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第276話 【襲撃・1】


 ハンゾウから情報を貰った翌日、俺達はいつも通り王都周辺の見回りをしていた。

 勇者達が旅立ってから、特に変わりは無いが一つ変わった点と言えば、依頼を受ける冒険者の数は減った事だろう。

 その理由は明白で、勇者達と共に魔王討伐に向かった冒険者や、まだ魔王軍の被害が及んでない国へ冒険者が移動したからだ。

 これはゲームでも同じような事が設定資料に書かれていて、王都に残った冒険者達の事を〝陰の貢献者達〟と書かれていた。


「最近、本当に人が減ったね」


「まあ、冒険者は自由な職業だからな、俺達は王都に大切な人がいるから残ってるけど、そうじゃない人は故郷に戻るのが今の現状だと正しい選択でもあるからな」


 その点で言えば、レイとレンは俺達と一緒に王都に残ってるけど両親は心配じゃないのかな?


「そういや、レン達の故郷ってどこなんだ? 王都じゃないんだろ?」


「うん、でもお父さん達は心配いらないよ。今は引退してるけど元は冒険者で、それなりに戦えるから」


「まあ、だから俺たちは心配する事無く自由に生活してる。たまに手紙は書いて、生きてることは伝えてるからな」


「へ~、レイ達ってあまり家族の事を話さないからわからないけど、ちゃんと連絡は取ってるんだな」


 一緒に活動をしてきて、あまり二人が家族の事を話す事は無かった。


「別に嫌いって訳じゃないけど、両親が仲良すぎるから近くに居たくないんだよな」


「そうなんだよね。だからレン君と話して、二人で王都に出てきたんだ」


「そうだったのか、いつかはレイ達の両親にも挨拶に行きたいな」


 そう俺が言うと、レイとレンは少し複雑そうな顔をして「いつかな……」と気乗りしない感じにレンは言った。

 それから俺達は見回りが終わり、ギルドに報告に行き、今日も特に変わった所は無かったと報告をしてから解散した。


「さてと、姉さん達を迎えに行くか」


 今日は久しぶりに料理の勉強をしようと思い、約束をしていた。

 その話を近くで聞いていたルル姉も「久しぶりに私もいい?」と聞かれ、今日はルル姉も俺の料理を食べる事になっている。

 そうして宿に戻ってきた俺は、姉さん達を呼びに向かった。


「姉さん、ルル姉。帰ってきたけど、大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。ジン君の料理が楽しみで、朝も少なくしてもらったからお腹ペコペコだよ」


「そうね。折角、ジン君の料理が食べられるからって態々、シャーリー達に自分の食事を渡していたものね」


 早速、ルル姉が暴露すると姉さんは「ルルは毎回。私が隠してる事を態々言わないでよ」とムッとした表情をしてそう言った。


「それで、今日はどんな料理なの?」


「まだ、どうしようか悩んでる。姉さんの好物の海鮮系はこの間、沢山食べてもらったからルル姉の好きな物でも作ろうかなとは思ってるけど、ルル姉って何が好きなの?」


「私の好きな物? う~ん、強いて言うとしたら肉かしらね。ヘレナとは違って、私は魚より肉のが私は好きね」


 ふむ、肉か……肉を使った料理は沢山あるから、どれにするか迷うな。


「なんかもっと具体的に好きな食べ物ってない?」


「う~ん、そうね。具体的に好きな食べ物ね……」


 ルル姉は俺の質問に対して、頭を抱えて悩み始めた。

 姉さんの事となると、色々と教えてくれるが自分の事となるとルル姉はあまり分かっていないみたいだ。


「ルルの好きな料理、私一つ知ってるよ。昔から、肉団子が好きじゃなかったかしら?」


「肉団子? まあ、確かに肉料理の中でも定番だからよく食べてるけど……確かに言われてみれば、回数で言うと肉団子が多いわね」


「了解。それじゃあ、今日は肉団子に挑戦してみるよ。レシピは大体知ってるし、材料もあるからこのまま拠点の方に移動しようか」


 そう言って俺は姉さん達を連れて、転移で拠点の方へと移動した。

 そして姉さん達をリビングに残して、俺は調理場の方へと行き早速料理を始めた。

 料理本を片手に肉団子を作った俺は、これだけじゃ足りないかなと思い野菜スープを作って姉さん達の所に戻った。


「美味しそうな匂いね。私が来ない間に、かなり腕を上げたみたいね」


「ふふん、これでも調理スキルのレベルもかなり上がってるからね。匂いだけじゃなくて、味もかなりレベルアップしたと思うよ」


 そう言った俺は料理を並べ終え、早速食べ始める事にした。

 初めて作った肉団子だが、かなりいい感じに出来上がっていて自分で食べて「うまいな」と口に出す程、おいしく出来上がっていた。


「滅茶苦茶、美味しいわね。こんなに美味しい肉団子、本当に初めて食べたわ」


「ジン君、この肉団子凄く美味しいよ!」


 姉さん達は俺の作った肉団子を食べると、そう感想を言うと凄い勢いで肉団子を食べ、5人前作っていた肉団子が綺麗さっぱりとなくなった。

 そして、肉団子が無くなった皿を姉さん達は悲しそうに見ていた。


「その、まだおかわりがあるけど、いる?」


「「いる!」」


 二人は俺の言葉にすぐにそう反応した為、俺は調理場に戻り多く作りすぎて残しておいた肉団子をもって姉さん達の所に戻った。

 それから数分後、おかわり分も合わせて大体8人前の肉団子をほぼ姉さんとルル姉は二人で食べつくしてしまった。

 ここまで美味しく食べられるとは思ってなかったな……ってか、俺食べたの最初の一つだけじゃん。


「ジン君、凄くおいしかったよ」


「ええ、本当にね。また今度、作ってほしいわ」


 ……まあ、ここまで喜んでくれた二人を見れたし、一個しか食べれなかったのは良しとしよう。

 その後、姉さん達の頼みに対して「うん、また作るよ」と俺は言うと、姉さん達は嬉しそうな顔をしていた。

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