第220話 【師匠帰還・2】
それから俺は師匠の部屋の中に通して貰い、何故こんな長い間居なくなっていたのかを聞いた。
「本当は直ぐに戻ってくる予定だったんだけど、ちょっと問題が起きちゃってね~。それの対処してたら、こんなに時間が掛かっちゃったのよ。弟子ちゃんには寂しい思いをさせちゃったみたいね。ごめんね?」
そう師匠は俺に謝ると、俺の事をジッと見つめて「私が居ない間も鍛錬は怠ってなかったみたいね」と笑顔を浮かべてそう言った。
そして師匠は異空間に手を突っ込むと、手のひらサイズの装飾がされた箱を取り出した。
「はい。これ、弟子ちゃんに修行頑張ったご褒美よ」
「ありがとうございます。師匠」
師匠からのプレゼントを俺はお礼を言いながら受け取ると、師匠から中を見てもいいわよと言われ、早速箱を開けて中を確認した。
すると中に入っていたのは、直径二㎝程の小さな球だった。
……一瞬、普通の球かと思ったけど、なんだこの物凄い違和感。
「師匠。この球って一体何ですか? 物凄いなにかを感じるんですけど、それがなにかが全く分からないです」
「弟子ちゃんでも正体が分からないって事は、成功してたみたいね。実はその球、私の魔力を極限まで振り絞り小さくした物なの」
師匠は球を見つめながら、球の正体について教えてくれた。
ふ~ん、師匠の魔力で出来た球か……。
「……えっ、この球。師匠の魔力で出来た物なんですか? 魔力で固形物って作れるんですか?」
「作れるわよ。ただし、作るには膨大な魔力と物凄い集中力が必要になるのよ。ほらっ、魔石だった魔力で出来た様なものでしょ?」
「確かにそうですけど、それを作ったって……師匠ってやっぱりすごいですね」
そう俺は尊敬の眼差しで師匠を見ると、師匠は嬉しそうに「ありがと~」と言った。
それにしても師匠の魔力で出来た球を、師匠が態々なんま使い道も考えずに渡す筈は無いけど、どういった使い道で俺に渡してきたんだ?
「師匠、それでこの球はどういった使い道で作られたんですか?」
「簡単に言うと、弟子ちゃんの力を更に強くするアイテムになるわ」
師匠はそう言うと、球の使い道について詳しく教えてくれた。
師匠曰く、普通の魔石は〝魔〟が入ってる為、多少の魔力の通りが悪くならしい。
ただ今回の師匠が自作した球は、そんな物は当然入っておらず、、普通の魔石だと何かしらの不純物が入ってるのに対して、師匠のは一切何も混ざってない。
純粋な魔力の塊だと、俺は師匠から説明された。
その為、これを装着した武具は魔力の通りがかなり上がり、今よりも魔力を使った戦いがやりやすいと師匠は説明してくれた。
「弟子ちゃんって、なんだか問題事に巻き込まれそうだと思って、それなら今よりも力になる物が欲しいだろうなと思って用意したのよ」
確かに師匠が居ない間に、魔王軍の四天王と戦って、今は悪魔問題を抱えている状態だ。
修行して強くなったとはいえ、ゲームとは既に違った事も何個もあって知ってる強さ以上の敵が現れるかもしれない。
そんな事を考えると、何の努力も無く今よりもパワーアップ出来るという事は、物凄い有難い代物だ。
「師匠。俺の事を色々と考えて下さり、本当にありがとうございます」
「ふふっ、大事な弟子だもの、この位はしないとね」
師匠は微笑みながらそう言い、俺はそんな師匠に対して深々と頭を下げてお礼をした。
その後、師匠から師匠が居ない間になにか変化は無かったか聞かれ、直近の出来事である悪魔について伝えた。
「そう言えば、フィオロちゃん以外の悪魔の魔力を一瞬だけ感じたわね。ただ直ぐにその魔力が消えて、私も球の製作に集中してて放っておいたわね」
「師匠もやっぱり気付いていたんですね。俺自体、気付く事は無かったんですがフィオロが教えてくれて、一応今はヘレナーザさんに悪魔の居場所を突き止める準備をしてもらってるんです」
「ヘレナーザちゃんか、確かにヘレナーザちゃんはそういった探し物は得意だったわね。成程、それなら待てば悪魔の位置は分かりそうね」
師匠はそう言うと、ヘレナーザが戻ってくるまでに球の加工をやっておいた方が良いわねと言った。
「そうですね。でも加工って、どうするんですか? 普通に鍛冶屋に頼めばやってくれますかね?」
「何処かにくっつけて、その球を意識しながら魔力を使うだけだから、弟子ちゃんが良く使ってる鍛冶屋の所で加工してもらえると思うわよ」
「そうなんですか? 分かりました。それでは後程、鍛冶屋で加工を頼む事にします」
その後、師匠は家の事が気になるからと言って空島へと向かったので、俺も早速だが球の加工をしてもらう為、リーザの店に向かった。
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