース配分には気をつけろよ。どの位、戦い続けるか分からないからな」


 元気なレイに対して、俺はそう注意をしてリウスを外に出した。


「リウス、今日は沢山暴れられるぞ」


「キュ!」


 リウスは〝暴れられる〟と聞くと、嬉しそうにブンブンと尻尾を振った。

 俺はそんなリウスの背に俺だけ乗り、地上に居るクロエ達に「それじゃ、皆頑張ろうな」と言って空に飛び立った。

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