第206話 【拠点・3】
それから俺達は4人がそれぞれ拠点の鍵を作り、いつでも自分達が行きたい時にいけるようにした。
一応、姉さんにも渡そうと思ったのだが「それはジン君達の拠点だから貰えないよ」と断られてしまった。
ただ拠点に行くのが嫌なわけではない為、俺達の誰かから誘われたら行くと言っていた。
「そういう訳で王都に俺達の拠点を持つ事にしました」
「ようやくなのね。これで、いつかジン達が居なくなるんじゃないかって不安から少しは解消されるわ」
拠点を購入してから数日後、俺は姫様の元に報告に来ていた。
一応、今後そっちに居る事もあるから場所を伝えると、姫様は「かなりいい所を買ったのね」と少し驚いていた。
「確かここって、元は銀級冒険者6人が活動する為に建てた家だったけど、仲間内で喧嘩が起きてほぼ使う事無く売られた建物よね。建ててそんなに年数が経ってない上に、大通りからも近いからかなりの値段がしたんじゃないの?」
「まあ、そこは俺達はずっと貯金してますからね。ずっとリカルドの宿に泊ってて、食費とかもそんなに掛かってないので」
そうじゃなくても、姫様から定期的に魔王軍討伐の依頼を受けてるから金には困っていない。
「それで俺達の報告はこの位ですけど、勇者の方はどんな感じですか?」
「順調よ。既にドラゴンの試練を乗り越えて、今はその試練を得た力のコントロールを特訓してる所ね」
「へ~、もうそんな所まで進んでるんですね」
成程、一応ゲーム通りドラゴン族の試練は乗り越えられたみたいだな、ゲームでは力のコントロールの為に特訓はしてなかったが。
この世界の勇者は、王都は竜人国が守ってくれてるから、安心して特訓をしてるのだろう。
その後、姫様と話をしてから俺は王城から、転移で拠点の方にやって来た。
予定の無い日は基本的にこの拠点には、レンが研究の為に籠っていて偶にクロエ達が庭で訓練をしていたりする。
「さてと、俺も折角時間が空いたんだから、ずっと放置してた料理の勉強でもするか」
ジンの最大の問題であるフィオロの解決をした俺は、これからは色んな事に挑戦しようと気持ちを繰り替えていた。
その第一歩として、これまでレンに任せていた料理の勉強を始める事にした。
まず初めに俺は料理本を数冊買ってきて、それの通りに料理を何品か作ってみた。
「……まあ、レンの様に美味しいと感想が出る程では無いけど、普通だな」
美味しいと思う程では無いが、失敗はしてない為、まあ食える程度の料理が出来た。
「う~ん、まあ地道に腕を上げていくしかないけど、一人で食うには辛いな……リウスに食べてもらおうかな」
「きゅ~?」
リウスを呼び出して皿に盛った料理を渡すと、首を傾げて食べてもいいのか分からないみたいな顔をした。
そんなリウスに「食べてくれるか」というと、嬉しそうに食べ始めた。
残飯処理係みたいな役割をさせたみたいで少し罪悪感を感じたが、一人で食べるにはちょっと無理がある量だった。
これからは一つの料理に使う食材の量も考えて作らないと、食べ過ぎで動けないみたいなになりそうだな。
「食べてくれる人が居たら勉強もはかどるけど、流石にいないしな……クロエ達も自分達の料理の勉強があるだろうし……」
そう悩んでいると、リウスが俺の服を引っ張り何か伝えようとしてきた。
「きゅ、きゅ~、きゅ!」
「んっ、俺の上? 上ってなんだ……もしかして、姉さん達にか?」
「きゅ!」
リウスの仕草で何を伝えようとしてきたのか察すると、リウスは嬉しそうにそう反応した。
姉さん達か、確かに食べてはくれるだろうけど、まだイマイチな自分の料理を食べてもらうのはなんか気が引けるな……。
でもそうは言っても、作った料理を無駄には出来ないし、一度お願いしてみるのは有りだな。
そう思い俺は今日の勉強は一旦やめて、宿に戻り姉さん達が戻ってくるまで部屋で待機する事にした。
「ジン君の料理を食べる役割?」
「うん、前々から料理の勉強をしようと思ってていざ始めて見たんだけど、作った料理を食べる相手が居なくて、自分で処理するにも限界があるなって、それで良かったらで良いんだけど姉さんに食べて貰えないかなって」
そう聞くと、姉さんは「ジン君の手料理……」と呟くと、ガシッと俺の手を握り「その役割任せて!」と意気込んだ様子でそう言った。
そんな姉さんの言葉に対して、一緒に話を聞いていたルル姉は呆れた様子で姉さんを見ていた。
「最近、ご飯を食べ過ぎたからダイエットするとか言ってなかった?」
「気のせいよ。それにちょっと太ったくらいで、ジン君の料理を食べる機会を逃す方がおかしいでしょ?」
「……」
真剣な眼差しでそうルル姉に姉さんは言葉を返すと、ルル姉は溜息を吐いて「私達も食べてもいいかしら?」と聞いて来た。
「勿論、人は多い方が助かるからね」
その後、丁度明日は姉さん達は休みらしく、手伝いに来てくれると言ってくれた。
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