第221話 【師匠帰還・3】
「なにこの、塊。こんな物見た事も無いわよ……」
リーザの店に着いた俺は早速、師匠から頂いた球と愛刀となってる刀を渡して加工してほしいと伝えた。
すると、リーザは師匠が作った球を見つめて、変な物を見るような目をしながらそう言った。
「そんなに変なのか?」
「私も今まで色んな鉱物を加工して来たけど、こんな魔力だけの塊は見た事も触った事も無いわよ。どうやって、こんな物を手に入れたのよ……」
「人からの贈り物でな、その人の話だと魔力の通りが物凄く良くなるらしいから、刀の柄部分に埋め込むだけでも効果が発揮されるって聞いた」
「……確かにこれは変に加工するより、柄に装飾用として付けるだけで効果は出そうだけど、本当に不思議」
リーザは球を怪訝な表情で見つつ、柄の部分に付け加えるだけなら直ぐに終わる言ったので俺は店の中で待つ事にした。
それにしてもリーザでもあんな顔するって事は、ドワーフ族に見せたら更に驚かれそうだな……。
「はい、出来たわよ」
あれから30分程して、リーザは戻って来て刀を見せてくれた。
要望通り柄の部分に師匠から貰った球を埋め込む形にしてくれて、見栄えも悪くない感じに仕上げてくれていた。
柄の部分と言っても、手に持つ場所は特に変わってないから違和感も無いな。
「それじゃあ、ちょっと試してみたいから裏庭使ってもいいか?」
「良いよ。私もどんな物なのか興味あるし」
裏庭の使用許可を取った俺はリーザと一緒に裏庭へと行き、早速だが刀に魔力を流してみた。
すると、今まで以上にすんなり魔力が体全体に馴染んでる感を感じた。
「言ってた意味が分かった。これは凄い効果だな……」
「私からだとそんな変わってないけど、ジンが驚くくらいには変化があったの?」
「ああ、簡単に説明すると少量の魔力で魔法騎士団レベルの魔法を扱えるみたいな感じだ。ここだと流石に危ないから使えないから実際に見せられないけど、この球を意識しながら魔力を使う事で今まで以上に魔法が使いやすくなってる」
これ相当変化するから、普段から身に付けてる物じゃなくて刀に付けたのは正解だったかもしれない。
これがもし今、着けてる防具に付けていたら威力の調整に時間が掛かっていただろう。
その後、俺はリーザに礼を言って店を出て、試し切りがしたいと思い王都の外に出た。
「まずは普通に魔法を使ってみるか」
さっきはリーザの店で、周りに被害が出そうだったから魔法を使うのを止めていたので、最初は特に威力の事を考えずに普段の普通の魔力量で魔法を使ってみた。
……うん、想像していたけどこの球の効果は絶大だな。
「ってか、普段の魔力量と思って使ったけど、球の効果か知らないけど普段の魔力量より少ない魔力だったよな……」
改めてこの球の威力アップ・魔力消費低下量を感じて、今後の戦いで物凄く使える物を師匠から貰ったと俺は感じた。
「だけど、ここまで威力に変化があるとこの刀を普段の狩とかで使うと、クロエ達の分の魔物すら倒してしまいかねないな……」
金はあるから普段使いできる刀を作ろうかなと、一瞬考えたが今の刀を気に入ってる俺は新しく作るより、この刀に慣れる方がいいと考えた。
そう思った俺は、それから半日魔物を狩り続けて、取り敢えず魔法を使いながら感覚を掴む事に集中した。
「ジン君、今日は朝から拠点にも居なかったけど、何処に行ってたの?」
夕方、宿に帰宅した俺は皆と一緒に夕食を食べていると、クロエからそう聞かれた。
「新しい武器というか、武器の強化をしてもらったからそれに慣れる為に半日魔物を狩り続けていたんだよ。皆には明日、その力を見せる予定だけど本当に凄いぞ」
「ジンがそこまで言うって珍しいな」
「武器の強化って何をしたの?」
レイからそう聞かれた俺は、師匠から貰った球の事を説明して、実際に体験したそれの効果を伝えた。
「それは凄い物を貰ったんだね。魔力消費が抑えられ、同時に威力が上がる道具って聞いた事も無いよ」
「ああ、俺も聞いた事が無くて師匠から受け取った時は相当驚いたよ。正直、今の状態でも困った事は特になかっけど、悪魔と戦うかも知れないから力の強化が出来たのは良かった」
その後、夕食を食べ終えた俺はシャワーを浴びて部屋に戻る前に、師匠が借りてる部屋に向かった。
部屋の扉をノックして、師匠の返事を聞いて部屋の扉を開けて中に入った。
「あら、弟子ちゃんどうしたの?」
「はい、改めてお礼を言いに来たんです。あの球、本当に凄い効果で今後の戦いが更に楽になると思います」
そう俺は改めて師匠にお礼を言うと、師匠は笑みを浮かべて「ふふっ、もう試したのね」と言って、俺は頷いき「凄い効果でした」と言葉を返した。
「ナシャリーちゃんからは慣れるまで凄く時間がかかるって言われてたけど、どうだった?」
「そうですね。確かに慣れるまで時間掛かりそうで、一瞬もう一つ刀を用意して普段使いはしない方がいいかと思いましたけど、力に慣れる必要があると思って使い続ける事にしました」
「流石、弟子ちゃんね。何事にも逃げないその姿勢、師匠として誇らしいわ」
師匠は俺の事を褒めると、刀に慣れたら一度見せに来てねと言われ、俺は「勿論です」と返事をして部屋を出た。
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