第207話 【料理勉強会・1】
翌日、俺は朝食を食べた後、食材の買い出しに商業区に行こうとしたら姉さん達に止められ「一緒に行こ」と誘われた。
「ほらっ、最近はジン君達が現れても騒がれなくなったでしょ? そしたら一緒に買い物に行こうって言ってたでしょ」
「あ~、そうだね。うん、なら一緒に行こうか」
それから俺は姉さんとルル姉と一緒に宿を出て、三人で商業区へと買い物に出掛けた。
最初、料理でも大事な調味料を買いに行くと、姉さん達から勧められ香辛料を多めに買うことになった。
ここで初めて俺は、姉さん達が辛い物が好きだという事を知った。
「意外だね。姉さん達、辛い物が好きだったんだ」
店を出た後、俺は購入した物を【異空間ボックス】に入れながらそう二人に言った。
「ヘレナは私以上に辛い物が好きで、宿でもアイラさんに許可を貰って料理にかける程、辛いのが好きなのよ。知らなかったでしょ、ジン?」
「ちょ、ちょっとルル! 折角、今までバレない様にしてたのに何でいうのよ!」
「この際いいじゃない。それに、バレない様にしたいなら店に着いて直ぐに香辛料を勧めないわよ」
「あっ……」
ルル姉からの返しに姉さんは言葉が詰まり、ムッとした表情でルル姉を睨みつけた。
そんな表情もするんだなと姉さんの顔を見ていると、俺から見られていると気付いた姉さんは顔を赤く染め恥ずかしそうに顔を隠した。
その後、姉さんの機嫌を二人で治し、買い物の続きとして別の店に向かった。
「ね、ねえジン君。そんなに野菜は買わなくてもいいんじゃない?」
「え、何で? 野菜スープとか体にいいから作ろうと思うんだけど、もしかして野菜苦手?」
八百屋に移動してきた俺は、野菜スープや野菜炒めに使う為に色んな野菜を購入しようとしていると、姉さんからそんな事を言われた。
「えっ? ううん、そんな事は無いんだけど……」
「ヘレナは野菜が苦手なのよ。トマトもスープにすれば飲めるけど、元のままだと食べるまでに10分くらいかかるのよ」
「ちょ、ちょっとルルッ!?」
ここでルル姉が姉さんの秘密を言うと、姉さんは焦った様子でルル姉の口を手で塞いだ。
そして睨むような目つきで、俺を見て「ち、違うから」と言って来た。
「まあまあ、誰にでも苦手な物があるから恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。今回は姉さんの苦手な物は買わないでおくね」
「うぅ……」
姉さんは俺に苦手な物がある事が知られて、恥ずかしそうにしていた。
それから、俺達は八百屋を後にして他の食材を買ってから拠点へとやって来た。
姉さん達にはリビングで待っててもらい、俺は食堂の方へと移動した。
買って来た食材の内、今日使う分を出した俺は料理本手に取り、どんな料理を作ろうか考え始めた。
「姉さん、野菜って言ってたし野菜系は今日は使わないでおこうかな……となると、肉か魚か」
食材と料理本を交互にみながらレシピを考えた俺は、姉さんの嫌いな食べ物を使わないレシピを考えながら料理を始めた。
そうして出来上がった料理を姉さん達の所に持っていくと、姉さん達は驚いた顔をして料理を見ていた。
「これ、ジンが作ったの?」
「俺以外に誰が居るの? というか、途中で作ってる姿を見に来てたでしょ」
「いや、そうだけど……料理の勉強に付き合ってほしいって聞いてたから、もっと酷いのが出て来るのかと思ってたんだけど、あまりにも普通の料理が出て来て驚いちゃった」
そうルル姉が言うと、姉さんもウンウンと頷いて「普通に美味しそうだよ?」と言った。
「まあ、不味くはないと思うよ。料理はそこそこしてきたから、ただ美味しいって感じもしないんだよね。レンって料理が上手くて、その味をずっと食べてた空か舌が肥えちゃって自分の料理の味に満足出来てないんだ」
そう言いながら姉さん達に料理を食べて貰い、食べ終わってから感想を聞いた。
俺の言葉通り、見た目や味に不満は無いけど、至って普通の料理だという感想を貰った。
「なんとなくジンの伝えたい事が分かったわ。もっと味を美味しくしたいって事よね」
「ジン君の今の料理でも十分食べれない事も無いけど、ジン君自身が満足してないんだよね」
「そんな感じだね。姉さん達には食べながら、どんな風に工夫すればいいのか一緒に考えて欲しいんだけどいいかな?」
そう聞くと姉さんは「勿論、その為に来たんだよ」と笑顔で言い、ルル姉も「料理の腕は無いけど、食には煩いから任せて」と改めて協力してくれると言ってくれた。
その後、食べてばかりだと太ってしまうからという事で、姉さん達と裏庭で運動をする事にした。
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