第184話 【三カ月・4】
ワイバーン討伐は、問題が起こる事もなく終わってしまった。
そもそも今の俺達にとってワイバーンの一匹程度、レン以外だったら一人で対処できるくらいには強くなっている。
そしてクロエ達の中で、特にこの期間一番成長したのはレイだ。
レイは元々の【怪力】という固有能力をヘレナーザがその才能を見抜き、より力の解放が出来る様にと徹底的に教え込んでいた。
「レイの攻撃力、一段と凄くなってるな……あれでまだ本気じゃないだろ?」
「うん! 【身体強化】無しでやってたから、まだまだ全然だよ!」
「なあ、ジン……妹が化け物になっていく、兄の気持ち分かるか?」
「……その、うん。ほらレンも大分、変になったしお互い様だと思うよ」
何のフォローにもならないような言葉を俺は言い、ジト目で睨んでくるレンから目を逸らすしかなかった。
それからワイバーンの死体を【異空間ボックス】に入れた俺は、転移で馬達と一緒に王都に戻って来た。
そうして冒険者ギルドに馬車を宿に置いてから向かい、達成報告を行った。
「流石、ジンさん達ですね。こんなに早く討伐して戻って来る冒険者は、王都の冒険者の中でジンさん達くらいですよ」
「俺が転移を使えますからね。移動時間は大幅に削減で来てますからね」
そう俺が言うとフィーネさんは「そうですね。転移は本当に便利ですよね」と言いながら書類の作成を終え、報酬金を渡してくれた。
緊急の依頼という事もあり、普通の依頼よりもかなりの高額の依頼だった。
久しぶりの大きな稼ぎだな、なんか昨日お疲れ様会をやったばかりだけど、皆と食事にでも行こうかな?
そう俺が考えていると、ギルドから出た後、クロエとレイから同じような提案をされて俺達は一緒に食事に行く事にした。
「ここの店も大分常連になったな、昔はこの店に入る事はないだろうなってレイと話してたのにたった数年でこんな事になるなんてな」
「そうだね~、前は本当にお金に困ってたから宿も同じ部屋で代金を安くしてたもんね~」
レイとレンは目の前に運ばれて来た料理を見て、そう成長したなと自分達に言い聞かせる風にそう言った。
二人の過去は色々と聞いていて、苦労話も沢山聞いている。
「ジンと出会って本当に色々と変わったな、ジンとの出会いは俺達にとって幸運だったな」
「うんうん、そうだね~。クロエちゃんと友達だったおかげで、知り合えたからクロエちゃんにも感謝しなきゃ」
そんな双子の言葉にクロエは「私もジン君に助けて貰って知り合えたのは、幸運だったな~」と言って三人は俺の顔を笑顔で見つめて来た。
こうして改めて三人からそう言われた俺は、少し照れて「俺も皆と会えて本当に幸せだよ」と言った。
その後、恥ずかしくなった俺は料理の話題へと変えようとしたが、皆はそれを許さず食事中は皆から久しぶりにいじら続ける事になった。
「はぁ、酷い目にあった……」
食事後、宿に戻って来た俺達はそれぞれの部屋に行き、俺はベッドに横になりそう溜息交じりに呟いた。
皆から揶揄われて精神的に疲れた俺は、そのまま眠りそうになったが、ある魔力を感じ取り目を開けてベッドから立ち上がった。
「ジン様、今よろしいでしょうか」
「いいですよ。どうぞ」
「失礼します」
俺の許可を聞いて扉を開けて中に入って来たのは、姫様の専用従者団である〝裏〟の一人、フリードだった。
三年前に王都の方に新しく出来た表向きは冒険者の家の一つだが、中身は〝裏〟の休憩所兼仕事場に配属されている人で主に俺との連絡係だ。
「事前に連絡なしで来るという事は、それなりに急な事ですよね」
「はい、簡潔にお伝えしますと、勇者様達が第三の四天王に敗れてしまいました」
「ッ!」
フリードからの話を聞いた俺は驚いた顔をして、詳しい話をフリードから聞く事にした。
そして現状分かっている事を聞いた俺は、後日姫様の所に向かうとフリードに言って緊急の話し合いは終わった。
「……ゲーム通り、負けイベだったか」
第三の四天王戦、それはゲームでは負けイベの一つだった。
これまで順調に四天王を討伐してきたから、わんちゃんこの世界では負けイベは存在しないと思い始めていた。
「だけどちゃんと負けイベ通りに負けたのか……まあ、いいそれの為にこっちも色々と用意してたんだからな」
負けイベは特に印象に残っている俺はそう自分を奮い立たせ、取り敢えず今の話をクロエ達と共有する為に皆を呼び出して伝える事にした。
【作者からのお願い】
作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら
下記の評価・ブックマークをお願いします。
作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。




