第222話 【悪魔の動き・1】
師匠帰還から二日が経ち、俺は空島でヘレナーザの報告を待ちながら刀の訓練をしていた。
師匠が居ない間、訓練の半分を料理の研究に当てていた為、師匠が戻って来たし戻そうかと思った。
だけど師匠から折角始めた事を途中でやめてはだめだと言われ、刀の訓練と料理の訓練を同時にするようにした。
「ジン君、次いくよ~」
「ああ、頼む!」
訓練には、普段は依頼が無い日は別行動をしてるクロエ達にも手伝ってもらっている。
最初一人でやろうと思っていたが、クロエ達の方から声を掛けてくれた。
正直、一人でやっていたらもっと慣れるまでに時間が掛かっていたと思うけど、皆のおかげで大分力にも慣れて来た。
「ジン君って本当に凄いよね。私だったら、そんなに凄い力を手に入れたらこんなに直ぐに慣れる事は無理だよ」
「私も無理。逆に抑えるなんて考えずに力がある限り使うと思う」
クロエとレイはそう俺が短期間で力に慣れてる事に対して、感心した様子でそう言った。
まあ、これは〝ジン〟の元の素質のおかげだろうな、何でもやれば出来る天才気質なジンたから新しい力も頑張ればすぐに自分の物に出来る。
そうして、陽が沈むまで訓練をした俺達は宿に戻って来て、夕食前にシャワーを浴びた。
「今日もお疲れ様。一日、訓練してたらしいけど新しい力にはもう慣れたのか?」
一人、王都に残り拠点で研究を続けていたレンからそう聞かれ、順調に行ってる事を伝えた。
「正直、二人のおかげで予定よりもかなり早く力に慣れはじめてる。このままいけば、ヘレナーザさんの報告が来る前には戦闘で使えるようにはなってると思う」
「へ~流石だな」
「二人のお陰だよ。それに師匠も的確にアドバイスしてくれるしな、レンの方は進捗どんな感じだ?」
「こっちは全くダメだな、正直もうあの薬の事は忘れて別の事を研究した方がいい気がしてきたけど、それだとなんか負けたみたいで悔しくてな、もう少しだけ頑張ってみるつもりだ」
そう言ったレンに対して、俺は「そっか、頑張れよ」と応援して、夕食を食べ終えた俺は部屋に戻った。
「それにしても、この二日間ずっと思ってるけど、球の効果は本当に凄いな……」
師匠が時間をかけて作ったというだけある品だな、師匠も本来はアレよりも少し低い効果の物を作る予定だったのが奇跡的に上手くいって出来たと言っていた。
師匠でさえ奇跡に近い形で作り上げた品と聞いて、俺の中では価値が更に上がった。
「っと、そうだった。寝る前にちゃんと師匠から言われた訓練方法もしておかないとな」
ベッドに横になってゆっくりしていた俺は飛び起きて、刀を取り出して鞘に入れた状態で球を意識しながら魔力を使用した。
球の力に慣れる為に師匠から毎日、一時間は球を意識して瞑想しなさいと言われた。
一日目は意識しながら使うだけでもきつかったが、流石に三日目ともなると大分慣れて来た。
出力の調整も出来るようになって、10分刻みで魔力を上げて行って一時間きっちり訓練をした。
昼間も訓練をしていた俺は、さっきまで残っていた体力が全て消えてベッドに再び横になると深い眠りについた。
「……うん、寝坊だな」
翌日、既に朝日が大分昇ってるのに気付いた俺は三日連続でいつもより遅く起きた事に気付いて、急ぎ足で着替えて下に降りた。
既に姉さん達とクロエ達は食事を食べ終えていて、リカルドから「今日も一番最後だったな」と言われながら料理を運んで来てもらった。
「ごめん、クロエ、レイ。今日もちょっと待っててくれ」
「全然いいよ。ジン君が頑張ってるの知ってるから、ゆっくり食べていいよ」
俺の謝罪にクロエがそう言うと、レイも頷いて「急がなくて良いよ~」と言ってくれた。
「ジン君、三日連続でいつもより遅いけど、夜遅くまで何かしてるの?」
流石に三日も連続でいつもより遅く起きた俺の事を心配してなのか、姉さんからそう聞かれた。
「最近、訓練を頑張ってるからだよ。もっと強くなるために頑張ってるんだ」
「ジン君、今でも強いのにもっと強くなるの?」
「……何処まで強くなるつもりなのよ」
姉さんと驚き、ルル姉は呆れた感じでそう言った。
何処まで強くなるか、確かにこれだけ力があるのにまだ強くなろうとしてるのはルル姉たちからしたら不思議だろうな。
「そうだね。守りたい人達を守れるくらいには強くなりたいかな」
「カッコいい事いうじゃない」
俺の返答にルル姉が茶化した様子でそう言って、姉さん達と楽しい時間を過ごした。
そうして朝食を食べ終えた俺は、クロエとレイと一緒に今日も空島へとやって来た。
「あれ、この魔力はヘレナーザさん?」
師匠の家の方からヘレナーザの魔力を感じ取った俺は、クロエとレイと一緒に師匠の家に移動した。
そして呼び鈴を鳴らすと、中から「入って良いわよ」と師匠の声がして玄関から入ると、家の中には師匠と準備があるからと居なくなっていたヘレナーザが居た。
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