第261話 【帝国の動き・1】
兵士達の育成期間が終了して、数日が経った。
無事に姫様からも認められる程、強くまとまった団体に仕上がった俺達の兵士達は本来であれば本陣に組み込まれる予定だったのだが。
400人で完成してしまっているので、新たに〝遊撃部隊第一兵団〟という名を付けられ、俺達の下に付くような感じとなった。
ただし、俺達の下についてはいるが別に俺達が指揮するのではなく、400人の中からリーダーを決めて本陣と連携をとる形となった。
「特別対応ですね」
「ええ、でもあれでよかったと私は思うわよ。あそこまで400人が一つになってる事なんて珍しいから、あのままにした方が良いってお父様達も感じたらしいわ」
姫様が視察した日以降に、国王やその他のお偉いさん達も訓練を見たらしく。
そのまとまり具合を見て、変に人を変えるよりも一つの団体として扱った方がいいと判断されたらしい。
「ジン達に教育係を任せて良かったって、お父様達が絶賛していたわ」
「そういってくれると、俺達も頑張った甲斐があるな」
褒められると事は悪く感じない為、姫様からの褒め言葉に対して俺達は笑顔を浮かべた。
「それで今日、呼び出した理由ってのは兵士達を褒める為ですか?」
「それもあったけど、これは序ね。次に話す内容が今日、呼び出し理由よ」
そう姫様は言うと、資料を机から取り出すと「これを読んで」といったので俺達はその資料に目を通す事にした。
ん? この資料は内容は……。
「イロス帝国が魔王軍と取引してるのを確認したの」
「えっ、人間の国ですよね。そこって」
「ええ、そうよ。人間の国が、魔王軍と取引していたのよ。それも国が率先してね」
クロエが驚いて聞くと、姫様は溜息交じりにそう言った。
成程な、とうとうイロス帝国は魔王軍と関わりを持ってしまったのか。
「これを俺達に見せたという事は、その国をどうにかしてほしいという事ですか?」
「流石にそこまでの事は頼めないわよ。もしもの時の為に、ジン達には情報の共有をしておこうと思ったのよ。問題事全部、ジン達に解決させてたら国として恥ずかしいわ」
「別に任せて貰っても良いんですけどね。最近は、兵士の訓練をずっと見てて体を動かしたいと思ってたので」
そう俺が言うと、レイも「そうだね。暴れたかったね」とニコニコと笑みほ浮かべながらそう言った。
「最後、どうしようもなくなったらジン達に頼む事になるかも知れないけど、人間相手なら何度もやって来たから大丈夫よ。それこそ、ユリウスが今回の事に関しては張り切っていたわ」
「ユリウスさんが動いてくれるなら安心ですね」
あ~、確かゲームでもこの問題に関しては、ユリウスが率先して動いていたな。
まあ、ユリウスの性格上、あの国がした事は相当許せなかったんだろう。
「それにしてもイロス帝国は何で魔王軍と取引何てしたんだろう……正直、もう少し前なら分かるけど今は人間側がかなり魔王軍との戦いで勝ってる状況なのにね」
「多分だけど、俺達が気づいてない時からイロス帝国は魔王軍と取引していたと思うな」
「俺もジンと同じ意見だな、魔王軍が動き出す前から関係があったんじゃないかな」
「ジンとレンの言う通り、私達の調査では少なくとも1年以上前から魔王軍と繋がっていたみたいね。まさか、人間の国から魔王軍に手を貸してる者達が居るとは私達も思っていなかったわ」
姫様は帝国が魔王軍と繋がりがあった事に相当腹が立ってるのか、普段見ない苛立ちを見せながらそう言った。
それから俺達は姫様から、もしもの時の為にいつでも動ける体制をとっておいて欲しいと頼まれ、取り敢えず一ヵ月間は遠出はしないと約束をした。
姫様からは一ヵ月も遠出させない事に関して謝罪されたが、俺達も国の事は気になるし、気にしていないと姫様に言ってその日の話し合いは終わり解散となった。
そして宿に戻ってきた俺達は、これからの動きについて話し合いを始めた。
「遠出は無しになったから、予定してたダンジョン探索は無しになったな。皆には謝らないとな、勝手に言ってしまってすまん」
「まあ、仕方ないよ。ダンジョン探索は魔王軍との戦いが全部終わってからだね」
「ちょっと悲しいけど、仕方ないね」
「素材が欲しかったけど、まあ我慢だな」
姫様の前では一ヵ月の遠出をしないで欲しいという約束に、予定も無いからといって了承したが実際はダンジョン探索に行こうと俺達は考えていた。
しかし、帝国とのいざこざが起きてるなら残っておいた方が良いだろうし、ダンジョン探索はいつでも行けるからとあの場では俺の独断で決めた。
「それに姫様も大変そうだったからね。寝不足気味だったよね」
「化粧で誤魔化してたけど、かなり色々と悩んでる様子だったな」
姫様の疲労感を察していたクロエ達は、姫様がかなり無理してる事に気付いていた。
「取り敢えず、一ヵ月間は様子見だな。もしかしたらその間に魔王軍が攻めて来る可能性もあるから、俺達はそっちに注意しておこう」
「「は~い」」
「分かった」
俺の言葉にクロエ達は返事をして、今後一ヵ月の動きを更に話し合った。
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