第190話 【遊撃隊・2】
翌日、ジンは約束通り姫様の部屋にやって来た。
入る前から中から人の気配がすると感じていたジンは、扉を開けて中に入り特に驚く事無く部屋に居た人物に挨拶をした。
「お久しぶりですね。勇者様」
「うん、久しぶりジン君」
部屋の中に居た人物は俺が自分の問題を解決した後も尚、避けたいと思っている勇者だった。
勇者の魔力を感じ取った段階で、出るかどうか物凄く悩んだ。
だけど向こうも多分、俺の魔力を感じ取ってる筈だと思い悩んだ結果、部屋の中に入る事にした。
「もう怪我は大丈夫なんですか?」
「うん、ジン君が用意してくれたって聞いた薬のおかげで、怪我自体は一瞬で治ったよ。ありがとう」
「いえ、その為に用意していたので役に立てて良かったです」
勇者からのお礼の言葉にそう返すと、勇者は昨日の俺の活躍を聞いたらしく「ジン君が出て来てくれて本当に嬉しいよ」と言われた。
「正直、四天王に負けて僕も含めて戦女の子達もかなり精神的にダメージがあって、直ぐには復活が難しかったんだ。そんな時にジン君の話を聞いて、心に余裕が出来てお礼を言いたいと思って姫様に無理を言ってこの場に一緒にさせてもらったんだ。ジン君、本当にありがとう」
勇者は立ち上がり、俺に向かって頭を下げてそう改まってお礼を言った。
それに対して俺は「大したことはしてないので、頭を上げてください」と慌てて言った。
「大した事は無いか、ジン君はそう思ってもジン君の活躍は凄い事をしてくれたよ。そうですよね姫様?」
「ジンからしてみれば大した事じゃないかもしれないけど、国からしてみたら本当に凄い功績よ。移動距離だけでもかなりあるのに、そんな場所に瞬時に移動してたったの数時間で解決してくるなんて他の誰だって出来ないわ」
「うんうん、僕も転移は使えるけど長距離移動はまだ難しくて、そこまで遠い距離は無理だもん」
そう二人から言われた俺は、言い返す事が出来なかった。
それから姫様と勇者に賞賛された俺は、早く今日の本題を聞いて逃げようと思い、姫様に仕事について聞いた。
「それの事だけど、ジン。この〇が付けられてる場所の何処か行った事のある街はあるかしら?」
そう言って見せられた地図には、いくつかの街に丸印が付けられていた。
丸が付けられた街は全部で5つ、その中で俺が行った事がある街は3つだった。
「この三カ所は、以前行った事があるので転移で移動が可能ですね」
「それならその3つの中から選んで行ってくれないかしら? 話し合った結果、その5つの街が今の所、奪還してほしい街なのよ。何処も昨日の街と同様に、魔王軍に取られた街なの」
「ん~、それなら3カ所とも行ってきましょうか? 街の奪還位なら、一度経験して慣れたので多分もっと早く解決出来ると思いますよ」
昨日の事を思いだしながら、俺はそう姫様達に行った。
正直、昨日の街の奪還だがそんなに俺達は疲れる事は無かった。
というのも、この三カ月、特に戦闘組である俺、クロエ、レイは何時間もドラゴンや魔女といった最強種と戦っていて持久力が物凄く上がっている。
なのでたった数百、数千と数だけが多い魔王軍の相手等、対して疲れる事は無かった。
「……ジン君達って、聞いてた話よりもずっと化物なんだね」
「勇者様には言われたくないですけどね。なんだかんだたったの数ヵ月で、魔王軍と対抗できる力を手に入れてるんですから」
そう俺は準備期間が三年もあってこれだけど、勇者は勇者となって一年もたっていない。
それなのに魔王軍と戦う事が出来、四天王も二人も倒している。
なので俺の事を化け物といった勇者に対して、お互いそんなに変わらないといった感じでそう言い返した。
「僕の場合はこの聖剣のおかげでもあるけどね。先代勇者の力を借りたり、戦女の子達と絆で強くなれてるから、僕自身の力って訳では無いから」
「だとしても、聖剣に選ばれる素質があった訳ですからね。それに勇者様自身の力が無いという事は、無いと思いますよ。俺も勇者様がユリウスさん達から俺の噂を聞いた風に、俺も勇者様の頑張りは聞いています。自分の力は自分が一番分かっていると思いますから、その力から目を背けない方がいいと思いますよ」
自分を卑下する勇者にそう言うと、勇者は何故か目に涙をためてウルウルとした表情で「ありがとう……」と小さな声でそう言った。
その後、勇者は俺の言葉で何やらスッキリとした表情で「ジン達が頑張ってくれてる間に、もっと強くなるね」と言って部屋から出て行った。
「ジン、ありがとね。四天王に負けてから色々と悩んでいたみたいだけど、ジンの励ましの言葉でその悩みが消えたみたいね」
姫様はそう笑みを浮かべながら言うと、本当に3カ所とも任せてもいいか聞いて来た。
「はい、大丈夫ですよ。ただまあ昨日みたいに一日で終わるのは難しいと思うので、二日か三日は欲しいですね」
そう言うと姫様は「ジン達なら本当にやって来そうで怖いわね」と言われ、その日の話し合いは終わり、俺は宿に戻りクロエ達に話し合いの事を伝えた。
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