第209話 【料理勉強会・3】
王都に戻ってきた俺達は、そのままギルドに向かい依頼の達成報告を行った。
「流石ジンさん達ですね。こんなに早く終わるなんて」
リコラさんは戻ってきた俺達をそう迎え、俺は達成報告に使う為にキングの素材を渡した。
「……アレ? いつもは綺麗な剥ぎ取ってますけど、今日はかなり荒いですね」
キングの牙を見たリコラさんは、いつもは綺麗に剥ぎ取って来てるのに討伐証明の牙ですら荒い状態に首を傾げながらそう言った。
「あ~、すみません。ちょっと久しぶりの戦闘でやりすぎちゃって、素材が駄目になったんですよね。もしかして、キングの素材必要でした?」
「いえ、そこまで必要という訳では無かったのですが、いつも綺麗に剥ぎ取って来るジンさん達には珍しいなと思いまして」
そう言われた際、影の中に居るリウスが落ち込んだ様子を感じ取った。
うん、次は気を付けような。
そう俺は思いながら達成報告を終え、俺達はギルドを出て宿に帰宅した。
「きゅ~……」
「リウス君、そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ? ほら、元気だして」
「そうだよ。別に気にして無いから」
宿に帰宅後、あまりにも落ち込んでるリウスを見てクロエとレイはそう励まし、俺も「気にしなくて良いんだぞ」というが効果は無かった。
「久しぶりにジンにいい所を見せれると思ってやったら、盛大に失敗したのが相当来てるんだろうな」
そうレンが言うと、リウスは「きゅ」と鳴いて頷いた。
まあ、確かにリウスは久しぶりの戦いでいい所を見せたかったのはあの張り切りようを見ていたらなんとなく感じていた。
「リウス、今回は失敗したけど次頑張ろうな」
そう言って俺はリウスの頭を撫でて、リウスの機嫌を治す為にレンに頼み美味しいご飯をリウスに作って貰った。
久しぶりに食べるレンの料理は、自分の料理と比べて差が凄くある。
喜んで食べてるリウスとは逆に俺は、どうやってこんな美味しい物を作ったるんだ? と考えていた。
「どうしたジン? 何か嫌いな物でも入ってたか?」
「ああ、いや自分の料理とレンの料理を比べてたんだ。そりゃ、最近料理を始めた身の俺の料理がレンより劣ってるのは当たり前だけど、どうやってここまで美味しく作ってるのかなって」
「まあ、慣れだろうな。ジンも1年位料理をしてれば、慣れると思うぞ」
確かにまだ料理を本格的に初めて数日だしな、弱気になるのはまだ早いか。
レンからの言葉を聞いた俺は、気持ちを切り替えてレンの美味しい飯を食べた後、俺は商業区の方へと買い物に出掛けた。
そして買い物をしてると、前からハンゾウの所の部下がやって来た。
「ジン様、今少しお時間よろしいですか?」
「お前らの方から声を掛けるって事は、何かあったのか?」
ハンゾウの方からは基本的に接触はしてこないが、何か大事な事が起きた時は向こうから連絡が来る。
俺は部下について行き、ハンゾウのアジトへと向かった。
「ジン、待ってたぞ」
「買い物中に部下を呼びつけるって事は急用なんだろ、それで用件はなんだ?」
「魔王軍が新たな動きをはじめた」
「……エルフ族とドワーフ族の隠れ里を襲い始めたか?」
ハンゾウの言葉を聞いた俺は、そう言うとハンゾウは笑みを浮かべ「流石、ジン。もうその情報を掴んでいたのか」と言った。
「まあ、予想より早かったけどな。隠れ里のエルフ族は秘薬、ドワーフ族は魔剣の製造が可能だから、ヒューマンである俺達と手を組む前に始末しようってのが魔王軍の考えだろうな」
「その通りだ。ドワーフ族の隠れ里は地下にある為、早々見つかる事は無いがエルフ族の方は既に何ヵ所か発見されて襲撃をされたみたいだ」
「そうか……しかし、ハンゾウもよくその情報を集められたな。隠れ里の情報は中々手に入らないだろ?」
「俺の部下に一人だけ、隠れ里出身のエルフ族がいるからなそいつから聞いたんだよ」
隠れ里出身のエルフが部下か、隠れ里の者達は基本的に外には出ないけど、まあ何かしら事情があるんだろうな。
「それで態々、俺を呼び出してまでその話をした理由は俺にエルフ族とドワーフ族を救ってほしいって事か?」
「話が早くて助かるよ。普通の奴だと難しいだろ? ジン達なら俺にも隠してる力がありそうだと思ってな。ちゃんと報酬も渡すから、この依頼受けてくれないか?」
いつもふざけた態度のハンゾウは、真剣な顔でそう頼み込んできた。
そのハンゾウの頼みに対し、俺は「俺も救おうと考えてたし、別に報酬が無くても動く予定だったよ」と言った。
「前々からエルフ族の事は気にしてたからな、既に準備はしてたんだよ。正直、いつ魔王軍が動くか分からなかったから、向こうが動くのを待っていたんだ」
その後、俺は宿に戻りクロエ達に隠れ里が魔王軍に襲撃されたという事を伝え、急遽戦いの準備を始めた。
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